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遠くから15時を知らせる鐘の音が聞こえる。
「おいロー、お前にしちゃあ上出来じゃねえか。まさか海軍大将がお出ましとはなあ。七武海をやめたおれは怖くて仕方ねえよ」
「くっ…嘘をつけ!」
「フッ……」
「答えろ! ドフラミンゴ! お前は世界政府の力を使って、わずか10人あまりのおれたちを騙すためだけに世界中を欺いたってのか!?」
「フフフフフ……大きなマジックショーほど、意外に簡単なところにタネはあるもんだ。ロー。〝そんなばかなことするはずがない〟そう思い込む人間の常識、固定観念が盲点を生む」
「こんなやり方、思いついても出来るもんじゃねえ。お前は海賊だ! 例え七武海であろうが、王位に就いていようが、世界中に嘘のニュースを流せる権限なんて、あるはずがねえ!」
ローは珍しく感情を露わにしてドフラミンゴに向かって叫んでいた。
「もし、そんなことができる奴がいるのなら、お前は天竜――」
俺はそこまで言いかけたローの口を俺は塞いだ。俺は、ちゃんと知らないが、でも、でも節々は知ってるんだ。キャラクターの過去は、大体知ってるんだ。あの男が、ドフラミンゴが元天竜人であることを俺は知ってる。
震える手でローの口を塞ぎ、俺は首を横に振った。
「おれの目的は1つだ、ロー」
「うっ……」
「とにかく、お前を殺したかった」
こちらに向けられる強烈な殺気に、俺は腰が抜けそうになる。こいつには勝てない。俺の本能がそう告げている。
だがそれでも、逃げちゃだめだ。俺はローの共犯者で、ローと一緒にいることを選んだんだ。
「ジョーカー! さっさとこんな奴らたたんじまっ…うぐっ」
「ふっざけんな! お前をドフラミンゴに渡す気はねえよ! そうだよな、ロー!?」
「あぁ! 何も約束は守られてねえんだからな! ドフラミンゴ、この取引は白紙に戻させてもらう!」
「ギャー! 何言ってんだてめえ! ここまで来て!」
「フフフフッ、それが10年以上も無沙汰をしたボスに言う言葉か? 置いてけロー、エメリヒ。シーザーはおれの可愛い部下だ」
「ジョ~カ~!」
「騒ぐなッ」
俺はシーザーを1発引っ叩く。ドフラミンゴの意識が藤虎の方へと向かう。盲目の海軍大将、藤虎はドフラミンゴの七武海としてのルール違反を指摘するが、ドフラミンゴは特に気にしていないらしい。どうとでもできる自信があるのだろう。
「それで? 海軍は今回のローの処分をどう決めた?」
「報じられた賞金首の麦わらの一味との剣、記事通り彼らと同盟なら〝黒〟……彼らがローさん、あんたの部下になったのなら〝白〟だ。返答によっちゃ、あっしらの仕事はあんたさんと麦わらの一味の逮捕ってことになりやす」
「おっ、おい! 何だその判定は! そんなもん嘘つきゃしまいじゃねえか!」
藤虎の言葉に、俺は自分の心臓の鼓動しか聞こえないんじゃないかというくらい焦っていた。
「――麦わらとおれに上下関係はない! 記事通り同盟だ!」
「フフフッ、不器用な男だ、おめえは」
「では、称号剥奪で……ニュースはそれで済めばいいが…」
藤虎が長ドスを抜き、能力を発動させた。確か大将藤虎の能力はパラミシア系、ズシズシの実の能力……重力を自在に操る悪魔の実の能力者だ。それだけでも恐ろしいのに、その能力の影響は宇宙空間にまで及ぶ。つまり……あの男は自分の意思で隕石を呼び寄せることができる。
「バッ、バカな!」
「冗談じゃねえぞ、おい」
俺はシーザーを抱えて遠くへ逃げる。このどさくさでシーザーが掻っ攫われたら元も子もないからな。
残ったロー、ドフラミンゴ、藤虎は降ってきた隕石を自分たちの戦闘力でどうにかしてしまう。だが隕石のエネルギーというものはすさまじいもので、3人の足場以外はぽっかりと大きな穴が開いてしまっていた。
「ぶ、無事か! ロー!!」
砂埃が晴れ、そこにいた3人は一応無事のようだ。やっぱりあいつら化け物だよ……。
「元帥の教育はどうなってんだ、野良犬が!」
「目が見えるかどうかの次元じゃねえな」
「へえ、どうも。ほんの腕試しで。それじゃあ、逮捕させていただきやす。よござんすね、ローさん」
「くっ…」
「まさかお前、このおれから逃げ切ろうなんて夢見てんじゃねえだろうな?」
ローは黙って俯いている。だがすぐに顔を上げ、俺の方に視線を寄越した。俺にどうしろって言うんだ。何もせずにシーザーを死守しろと、そういうことなのか? ロー。
俺はシーザーの腕をしっかりと握りしめる。ローとドフラミンゴはグリーンビットの森に消えていき、それを追うように藤虎率いる海兵たちも森の中に入っていった。
「……ふざけんなよ、ロー。俺言ったはずだぞ……俺を何も知らない子ども扱いするのはやめろと!」
でもここで俺が考えなしにローの元へ行けば、きっと俺はローの邪魔になる。それは嫌だ。
「おいジェイデン! お前俺の心臓を返せ!」
「うるせえ! てめえの心臓は今ローが持ってんだよ!」
「はぁ!? さっきまでお前が持ってたじゃねえか!」
「そんなもんとっくにローがシャンブルしたに決まってるだろ、俺のポケットの中には小石しかねえよ!!」
そう言いながら俺はポケットの中の小石を投げ捨てる。それを見たシーザーが森の中に走り出した。
「俺から離れるんじゃねえ、シーザー!」
森の中に入っていったシーザーを俺は追いかける。踏ん切りの付かなかった俺の思いに言い訳がつけられそうだ。