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坂田銀にゃん
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# 第2章:ゾンビ刑事、捜査一課に帰還する(前編)
「おいおい、嘘だろ……」
「化け物かよ、あの人……」
米花中央病院の廊下で、医師や看護師たちが信じられないものを見る目で絶句していた。
全身骨折と重度の熱傷。本来なら数ヶ月はベッドから動けないはずの重傷である。にもかかわらず、事故からわずか数週間後、松田陣平は全身の包帯を乱暴に引っぺがし、パジャマから黒いスーツへと着替えていた。
「おい先生、もう痛まねぇし動けるから退院な。書類はそこに置いとくぞ」
「ま、松田さん! 骨は一応くっついていますが、普通はそんな速度でリハビリもなしに歩けません!」
「あ? 萩原の野郎にケツ蹴っ飛ばされた反動がまだ残ってんだよ。じゃあな」
医者の制止を軽やかにかわし、松田はいつも通りの足取りで病院を後にした。驚異の生命力と、現世への力技の帰還。松田陣平という男の辞書に「安静」の文字はなかった。
同日、警視庁刑事部捜査一課強行犯三係。
重苦しい空気……ではなく、どこかまだ松田の「あの生還劇」の衝撃から立ち直りきっていないオフィスに、いつも通りの気怠げな足音が近づいてきた。
ガラッ、と勢いよくドアが開く。
「よぉ。長々と休んじまって悪かったな」
ポケットに両手を突っ込み、少し歪んだサングラスを指先で直しながら、松田がニカッと不敵に笑って立っていた。
「「「「えええええええーーーーーッ!!!???」」」」
捜査一課のオフィスに、松田の大絶叫にも負けないほどの悲鳴が響き渡った。
高木刑事は持っていた書類を文字通りぶちまけ、白鳥刑事はコーヒーを噴き出し、千葉刑事は開いた口が塞がらない。
「ま、松田くん!? お前、退院は来月のはずじゃ……!」
目暮警部がデスクを叩いて立ち上がり、信じられないといった様子で松田に駆け寄る。
「あぁ、じっとしてんのが性に合わなくてよ。まぁ、ちょっとあの世の入り口までドライブに行ってただけですよ」
「ドライブってあんたねぇ……!!」
そこへ、一歩遅れて部屋に入ってきた佐藤美和子が、松田の姿を見るなり拳を握りしめた。その目には、じわじわと涙が浮かんでいる。
「ちょっと松田! あんた病院を抜け出してきたんじゃないでしょうね!? 看護師さんから私に怒りの電話がかかってきたのよ!」
「怒るなよ佐藤。ほら、みんなにお土産持ってきてやったからさ」
「お土産ぇ?」
松田は机の上に、ぽんと安っぽい箱を置いた。病院の売店で適当に買ったであろうクッキーの詰め合わせだ。
「おいおい松田、お前が生きて戻ってきただけで、これ以上の土産はねぇよ……!」
高木刑事がボロボロと大粒の涙を流しながら、松田の肩に抱きついた。
「ちょ、高木、痛ぇ! まだそこ骨が完全にくっついてねぇから!」
「あ、すみません! でも、本当に、本当に良かったです……っ!!」
「まったく、人騒がせな男だな、君は。だが……歓迎するよ、松田くん」
白鳥刑事も眼鏡の奥の目元を赤くしながら、差し出されたクッキーを一枚手に取って微笑んだ。
「で? 松田、あんたあの世の入り口で一体何をしてきたのよ。病室でも少し聞いたけど、みんなにも説明しなさいよね」
美和子が腕を組んでジト目で促すと、捜査一課の刑事たちが一斉に松田の周りに集まった。
松田は、新人の特権とばかりに机の上に腰掛け、サングラスを少し下げて不敵に目を細めた。
「あぁ? 聞きたいか? 驚くなよ。天国の入り口にはな、信じられないくらい長くて光る階段があったんだわ」
コメント
1件
うわ、松田さん、まさかあんな重症から数週間でポケットに手突っ込んで戻ってくるとは思わなかったよ…! 医者の言葉もガン無視で「ケツ蹴っ飛ばされた反動」って、笑ったけどちょっと泣けた。 クッキーのお土産、高木刑事が泣きながら抱きつくシーンがめっちゃ刺さった。 「生きてるだけで十分な土産」って、本当にそうだよね。 萩原さんのことちゃんと背負って帰ってきたんだな…って思ったら胸が熱くなったよ。 続き、絶対読みに行くね。