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「ルーデウス、くすぐったいわよ」
「えへへ、エリスの身体可愛いですぅ」
俺はベッドの上で後ろから抱き付きながら『両手』で彼女の身体を触っていた。
夫婦二人で眠る光景。
変わらない愛情。しかし、変わる物もあった。
「エリスの赤ちゃん、本当に楽しみですね!」
「そうね、ルーデウスとの子供だもの。なんというか、良いわね」
俺に背中を向けていたエリス。
そんな彼女が身体を回して俺に向き直った。
それにより、大きなお腹が俺の身体に当たる。
肥満体とは縁遠い彼女。大きなお腹の正体は決まってる。
「エリス?動きすぎたり、無理しちゃダメですよ?」
「う、動いちゃダメなの?本当は動きたいけど。ルーデウスが言うなら、なるべく気を付けるわ」
エリスの言葉。俺は、それを苦笑いしながら聞く。
『なるべく』だと困るんだよなぁ。
エリスの妊娠。それは幸せと同時、俺の心配ごとが一つ増えてしまう瞬間だった。
彼女のお腹が大きい理由。それは妊婦さんだから。
そう、エリスは、俺の子供を妊娠してくれた。
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俺は、エリスをベッドに寝かせて寝室を出た。
「エリス、無理したらいっぱいキスしますからね?」
そう言ったら、真っ赤な顔で口をパクパクさせて「ばかっ」って言われた。
ちょっと恥ずかしそうに、クネクネしながら言われた。
危なかった。可愛すぎて本当に悶え死ぬかと思った。
エリスのことを考えながらニヤつく俺。
そんな俺を白い髪が見つめていた。
「ルディ、おはよう」
「シルフィ、おはよう」
俺に挨拶をしてくれた女の子の名前は『シルフィエット・グレイラット』
俺の二人目のお嫁さんだ。
シルフィと結婚してから半年。
最初は彼女に愛してもらえるか不安だった。
しかし、今ではこんなことも出来るぐらい仲良しだ。
「ルディ、顔近いよっ///」
「いやぁ、シルフィが美人さんだから良く見ておこうかなって」
「うぅ、良いんだけど。その、近付いた勢いでお尻フニャフニャされるとびっくりするから」
あら、これは失礼。どうやら俺の手が彼女のマシュマロを触っていたみたいだ。
でも、仕方がないのだ。だって、シルフィは美人と可愛いを備えたハイブリッドお嫁さんだからね。
我慢しようとする方が無理な話なのだ。
まぁ、結婚はしてるし。シルフィも赤い顔で満更でもなさそうだし。
多分、誰も損はしていないと思う。
ちなみにシルフィは、どんなに激しくシても、我慢出来ずにリビングでぐちゃぐちゃにシちゃっても。
「ボク、ルディのこと大好きだよ?」
いつもそう言ってくれる、優しすぎるお嫁さんなのだ。
エリスとシルフィ。どちらもタイプは違うけれど俺は二人とも大好きだ。
だから俺は決心する。
エリスとシルフィ。二人とも俺が幸せにする。
そんな誓いを立てながら、俺はシルフィをリビングのソファに押し倒す。
「ちょっと、ルディ///」
「シルフィさんが可愛すぎて、私辛いです」
俺は彼女の首元に顔を埋めた。
可愛くて良い匂い。
エリスも良い匂いだけど、それとは違う匂い。
柔らかくて包容力がある匂い。
真っ赤な顔で俺を見つめるシルフィ。
俺もかなり興奮してしまったが、ここはリビングだからえっちなことは無しだ。
恋人繋ぎと深いキス。
それだけをして、そっと離れる。
この行為、俺は軽めのつもりだったのだが。
目の前のお嫁さん、シルフィは俺の名前を呼びながらビクビクと震えていた。
少しやり過ぎたかな?俺は心の中で反省する。
しかし、それでも彼女は小さな声で呟いてた。
「ルディ、好きぃ」
この言葉を聞いて再確認する。
何度でも言おう。俺はシルフィが大好きだ。
エリスもシルフィも大好きだ。
だから、そんな彼女に嫌われないように、大好きな人を助けられるように。
俺は、強くなろうと決心した。
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「兄さん!二人と結婚するなんて私は許してませんから!」
「いや、ノルン。仕方ないだろ」
「仕方なくありません!シルフィ姉さんもエリスさんも悪くありませんが、兄さんは悪いです!」
トホホ。
思わずこんな声が出てしまうほど俺は凹んでいた。
ノルンからの罵倒。
かなり本気の罵倒。しかし、言葉は、これで終わらない。
「だから、兄さん」
「はい、なんでしょうかノルンさん」
「シルフィ姉さんもエリスさんも。兄さんが幸せにしてください」
「それは、もちろん頑張る」
こんな感じで認めてくれてはいる。
どうやら、前にシルフィが「ノルンちゃんが好きなパウロさんも二人お嫁さんが居たんだよ?」という話をしてくれたらしく、それからは理解を示してくれている。
ノルンはシルフィが好きだし、お世話になったのだろう。
シルフィの悪口は絶対に言わない。
