あらすじを読むことに御協力お願いいたします。
文章中に親分のことをニート呼ばわりしてますが違います\_( ゚ロ゚)ここ重要!
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私はこれまで色んなアルバイトをして来た。定職にありついたことはあるがその会社は倒産してしまった。どう足掻いても仕事運が無さすぎるようで。ちょっと働いたらまた違う仕事、というのをここ数年やってきた。住む場所もネカフェが主だ。根無し草が私の生き方である。そんな私が、ここ最近ではひとつの会社で割と長く働いている。それは何でも屋のアルバイトだ。と言っても、私は色々な仕事はしてきたが専門的な知識がある訳では無い。なので、誰でも出来るたとえば「人気商品を買うために朝から行列に並ぶ」とか、「散らかった部屋の掃除をする」とかそんなのばかりだ。だが、毎回仕事内容も違うから結構楽しめている。で、今回は何の仕事が来るのだろうかと思ったら、今回はすごく簡単な仕事でちょっとした身の回りの世話だそうだ。ある人の家に行き、時々、その家の2階に住んでる人にものを持っていったりすればいいだけの仕事。何だそれは、と思い詳しく聞いてみると、ようはニートの世話をして欲しいということらしい。その家には何年、いや何十年も自分の部屋にひきこもっているニートがいて、毎日親が食事を部屋まで持って行っているんだそう。これまでは専業主婦だった母親がニートの世話をしていたが、最近亡くなって父親だけになってしまったらしい。父親はニートを支えるために働いていて、昼間は世話ができない。それで仕事が回ってきたらしい。
私は最初断った。風呂とかもろくに入っていないだろうし、トイレすらちゃんと行っていないのだろう。下手すれば不潔な処理をやらされかねない。そんなのはごめんだ。だが話によると、そんなことはしないでいいらしい。そのニートも風呂やトイレもしっかりしているそうだ。ただ働かないだけで、日常生活は何も問題ないと。ニートのくせに。
その父親が居ない時の面倒を見ればいいだけで、大変なことは任されない。ただ食事を持っていったり、買い物に行けばいい。その他の時間帯はテレビやらゲームやら何でもしていていいらしい。時給を聞いてみると、割と良かった。私は迷ったが、まずは一日やってみることにした。キツかったらすぐに辞めればいい。
翌日、私は教えてもらった住所の家に向かった。その家はどこにでもあるような住宅街の一軒家だった。周りの家々と比べて少し古臭い感じの家で、チャイムを鳴らすと白髪のおじいさんが出てきた。
「この度はありがとうございます。依頼していた者です。菊さんで合っていますか?」
この人が、ニートの父親らしい。とても真面目そうな人だった。
家に上がらせてもらうと、私はその人から説明を受けた。
「長年面倒を見ていた妻が亡くなって、私一人では出来なくなったんです。それで手伝いをお願いした次第です。基本的には待機、待機中には何をしていてもいい。お菓子を食べてもゲームをしていても自由。ただ、2階の一番端の部屋から床を叩く音がしたらすぐに向かうこと。部屋の前にメモが置いてあるだろうから、その指示に従ってくれればいい。食事の用意か、何か買ってきて欲しいかの二択がほとんどで、ほとんど大変なことは頼まれないと思います。たまに1週間のうち3日間の洗濯、掃除をするぐらい。昼飯と指示されたら冷蔵庫にある食材でなにか作ってください。お菓子だったら棚に用意してあるから皿にのせてドアの前に置いてください。たまに、なにか買ってきて欲しいと指示されることもあります。その場合は、お金を用意してあります。近くのコンビニに行って買ってきて欲しいのです。お金が足りなかったらすみませんがその分を出してくれませんか?その分のお金は後で返しますので。
あ、なるべく返事はしてやってください。昼飯持ってきましたとか。買ってきましたとか。あと何でも屋でしたよね?メモに少し難しいことが書かれていることがあります。その時は従ってやってくださいな。」
「はあ、了解です。」
難しいこと?と疑問に思ったが特に気にならなかったので、その思考はふっ飛ばした。
「私は夕方には戻ります。それまでお願いしますね。」
聞く限りでは簡単な仕事だ。
「そろそろ会社に行かなくては。では、よろしくお願いします。」
そう言うとおじさんは玄関に行き、靴を履き始めた。
履き終えるとこちらを向き、何かを思い出したような素振りをした。
「それとこれはお願いなのですが、決して姿を見ようとしないでください。では、、、。」
そう言っておじいさんは出かけていった。
言われなくても、いい歳したニートなんて見たいとは思わない。
そういえば、一度もどういった人が住んでいるのか言わなかった。
男か女か分からない。まぁ、興味無いが。
私は待機中何をしててもいいことだったので、スマホゲームをして過ごしていた。しばらくして『ドンドン』と床を叩く音がした。
これが合図なのか。
私は2階への階段を上がった。2階はなんだか暗い雰囲気だった。窓があって日も差しているのにこの暗さは一体何なのか。この奥の部屋にニートがずっと住んでいるのか?
