テラーノベル
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🎧短編「生活の音」
朝。
カーテンの隙間から、光が入る。
琉夏「……まぶし」
顔をしかめながら、布団に顔を埋める。
でも。
隣の部屋から、微かに音がする。
ギターの音。
小さく、適当に鳴らしてるやつ。
(……またかよ)
ため息をつきながら、起き上がる。
リビングに出る。
ソファに座って、冬星がギターを触っている。
寝起きのままの顔。
いつも通り。
琉夏「朝からうるせえ」
ぼそっと言う。
冬星「昼」
即答。
時計を見る。
12時過ぎ。
琉夏「……は?」
冬星「もう昼」
淡々と繰り返す。
少しだけ間。
琉夏「……まじか」
軽く頭をかく。
テーブルの上には、コンビニの袋。
空のコーヒー缶。
生活感が、適当に散らばっている。
琉夏「なんか食った?」
冷蔵庫を開けながら聞く。
冬星「パン」
琉夏「残ってる?」
冬星「ない」
琉夏「は?」
振り返る。
冬星「全部食った」
悪びれもなく言う。
琉夏「お前さぁ……」
呆れながら、ため息。
でも。
そこまで怒る気にもならない。
冷蔵庫を閉める。
何もない。
琉夏「コンビニ行くわ」
冬星「行く」
即答。
琉夏「ついでかよ」
冬星「ついで」
少しだけ笑う。
準備もせずに、外に出る。
適当な格好のまま。
コンビニまでの道。
並んで歩く。
会話は少ない。
でも、静かじゃない。
琉夏「今日なんかあったっけ」
冬星「夕方リハ」
琉夏「あー……だる」
冬星「寝てたのに?」
琉夏「寝てたからだよ」
どうでもいい会話。
でも、それが続く。
コンビニ。
適当に飯を選ぶ。
同じ棚の前で、なんとなく被る。
琉夏「それ昨日も食ってただろ」
冬星「だから?」
琉夏「飽きねえの」
冬星「別に」
結局、同じようなものを買う。
帰る。
袋を適当にテーブルに置く。
テレビはつけない。
音は、ない。
でも。
静かすぎることもない。
琉夏「それちょっとくれ」
冬星の買ったやつを指差す。
冬星「やだ」
琉夏「ケチ」
少しだけ無言で食べる。
でも。
途中で、冬星が自分のを少しだけずらす。
琉夏「……いいのかよ」
冬星「別に」
そのまま、一口もらう。
琉夏「うま」
冬星「だろ」
少しだけ笑う。
午後。
それぞれ、別のことをする。
琉夏はベース。
冬星はギター。
同じ部屋で、違う音。
たまに、混ざる。
意識してないのに。
琉夏「……今の」
冬星「なに」
琉夏「ちょっといい」
短い会話。
それだけで、また音が続く。
夕方。
リハに行く準備。
琉夏「先行っていいぞ」
冬星「一緒でいい」
即答。
少しだけ、間。
琉夏「……そっか」
それだけ。
ドアを開ける。
外に出る。
並んで歩く。
距離は、いつも通り。
特別な約束も。
特別な言葉もない。
でも。
生活が、重なってる。
音も、時間も。
それで十分だった。
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