「ふあぁ、、」
朝、いつも通りの時間に起きた。寝転んだまま欠伸をし、体を起こす。が、思ったように起きれない。
起きようとしても頭が痛くてグラつくのと、体にうまく力が入らない。
「ッ………」
体が熱い。熱か。でもこんな感覚初めてだ、、。
この調子だと探偵社に行こうと思っても行けるかわからない。まだ出社まで時間はあるしもう少し寝てみてもいいか。
そう思い、重い瞼を躊躇せず閉じた。
「ん……」
眩しい陽射しに刺激され目を覚ました。
さっきよりはマシかも、、、。
何とか体を起こし時計を見る。時計の針は7時50分を指していた。
「やばっ、!!」
遅刻するかも。まあ僕は別に怒られないけど。
でも遅刻したらしたですごく心配される。
特に国木田、敦。
今回に限って遅刻して心配され速攻帰されるとなるのはごめんだ。
少し痛む頭と重い体を必死に動かし着替え、出社の準備をする。
心なしか、いや、圧倒的に動きがいつもより遅い。
それでも休む訳にはいかなかった。
なんたって今日は依頼が沢山あるからね。
「朝ごはんは、、、、、」
正直食欲もない。駄菓子すら食べる気が起きない。
これは相当やばいのでは。
自分でもそう思う。
ラムネもあんましいらない。欲しくない。
「まあ、探偵社に行ってからなんか食べよ」
食欲が出たらの話だが。
ここ最近、武装探偵社は何かと忙しい。常にバタバタしており、電話のコールが鳴り響く。僕も仕方なく受話器を手に取り、つまらない依頼もこの街の無能な警官のために受けている。
そのため、休む時間があまり無かった。疲れも溜まってそれが今日体に出たのだろう。
たくさん面白そうな依頼がある時に限ってこれか、、。
まあ、やってれば忘れるでしょ!!
って事でギリギリの時間に出社した。
「おはよー」
探偵社に着くのにいつもの倍時間がかかり、10分程遅刻してしまった。
国木田ほど時間に厳しくは無いが、なるべく出社時刻には着いておきたいとこ。
「おはようございます乱歩さん。」
低く落ち着いた国木田の声がした。
やばい。尋問される。
そう思った時、
「おはようございます!乱歩さん!」
国木田の尋問タイム(しつこくはない)が始まるかと思いきや、それを気持ちいいくらいに遮ったのは探偵社の新人。敦だった。
ナイス敦。
「んー」
いつも通り適当な返事をしながら重い足を前に進める。
ふぅぅ。疲れた。社に来るだけでこんなに疲れるとは。これから移動ばかりだと言うのに。
椅子に腰をかけいつものように新聞を眺める。
あっ今日4コマ漫画載ってない。
なんで今日に限って載ってないの。気分乗らないじゃん。
はぁぁ、と深いため息をつき不貞腐れていると、目の前に賢治くんがやってきた。
「乱歩さん!そろそろ行きましょうか!」
少し高めの声が僕の耳に届く。今日は頭にキンキンと響く。
「あーもうそんな時間か」
新聞を見ていたらあっという間に時間が過ぎていた。
結局何も飲まず食わずのまま行くことになってしまった。
念の為、飴1個くらいは持っとくか。
そう思い机にあった飴玉を1つポッケに入れ、いつもの帽子をギュッと被る。
よしっ。行こう。
そう思いガタッと音を立て椅子から立ちあがる。その瞬間、結構な目眩がした。
「ッ――」
あっぶな。賢治くんは先に扉の外に出てたのと、僕が偶々机に手を置いていたおかげで僕以外の誰にもバレなかった。
(ふぅ、、危なかった、、)
今日の付き添いは賢治くんか。太宰や国木田、与謝野さんじゃなくてよかった。
太宰は変に察しが良いし、国木田も何かと察しが良いし、与謝野さんは多分体調が悪いってすぐバレるし、バレたらバレたで治療される。
どんな治療かは分からないが。とにかく、探偵社の誰かにバレるのはほんとにごめんだ。
みんなを信頼していない訳じゃない。ただ、心配かけたくない。僕が弱い人間だって思われたくない。
そんな意地が後々自分を苦しめることになるとは、その時は微塵も思わなかった。
「異能力。超推理!」
いつものようにこの街の警官の中では難事件の事件を解いていく。
もちろんこの依頼をくれたのは顔見知りの刑事、箕浦くんだ。
「この人は他殺ではなく自殺。彼は警察官だ。
仕事終わりこっそり拳銃を持って帰り、手袋をはめすぐ には死なない箇所へ自分で2発撃った。
そして睡眠薬で眠らされた彼女はその音にも目を覚ますことは無い。自分が死ぬ前に彼女に拳銃を握らせ、拳銃に彼女の指紋を付けた。そして彼は出血多量で死亡した。」
(他警察)「なぜ、彼女が撃ってないと言えるのですか?あなたが言った通り拳銃には彼女の指紋が付いていました。なのになぜ彼女が犯人でないと?」
「はぁー。ほんっとうに莫迦だねぇ君は。指紋がついてた位置とかちゃんと調べた?」
(他警察)「なっ、!?調べましたが?」
(証拠写真を渡す)
「これさぁどうみても指紋の位置おかしいと思わない?
