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ギィと重い音を立てて扉が開く。
その向こうには影の帝王の王国が広がっていた。
夕日に染まるコンクリートの上。
轟木剛造、そして坂元要介を始めとした轟木一派のメンバーたちがいた。
屋上に持ち込んだソファに座り、花札をやっているもの、寝転がっている者。
轟木と坂元はダーツを楽しんでいたようだ。
その空気が突然ピリつきだした。
侵入者である俺たちを睨みつける、その視線は鋭い。
轟木は手に持っていたダーツをボードに突き刺すと、ゆっくりとこちらへ向き直った。
その巨体が動くだけで、周囲の温度が数度下がったかのような錯覚に陥る。
彼は俺たちを値踏みするように、一瞥するとその視線を天宮に固定した。
「お前は???天宮じゃないか。何の用だ。ここは俺たちのシマだぜ」
轟木がゆっくりと一歩前に出る。
彼の後ろに控える坂元たちの肩に、緊張が走るのが見えた。
一触即発。
そのあまりにも、危険な空気の中、しかし天宮蓮司は涼しい顔を一つも崩さない。
「やあ轟木先輩。ちょうどよかった。実は俺たち演劇の練習場所がなくて、困ってるんだ」
そのあまりにも場違いな言葉。
轟木一派の連中が「は?」という顔で互いを見合わせる。
坂元でも、その眉をひそめていた。
轟木もその一瞬、言葉を失う。
「はあ?」
天宮はそんな彼らの反応を楽しむように、言葉を続けた。
彼は轟木との距離を、さらに一歩詰め、まるで旧友に話しかけるように、その肩を叩いた。
「それで勝手なお願いなんだけど。この屋上の一部だけでいい。俺たちに少しの間だけ貸してくれないかな?先輩たちの邪魔はしないからさ。もし退屈だったら、よければ俺らの未完成で面白い劇のリハでも見物してくれよ?」
そのあまりにも無防備な提案に、最初に動いたのは坂元要介だった。
彼は轟木をかばうように一歩前に出る。
「剛造。別にこいつの戯言に付き合う必要はないんだぜ。まあ、俺らは剛造に従うけどよ」
しかし天宮は、そんな坂元の存在など、まるで意に介していない。
彼の視線は、ただ一人、轟木剛造だけを真っ直ぐに見つめている。
その瞳には絶対的な友好の色だけが浮かんでいた。
「俺らのリハの見学、それも悪くないだろ?」
長い沈黙が落ちた。
太陽のように輝く王と全てを拒絶する影の王。
二人の王が、静かに見つめ合っている。
その言葉に、轟木一派のNO2坂元要介ですら呆気に取られていた。
だが影の王、轟木剛造は違った。
彼はしばらく呆然としていたが、やがて腹の底から笑い出した。
「はっ!面白い。お前、最高だな、天宮。俺らにそんなこと言うやつ、初めてだぜ」
「いいぜ。好きにしろ。俺らも別に特にここで何かをしてるわけじゃねえ。おまえらのリハ楽しませてもらうよ」
「これだけ広い屋上だ。自由に使えよ」
坂元も呆れたように、笑いながらそう付け加えた。
王と王の交渉はたった数分で終わった。
それも誰も血を流すことなく。
天宮は満足そうに頷くと、役者チームに向き直る。
「よし決まりだな!じゃあ早速始めようか!」
俺はその一部始終を、ただ戦慄と共に観測していた。
奏:「ミラー。今の見たか。脅迫も交渉もなかった。ただ太陽がそこにいただけだ。それだけで影の王が折れた」
ミラー:「理解不能だ。俺の論理回路ではこの現象は説明できない」
奏:「ああ。あれは、もはや人心掌握術などではない。世界の法則を書き換える神の御業だ」
俺はその中心に立ち、静かに思う。
(とんでもないことになったな)
天宮が役者たちに指示を出し稽古の準備が始まったその時だった。
轟木の視線が俺の姿を捉えた。
轟木が、静かに俺のほうへ歩いてくる。
そして俺にだけ聞こえるような、低い声で言った。
「例の件どうなった???近いうちに報告に来いよ」
その瞳には天宮に向けるものとは、全く違う冷たい光が宿っていた。
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#ファンタジー