テラーノベル
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深夜のスタジオは、機材の微かな電子音だけが響く静寂に包まれていた。
「……あー、くそ。リリックが詰まった」
ゆうまはノートを放り出し、ソファーに深く体を沈めた。自分の生い立ち、リアルな感情、吐き出したい言葉は山ほどあるのに、うまくピースがハマらない。髪をかきむしったその時、ガチャリとドアが開いた。
「お疲れ様でーす。って何その死にそうな顔」
入ってきたのは、だいきだった。SNSで見せる派手なサングラスは外され、素顔の瞳がまっすぐにゆうまを捉える。普段のふざけたオーラは鳴りを潜め、どこか落ち着いた大人の雰囲気をまとっていた。
「だいき….。お前、まだ残ってたのかよ。」
「新曲のデータの確認をしにきた。それよりゆうま、顔色ヤバいよ?ちゃんと飯食ってる?」
だいきは、手元にあった缶コーヒーをゆうまの頬にピトッと押し当てた。冷たさに肩を跳ね上げるゆうまを見て、だいきはいたずらっぽす笑う。
「冷った….!何すんだよ!」
「あはは、やっと生きた人間の顔になった。ほら、隣失礼しまーす。」
狭いソファーに、だいきが当然のように滑り込んでくる。物理的な距離が近くなり、ゆうまの心臓がドクンと跳ねた。普段のバトルやステージではお互い一歩も引かないライバルだが、こうしてプライベートで2人きりになると、どうにも調子が狂う。
「…..お前はいいよな。武道館も成功させて、メジャーにいって。俺なんか、まだ暗闇の中でもがいているみたいだ。」
ぽつりと溢した本音。いつもなら「何弱気になってんの!」と笑い飛ばされるかと思ったが、だいきは静かにゆうまの横顔を見つめていた。
「あのさ、ゆうま…..」
だいきが手を伸ばし、ゆうまの顎をそっと上向かせる。至近距離で視線が交差した。
「俺は、お前のそういう泥臭くて、必死で、今にも壊れそうなラップに惹かれたんだよ。…..ラップだけじゃなくて、お前自身にもね」
「え…?」
驚きに目を見開くゆうまの唇に、柔らかいものが触れた。ほんの数秒の、静かな、だけど暑いキス。頭が真っ白になるゆうまを置いて、だいきは少し顔を離すと、耳まで赤くしながらフッと微笑んだ。
「武道館に立った俺が言うんだから間違いない。お前の言葉には人を動かす力がある。だからさ….そんなに一人で抱え込まないでよ。俺じゃ、頼りない?」
「バカ….頼りないわけねぇだろ。」
ゆうまはノートを完全に床へ落とすと、今度は自分からだいきの首に腕を回し、その唇を塞いだ。スタジオの冷たい空気の中で、2人の体温だけがじわりと溶け合っていく。
「これ…..リリックに書いたら怒るか?」
「当たり前でしょ!2人だけの秘密!」
照れ隠しに笑い合う2人の夜は、まだ始まったばかりだった。
コメント
6件
最高。死ぬ。良すぎるわ
めっっっちゃ上手いんだが!?尊すぎるし...まじ最高‼️
わああ読み終わった……!😭💕✨ だいきが缶コーヒー押し当ててゆうまを生き返らせるところ、めっちゃ好き~~!あの距離感、喧嘩する時と違う素の空気、いいねぇ……。そして「ラップだけじゃなくてお前自身にも惹かれた」はマジで反則級のキュンだよ!!💘🎤 2人だけの秘密って照れつつも溶け合う体温、この夜の始まり感がたまらん…次が待ち遠しいよおお😭🌟