テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
🎧前日譚「なんとなくの始まり」
きっかけは、本当に些細なことだった。
琉夏「……は?」
スマホを見ながら、変な声が出る。
琉夏「更新できないって何」
画面には、簡単な文章。
“契約満了につき更新不可”
理由も、特に書かれていない。
冬星「出るの」
横でギターをいじりながら、淡々と聞いてくる。
琉夏「いや、出るしかないだろこれ」
ため息をつく。
少しだけ沈黙した。
冬星「……来る?」
ぽつりと落ちる。
一瞬、意味が分からない。
琉夏「は?」
冬星「部屋」
短い説明。
さらに数秒、止まる。
琉夏「……いいのかよ」
冬星「別に」
いつもの調子。
その“別に”が、やけに軽い。
琉夏「狭いだろ」
冬星「まあ」
琉夏「邪魔じゃね」
冬星「なるかも」
少しだけ、間。
琉夏「……それでいいのかよ」
冬星は、少しだけ考えてから。
冬星「困るなら、やめればいい」
それだけ。
断る理由は、いくらでもあった。
気まずくなるかもしれないし、生活リズムも違うし。
何より、この距離が崩れる可能性もある。
でも。
琉夏「……じゃあ、少しだけ」
気づいたら、そう言っていた。
冬星は、軽く頷くだけ。
冬星「適当でいい」
その一言で、決まる。
引っ越しも、雑だった。
荷物は最小限。
段ボールも、ほとんどない。
部屋に入る。
少しだけ狭いワンルーム。
琉夏「……思ったより普通だな」
冬星「なに期待してた」
適当な会話。
荷物を置く。
とりあえず、空いてるスペースに。
琉夏「……ここでいいか」
床に座る。
冬星も、特に何も言わない。
沈黙。
でも。
不思議と、違和感がない。
琉夏「……なあ」
冬星「なに」
琉夏「これさ」
少しだけ迷う。
琉夏「いつまで?」
冬星は、少しだけ考えてから。
冬星「さあ」
やっぱりそれか、って少し笑った。
冬星「嫌になったら」
短い答え。
琉夏「……だな」
頷く。
約束は、しない。
期限も、決めない。
ただ。
“なんとなく一緒にいる生活”が、始まる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!