ギシギシと床の軋む音がする。部屋前に行くと床に紙が置いてあった。
『昼飯』
綺麗とは言えないが別に汚い訳でもない。普通の字だ。
「かしこまりました。」
私は返事をして1階に戻り、キッチンの冷蔵庫を開けてみた。すると冷凍食品、野菜、肉、魚と大量に食材が詰め込まれていた。すごい。
自分の家にも、もちろん冷蔵庫はあるがこんなに食材は無い。感激しながら食材を取り出し、調理器具を探した。シンクの下の引き出しを開けるとフライパンも鍋もある。しかも新品のようで傷がない。ほとんど使っていないのだろうか。
とりあえず使いそうな物を取り出した。
さて、何を作ろうか。
なかなか迷う。しょうがない。こんなに食材があるのだから。
あっ、と閃いた。
肉じゃがでも作ろうか。1番得意な料理だから。
早速野菜室から取り出す。
じゃがいもと人参としらたきと、、
「あっ、」
そういえばおじいさんに食べられないものを聞くのを忘れていた。
でも、嫌だったら残してもらえばいい。
なので黙々と調理を進めた。
二人分の食事が出来上がったあと、2階に上がり、まとめて部屋の前に置いた。
「昼ご飯作りました。嫌なものがあったら残してくださいね。」
返事は無い。だが私はそそくさと階段をおりた。
一時間程すると、また『ドンドン』と音がした。2階に行くと食べ終わったようで空の食器があった。食べ残しはなく、ちゃんと食べてくれたようだ。
私はそれを持って1階に戻り、キッチンシンクに置く。スポンジに洗剤を付けゴシゴシと食器を洗った。
それからまたしばらくして合図があったので行ってみると、今度は『お菓子とジュース』とメモにあった。
返事をして私は棚からポテトチップスを取り出し皿にあけ、コップとジュースの瓶を用意した。
部屋前に置き、「お菓子とジュース持ってきました。」と言って立ち去る。少ししたら、また合図があったので、食器を片付けに行く。
その日の仕事はそれだけだった。
あとは待機時間。夕方におじいさんが帰ってきて、
「今日はありがとうございました。」とその場で一万円を貰った。
かなりボロい仕事である。
私はしばらくこの仕事を続けることにした。
おじいさんの仕事がある月〜金の週五日間、私はニートの相手という仕事を続けた。
まに洗濯と掃除。それで終わりだ。たまに乾電池とかティッシュとか買ってきてというメモが来る。その時はあらかじめ用意されているお金でコンビニに行き、買ってくる。そして例によって部屋の前に置くだけ。小学生でもできる行為だ。 これで一万なんだから結構おいしい。
そういえば前、パスタとトマトのカプレーゼを置いたところ、片付ける時にはいつも無いメモが置いてあった。
なんとそのメモには「もっと欲しい」と書いてあり、へぇ、こんな一面もあるのか。と思ったところだ。
その後ミネストローネ、パエリアなどを置くとメモが付いてくるようになった。
どうやらトマトが好きなようだ。
それからは料理はトマト料理がほとんどだった。
この生活が1週間、2週間と続いた。
しかしどんな人なのだろうか。もう十回以上いるが一回も姿どころか声も聞いたことがない。本当にあの部屋から一歩も出ていないようだ。最初はどんな人がいるかなんて一切興味なかったが、ここまで徹底して会えないと興味が湧いてくる。今度、こっそり覗いてみようか。そう思うと、とことんやりたくなるのが人間の性と言うもので、好奇心が理性に勝ってしまう。
悪いとは思っている。不可抗力である。そう自分に言い聞かせた。
食事を置いて戻るふりをし、こっそり部屋から出てくるのを待てばいい。早速実行することにした。
私はある日、いつも通りゲームをして待機していると
『ドンドン』
といつもの合図が出た。2階に行くと『昼飯』と書かれたメモ。私はいつも通り冷蔵庫にある食材で調理し、部屋前に置いた。そして1階に戻ると見せかけ、階段の途中で身を伏せ隠れた。少しすれば扉が開いてご尊顔を拝めるはずだ。
5分、10分、15分。
結構な時間が経ったが一向にドアは開かない。何故?いつになったら開くのだろうか?
