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チューブ入りのテンペラ絵の具で初めてキャンバスに色を付け始めた夜、少女はマリアカルラと名乗った。オペラのプリマドンナの真似をして、歌の上手な子だったと言った。
次に用事で街へ出た時、アンドレアの足もとに手で二抱えほどの大きなゴム製のボールが転がって来た。アンドレアはそれを拾い、それで遊んでいた少年たちの方へ投げてやった。
ボールを受け取った少年たちは目を合わせ、不思議そうに言い合った。
「アンドレアがボールを拾ってくれたよ」
「アンドレアがボールを投げ返してくれたよ」
「アンドレアが前と違うよ」
背景の下塗りを終え、少女の全身の輪郭を絵具で彩り始めた夜は、少女はフランチェスカと名乗った。本を読むのが大好きな頭のいい子だったと言った。手袋なしでも手がかじかまない程、夜の空気は暖かくなっていた。
次に街へ出た時、少し離れた場所からいつもの少年たちがおそるおそるアンドレアに声をかけた。
「アンドレア、今度サッカーを一緒にやらないか?」