恩を忘れないノルン。
俺は、こんなにクズなのに、ノルンはすごい妹だ。
パウロも、きっと鼻が高いだろうな。
そんなこんなでノルンとの関係は良好といえるだろう。
でも、俺の妹はもう一人居る。
赤い髪が特徴的な大切な妹。次は、その子の話をしようと思う。
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「お兄ちゃん、性欲すご過ぎない?」
「いきなりどうしたんだよ」
家にある庭にて、俺はアイシャと話していた。
性欲という言葉。
兄妹なら気まずくなるような言葉。
しかし、アイシャはため息を吐いて、ゆっくりと言葉を続ける。
「お兄ちゃんが旅から帰ってきて、それから毎朝エリス姉かシルフィ姉が疲れ切った表情でお兄ちゃんの寝室から出てくるんだもん。しかも、エリス姉に関しては一瞬で妊娠したし」
「ま、まぁ、俺は愛妻家だから」
この言葉と同時。頬をポリポリと掻く俺。
アイシャは、とても優秀だ。
俺のこと、家のことをめちゃくちゃ見てくれている。
だからこそ少し怖い時もあるが。
まぁ、アイシャも俺を嫌っているという感じはしない。
「はぁ、愛妻家で片付けていいのかなぁ。まぁ、とりあえずシルフィ姉は言うまでもないけど、エリス姉もお兄ちゃんの言うことなら結構聞いちゃうから、妊婦さんに無理させるようなことはダメだよ?」
「は、はい、気を付けます」
妊婦に手を出すな。まさか、妹から言われることになるとは。
もちろん無理させるつもりはないが。
うん、改めて気を付けよう。
エリスの可愛さに誘惑される可能性は高いからな。
「てことで、お兄ちゃん?」
「なんだ?」
アイシャが上目遣いで俺を見つめている。
なんだか嫌な予感がしてきた。
「我慢出来なくなったら、私のこと襲ってもいいからね?」
「うん、絶対にないから安心してくれ」
「ちぇー、お兄ちゃん即答じゃん」
当たり前だ、誰が妹なんて襲うか。
しかもアイシャを襲ったらパウロが黙ってないだろう。
多分半殺しにされる。
パウロ、パウロ。そうだ!忘れていた。
これからパウロと剣術修行する予定だったんだ!
「アイシャ!悪い、用事があるから後でな」
「分かった!ご飯作って待ってるね〜」
俺は木刀を取りに家に向かう。
その後ろ姿をアイシャが見つめている。
まぁ、木刀を取ったらまた庭に来るのだが。
一応バイバイと手を振っておく。
すると、アイシャも笑顔で手を振り返してくれた。
大切な二人の妹をもっと大切に出来るように。
俺は、握る木刀に力を込めた。
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「どうした!ルディ!もっと打ち込んでこい!」
「っ!」
バン!バン!バン!
木と木がぶつかる音が響く。
俺は、パウロと剣の修行をしていた。
ドゴッ!
この音と同時。パウロの剣が俺の頭に勢い良くぶつかる。
「い、痛い」
「お、また俺の勝ちだな」
「父さん強いですよ。また負けました」
「うーん、ルディが闘気を纏えたら、もっと良い線行けそうだけどなぁ」
パウロの言葉。
彼は、仰向けに倒れる俺を見下ろしながら声を放つ。
迷宮で見たパウロの剣技。
北神流、水神流、剣神流。全てが上級のパウロの剣は鋭くて強い。
そのため、迷宮から帰ってきてからは剣の修行に付き合ってもらっている。
毎日の修行。
荒い呼吸で休もうと寝転がる俺。
そんな俺に、パウロが声を掛けてくる。
「休んでも良いけどな。ルディ、それじゃあエリスは守れねぇぞ?」
「エリスを守れない?父さん!もう一回お願いします!」
「お、やる気出てきたな」
パウロの言葉に促される俺。そんな俺は勢い良く地面から飛び上がり、木刀を握る。
両手で握る木刀。そう、俺には左手が付いていた。
とはいえ治したわけではない。
ザノバとクリフが作ってくれた義手。それを付けているのだ。
義手、正直に言うとかなり使いやすい。
感覚もあるし魔術も撃てる。
腕に付けたい時は『土よ、我が腕(かいな)となれ』と唱える。
逆に外したい時は『腕よ、土へと戻れ』と唱える。
必要な詠唱はこれだけ。
本当に高性能だ。
そう、高性能、すごい高性能。
でも、そんな性能を誇る物でもエリスの左足は治せなかった。
消費魔力の問題じゃない。いくつか原因はあった。
俺の欠損は手首より上だけだったが、エリスの欠損は太ももから足先まで全て欠損しており、欠損範囲が広かったこと。
元々はザノバのフィギュア制作のための義手であり、足用の物は無かったということ。
そして、何より。
俺が、義足を作らせなかった。
作らせなかったのはエリスが嫌いだからでも、憎いからでもない。
寧ろ、逆。エリスに無理をさせたくなかったから。
きっと、エリスは義足を付けたら戦おうとすると思う。
本調子じゃなくても、俺のために戦うって言ってくれるんだと思う。
優しいエリス。でも、だからこそダメなんだ。
本調子じゃないエリスが戦って無理をする。
もしも、途中で義足が壊れたら?