慎重にも程がある。
いや、これはまさか、私が潜んでいることがバレているのだろうか?
どうしよう?
だんだんと身体が痛くなってきた。
だが、別にどうしても見たい訳では無い。
諦めて1階に戻ろうか。
そう思っていたところだった。
『ギィィィィ、、、』
軋む音がして心臓が跳ね上がる感覚がした。
音のした方を見てみるとドアがゆっくりと開いていた。
(来た!!!)
私は息を殺し、音を立てないようにした。
さぁ、どんな顔をしているのだろうか。
少しして、奥から手が伸びてきた。目を細めてよく見てみると、普通の成人男性のような腕だった。なんなら私よりもたくましい腕だ。肌は結構焼けている。最初は普通だとしか思わなかったが、すぐ異変に気づいた。腕が、一本から2本。それまでは良かった。だが、気付けばその腕は2本から3本に増えていたのだ。慌てて目をこすっても、その異様な光景は変わらない。
「カンカン」
だんだんと増えていくその手で食器を掴み、部屋の中に持って行く。
そして、「ギィィィィ、、、」とまたきしみ音を鳴らして扉が閉まった。
私はショックのあまり暫く動けなかった。
少しして息が上がった。苦しい。
自分がちゃんと呼吸していないのに気付き、意識するように呼吸した。
なんなんだ今のは?この言葉が私を犯した。
訳が分からず叫び出したい衝動が湧き上がってくる。私はそれを必死に抑えた。
とにかく1階のリビングに戻ろう。
私は階段を降りていった。
音立てないように降りたつもりだが正直自信がない。
どうにかリビングに下りると、一気に身体から汗が吹き出てきた。
なんだあれは。あれは人間じゃない。
あの部屋には人間じゃないモノが 住み着いている。
とにかくここを逃げ出そう。
怒られるだろうが知ったことか。
私は急いで荷物をまとめた。
するといきなり「ドンドン」と音が鳴った。
もう食べ終わったのか。
片付けろということだろうが、またあの部屋に行く気は、、
「ドンドン」「ドンドン」
また鳴った。
催促しているのだろうか?2回連続で鳴った。
だが、あそこに行くのは嫌だ。
「ドンドン」 「ドンドン」 「ドンドン」
今度は3回鳴らされた。音も大きくなっている。
これはマズイ。このままだと部屋から出てくるのではないか。
仕方ない、取りに行こう。さっさと食器を取りに行って、それから出ていこう。
私はまた2階に行った。
扉は閉まっていて、食器が置かれている。
私は足早に近づき食器を手に取った。
さっさと下に行こう。
そう思い振り返った瞬間だった。
「見たな」
後ろで声がした。
低い男の声。
思わず声のした方を見ると、扉が開いていてそこから腕が伸びて来た。
手足を動かそうとしても、金縛りにあったかのように動かない。
(動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!)
私は必死に心で叫んだ。
だがそんな努力も虚しく、どんどんあの手は近づいてくる。
「ヒッ、」
何本もあり、数え切れない腕が私の頭、腕、首、肩、腰、足首と身体中を掴んだ。
物凄い腕力だ。
今にも私の骨が折れそうな勢いである。
ふいに、「ソレ」がドアの隙間から見えた。
緑色の目に目線が合うと、私は一瞬で部屋に連れ込まれた。
「待っとったで。菊ちゃん。」
「ギィィィィ、バタン。」
扉が閉まる。
その廊下は食器がぽつんと置いてあるだけで、静まり返っていた。
コメント
4件
続きをどうかお願いします…気になります…orz
うぉぉ……すげぇ小説一冊できそう。親分(?)ちゃんと働くんだぞ
続きは、、、善処します