拳銃の指をかけるところには彼女の指紋は付いてない。彼が死ぬまでにそこまで間に合わなかったからだ。拳銃の手持ち部分を握らせたところで力尽きてしまった。
どうしてそんな事が言えるのかって?笑
僕は名探偵だからね!」
(他警察)「ッ…」
「というわけで、箕浦くん後は宜しくね〜」
「ああ。今回も世話になったな。」
ふぅ、、、。やっと終わった。。。
途中までは安井さんと箕浦くん(さっきの依頼)だったからすんなり終わったけど、最後は全く知らない警察官たちだったから全部説明してあげなきゃで元々体調良くないのに更に疲れた、、、。
賢治くんはいつもと変わらず元気そうでなにより。その元気を僕に分けて欲しいくらいだ。
途中目眩や頭痛の波が押し寄せながらもなんとか探偵社にたどり着いた。
「ただいまー」
(国)「おかえりなさい乱歩さん」
「ただいま戻りました!」
(敦)「賢治くんおかえりなさい!」
もうほぼ0%の元気を何とか振り絞って、ただいまという声と共に自分の席へ足を進める。
やっとだ、。やっと座れる。。
(ふぅ、、、)
そう思い気を抜いてしまった。
その瞬間。
「ッ―――」
今日の中でいちばん酷い目眩がした。
世界が回ってる。グルグルしてる。
僕は今立ってる?座ってる?倒れてる?
平衡感覚が失われ、そんなことさえも分からなくなる。
どうしよう。やばい。
(国)「ら、乱歩さん、、!?!?」
(敦)「え、乱歩さんちょっと、?!」
(賢)「乱歩さん!今日いつもより静かだったのは気のせいでは無かったんですね、、もっと早く気づいていれば、」
どうやら真っ暗の視界の中、耳に入ってくる声からして僕は倒れている。
ああ、心配かけてしまった。申し訳ない。もう限界だ。
そう思い意識を闇へと落とした。
(探偵社side)
(国)「賢治!お前は与謝野さんを呼べ!気に病むことは無い。」
(賢)「、! はーい!!」
「敦!お前は今出ている社員全員に連絡しろ。頼んだぞ。」
「は、はい、!!(えーっと、出てるのは太宰さんと谷崎さんと鏡花ちゃんか)」
(国)「乱歩さん。失礼します。」
(とりあえず起き上がらせる)
(国)、!!首がすごく熱い、、。これは朝からこんな状態だったのか、、?こんな中激務を、?俺は何をしていたんだ。乱歩さんの体調不良に気づけないなんて。こんな自分が嫌になる。
が、荒い息をしながら汗ばんでいる乱歩さんを目の前にそんなことを考えている暇は無い。
とりあえず医務室まで運ばなければ。
その時――。
「乱歩が倒れたとは誠か。」
表情はいつもと変わらないが、その声色にはどこか焦りと心配の感情が混じっていた。
(国)「!!社長!」
(福)「国木田。あとは私がやる。」
(国)「はい。ありがとうございます」
ーーー(福沢(社長)side)
(福)…乱歩…。この熱さは異常だ。どれだけ無理をしていたんだこやつは。。そろそろ休暇を渡そうとは思っていたが……。もう少し早めるべきであった。
(福)「乱歩。失礼する。」
(福)私の腕にもたれかかり汗ばみながら、荒い呼吸を繰り返す乱歩を抱き抱えた。
恥ずかしいなどと言っている暇は無い。今は乱歩の命、治療が最優先だ。
コンコンーーー。
(福)「与謝野。乱歩を頼む。」
(与)「はいよ社長。そこのベッドに乱歩さんを寝かせておくれ。」
ーーー(与謝野side)
(与)「乱歩さん失礼するよ」
与謝野は聴診器を使い心臓の音を調べる。
(与)「特に問題は無いね。次は採血だね」
(与)痛いのを嫌がる乱歩さんだけど、今回ばかりはごめんね。
(与)「失礼するよ」
チクッ。と針を刺すと同時に乱歩が少し唸る。
(乱)「んん……。」
(与)「ごめんよ必要なんだ。ついでに、点滴もしちゃうからね」
乱歩は中度の脱水になっていた。朝から何も飲まず食わずのまま激務をした事で、熱の脱水+更に脱水になっていた。
(与)血液検査は問題なさそうだね。このまま安静にしていれば熱は明日には下がるかな。
社長も探偵社のみんなも相当心配していたからねぇ。無論私もだけどね。
乱歩さんが倒れるなんて10年近く一緒に居た私でも見た事がない。毎回きちんと休んでいたからねぇ。でも今回は、依頼が沢山あるからって無理しちゃったんだね。
でも、乱歩さんらしいね。
と、乱歩の気持ちを汲み取った与謝野が微笑む。
先程までは微笑む余裕など無かったが、点滴をしたからか乱歩の呼吸の荒さは次第に治まっていた。
次回へ続きます!
コメント
2件
最高です!( ゚∀゚)・∵. グハッ!! 続き待っています!