テラーノベル
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スタートー!
五月とは思えないほど冷たい雨が、米花町を包んでいた。
帝丹高校では終業のチャイムが鳴り、生徒たちが傘を開きながら帰路につく。
白石美月も、黒い傘を差して校門を出た。
鞄の中には、例のフィルムカメラ。
そして、SDカードはコナンたちが安全な場所で保管している。
「今日は寄り道しないで帰ろう……。」
そうつぶやいた、その時だった。
道路の向こうに、一台の黒いセダンがゆっくりと停まる。
運転席の男は帽子を深くかぶり、表情は見えない。
美月は胸の奥に小さな違和感を覚えた。
(また……あの車。)
⸻
毛利探偵事務所
「やっぱり今日だ。」
コナンは阿笠博士から届いたメッセージを見つめていた。
『黒いセダンが帝丹高校付近にいる。』
コナンはすぐに立ち上がる。
「蘭姉ちゃん!ちょっと博士のところへ行ってくる!」
「えっ、コナン君? 雨なのに?」
「すぐ戻る!」
ランドセルを背負ったまま、雨の中へ飛び出した。
⸻
帝丹高校前
美月はバス停へ向かって歩いていた。
ふと、ショーウィンドウに映る景色を見る。
黒いセダン。
一定の距離を保ったまま、ゆっくりとついてきている。
(気のせいじゃない……。)
足が自然と速くなる。
すると、後ろから車のドアが開く音がした。
「……!」
振り返る。
黒いレインコート姿の男が二人、無言で歩いてくる。
「すみません。」
男の一人が穏やかな口調で言った。
「少し、お話を。」
「どなたですか?」
「あなたがお持ちだった古いカメラについてです。」
その一言で、美月の表情が変わる。
(この人たち……。)
男はさらに一歩近づく。
「車までご同行願えますか。」
「お断りします。」
美月は静かに答え、そのまま走り出した。
「追え。」
男たちも一斉に走る。
⸻
雨の商店街
人混みを縫うように走る美月。
「誰か……!」
だが、男たちは迷いなく追ってくる。
その時。
「美月さん!」
聞き慣れた声が響いた。
「コナン君!」
コナンはスケートボードを抱えて走ってきた。
「こっち!」
美月の手を引き、細い路地へ飛び込む。
男たちも追いかける。
「逃がすな!」
⸻
路地裏
雨で濡れた石畳。
コナンはボール射出ベルトからサッカーボールを取り出す。
「ごめん!」
キック力増強シューズのスイッチを入れる。
ドンッ!!
ボールは近くのゴミ箱へ命中。
ゴミ箱が倒れ、大きな音を立てて転がる。
男たちは足を止める。
「くっ!」
その隙に二人は路地を抜けた。
⸻
カフェ・ポアロ前
「はぁ……はぁ……。」
息を切らす美月。
その時、ポアロのドアが開く。
「どうしました?」
エプロン姿の安室透だった。
コナンが短く答える。
「追われてる!」
安室はすぐに外を見る。
黒いセダン。
レインコート姿の男たち。
一瞬だけ、その目つきが鋭くなる。
(あの動き……。)
公安警察としての直感が働く。
「中へ。」
安室は二人を店内へ入れる。
そして店の裏口を開けた。
「こちらです。」
「ありがとう!」
コナンたちは裏口から脱出する。
その直後。
男たちがポアロへ入ってきた。
「高校生の女の子を見ませんでしたか。」
安室は笑顔のまま答える。
「いいえ。お客様なら何人か来られましたが。」
男たちは店内を見回す。
しかし、二人の姿はどこにもない。
「……行くぞ。」
男たちは立ち去った。
安室は窓越しに彼らを見送り、小さくつぶやく。
「やはり、組織か。」
⸻
阿笠博士の家
夜。
コナン、美月、灰原、阿笠博士、そして安室が集まっていた。
美月は温かいココアを両手で包み込みながら、静かに話し始める。
「昨日から、ずっと同じ車が私を見ていました。」
「今日の人たちは、カメラのことを知っていました。」
部屋が静まり返る。
灰原は低い声で言う。
「もう間違いない。」
「彼らは、あなたを狙っている。」
美月は少し俯いた。
「私のせいで、みんなまで危険な目に遭うなんて……。」
「違うよ。」
コナンがすぐに答える。
「悪いのは追ってきてる奴らだ。」
安室も穏やかにうなずく。
「君一人で抱え込む必要はありません。」
その言葉に、美月の表情が少し和らぐ。
⸻
一方、その頃
薄暗い地下駐車場。
黒い高級車の中。
ウォッカが報告する。
「兄貴、対象は江戸川コナンと接触しています。」
ジンは煙草の煙をゆっくりと吐き出した。
「小僧……。」
「また邪魔をするか。」
すると後部座席からベルモットが口を開く。
「彼を甘く見ない方がいいわ。」
「それより、あの女の子。」
「白石美月……。」
ベルモットは雨に濡れた写真を指先でなぞる。
「あの子、本当に偶然なのかしら。」
ジンは冷たく笑った。
「偶然だろうが、違おうが関係ない。」
「証拠を持つ者は消す。」
その言葉とともに、車はゆっくりと闇へ走り出す。
⸻
その夜。
阿笠博士の家。
眠れない美月は窓を開け、雨上がりの夜空を見上げていた。
雲の切れ間から、一つだけ星が輝いている。
その時、背後からコナンが声をかけた。
「眠れないの?」
「うん……。」
「怖くない?」
少しの沈黙。
美月は星空を見つめたまま、小さく笑う。
「怖いよ。」
「でも……」
「私、一人じゃないもんね。」
コナンも夜空を見上げる。
「もちろん。」
「絶対に守る。」
その約束を交わすように、一筋の流れ星が夜空を横切った。
二人はまだ知らない。
その星が、十五年前の事件の真実へと導く「最初の道しるべ」になることを――。
⸻
――第4章 終――
次回予告
第5章「交差する正義」
公安・FBI・黒ずくめの組織、それぞれの思惑がついに交錯する。安室透は公安の極秘資料から15年前の事件を追い始め、赤井秀一も独自に動き出す。一方、美月は古い写真に写る星空から、事件の鍵となる”ある星座”の違和感に気づく――。物語は大きく加速していく。
コメント
1件
よかった…!雨の追跡劇、めっちゃ緊張感あったね。傘もささずに追いかけてくる男たちとか、ポアロの安室さんがかっこよく登場するところとか、映像が浮かぶような描写だった。美月が「一人じゃない」って言えたのがすごく印象的で、こっちもほっとしたよ。次は星座に違和感かあ…続きが気になる!
유리
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坂田銀にゃん
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