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第三話→まきぴよさん
夕食の部屋に呼ばれ、大人用のお膳が4つ用意された部屋に大人二人と子ども二人が来たのを見た仲居さんが二度見した。
無理もない、部屋に通して説明をした時は大人四人だったのだから。
やがて支配人と女将さんと思われる人が仲居さんの後ろについてやって来た。こちらは驚く様子もなく、それどころか『子宝の石に触りましたか』と尋ねてきた。
「はい、でもみんなで触りました。それと何の関係が…」
不思議そうに尋ねると、女将さんからは俄に信じがたい話が語られた。
この辺はもともと小さな漁村で、あの神様は村に住んでいた若く美しい男と結ばれた。
その男との間にもうけた双子を天秤にかけ、海に沈めて戻ってきた方を跡継ぎにしようとした。
だが、二人とも波に飲まれ死んでしまった。
思いもよらぬ出来事に気がふれた神様は男に他の家の健康な子を跡継ぎにすべく拐ってくるよう告げたが、男は村を、そして子どもたちを守るために神様をあの白い石に封じた。
「神様を一般人が封じたってこと?」
岩本くんが思わず口を挟む。
女将さんは『そもそも神様でなく、他所から来た迷い子の娘だったと言われています。娘が来てから嵐も凶作もなくなり、神の遣いと言われたのだとか』と補足した。
それからあの神社に青年が二人訪れるとその人たちが水の事故に遭ったり、時にこうして子どもの姿になってしまったりという不可解な出来事が起こることから『神様が今でも跡継ぎ探しをやり直そうとしている』と言われるようになった。
子宝に恵まれるのも、神様がその中から跡継ぎの生まれ変わりを探しているからだと。
「この地域は神様の加護を受けて子だくさんだって…」
俺も阿部ちゃんから得た情報を伝える。
「それも同じ理由だと言われています。この辺りは海も遠浅で綺麗ですが、地元の人は決して子どもを海には行かせません」
「俺たち、戻れないんですか?」
小さなしょっぴーが岩本くんの浴衣の裾を掴みながら尋ねた。
「だいたい、一日です。お客様がたであれば、ここに滞在されている間には戻れるはずです」
だがその後、女将さんが放った一言に全員赤面して固まる事になる。
「神様の親心でしょうか、見つけた青年が幸せにしていないと後を追ってくると言われています。ですから、身体が元に戻ったら存分にパートナーの方と愛し合って見せつけておやりになると良いでしょう」
さすがに横にそれぞれそのパートナーがいるとは思っていないだろうが、『申し訳ありませんね、下品なことを。ですが事実奇妙な事が続く方もいらっしゃるそうなので、皆様にお伝えしております』と女将さんは固まった俺たちを見て困ったようにそう言った。
想定外の事態の中でもそれなりにお腹は空くようで、出された食事は全て平らげた。
『うまい! 』と言いつつもやはりしょっぴーと阿部ちゃんの食べられる量は限られていて、特にしょっぴーは不服そうだったけど俺と岩本くんで分けた。
水の事故が、なんて言うから温泉にも気軽に入れず、二人は子ども用の浴衣を貸してもらい、 肩を並べて地元局のTVをぼんやり見ていた。
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コメント
4件
思う存分愛するのは旦那たちの得意分野だからよかったね((?💛💙🖤💚