魔力が枯渇して、義足が使えなくなったら?
今度こそ、彼女が死んでしまう。
だから、俺は義足を作らせなかった。
「ルディ、少し休憩するか」
「は、はひぃ」
「顔、めちゃくちゃ腫らしちまったな。悪い。ちょっとやり過ぎちまった」
「だ、だいぼぶでふ(だいじょぶです)」
俺は腫れた顔で声を絞り出す。
エリスの居ない戦闘。一人での戦い。俺は、その術を見つけるためにパウロと剣術修行をしている。
水神流は俺が忘れかけていたし、北神流はパウロが嫌いって言って中々教えてくれなかったけど。
まぁ、それでも予見眼を駆使しながら少しずつ成長出来ていると思う。
そんな思考を巡らせながら、俺は自身に治癒魔術を掛ける。
ただの中級治癒魔術。木刀での傷しか治せない魔術。
もしも、王級治癒魔術が使えたら。どうしても、そんな考えになってしまう俺の頭。
エリスと共に戦う未来。そんな有り得ない未来を妄想してしまう頭が、俺は本当に嫌いだった。
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─ロキシー視点─
ここ最近、一つの悩み事で頭を抱えています。
それは、ルディと約束した『王級治癒魔術の会得』
上級でも難しいのに、聖級を飛び越えて王級。
ルディに宣言する所までは良かったのですが。かなり厳しいです。
高位の治癒魔術はミリス教団が保有していると聞いたことがあります。
普通に考えれば、ミリス神聖国に赴き、高いお金で依頼するのが一番なのでしょうが……お金が高すぎます。
高値で売却出来るマナタイトヒュドラの素材があるとはいえ、ルディとエリス。二人を治すお金。
正直、あるとは思えません。
私は、ルディとの日々を思い出していました。
困った時私の弟子ならどうするだろう?
優秀なルディならどうするだろう?
ルディのことを考える私。
その瞬間、身体に雷が走りました。
「ルディが言っていた『最強』」
思い出したこと。あれは、私が迷宮から救われた翌日のことでした。
衰弱していた私。そんな私の耳を彼の独り言が揺らしました。
「龍神 オルステッド。アイツが転移遺跡を使うなら待ち伏せしたら殺せるのか?」
今でも覚えています。
優しいルディが、天井を見つめながら言った『殺す』という言葉。
彼の呟いた『龍神』という言葉。
七大列強。その第二位である龍神。
私は、少しだけ長く生きてきました。
このぐらいは知っています。
会ったことはありませんが、ルディが殺すと言う以上、きっとすごく悪い人なのでしょう。
でも、それでも『最強』と呼ばれていることは私でも知っています。
希望は薄い。それでも、私はルディと別れた転移遺跡に足を運びました。
周りにあるのは砂漠だけ。他には何もない。それでも、場所は分かります。
ルディとの別れは私にとって忘れられないものです。
彼の匂い、表情。そして周りの光景。
これが分かれば後は大丈夫です。
ミリスが独占している王級治癒魔術。
もしかしたら、龍神も知らないかもしれません。
でも、それでも!少しでも可能性があるなら、私はそれに賭けます。
「龍神に、私は殺されるのかもしれませんね」
失敗したら死ぬ。
それは分かりきっています。
でも、安いものです。
私の命でルディとエリスを治せる確率が上がるのなら。
私は喜んで命を賭けます。
だって、私の命は助けられた命なのですから。
砂漠の中で、たった一人で待つ。
王級治癒魔術を会得する。そのために、私は…
…最強を、待ち続けていました。