テラーノベル
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学園の授業終わり、今日もイソトマとアルエは楽しくオタ活中だ。
絵を描きながら羽ペンを眺めて、やっぱりイソトマは思った。
「鉛筆が欲しい」
気軽に書いたり消したりしたい。だから、消しゴムも欲しい。
「鉛筆?」
隣でアルエの小説を読んでいたディルクが首を傾げた。
「黒炭に紙や木を巻いてある筆記用具ですよね。アスランズでは一般的ではないみたいで、あまり見掛けませんね」
アルエの言う通り、ほとんど見かけない。店にあっても数が少ない。
「そうなんだよねぇ。鉛筆と消しゴムがあれば、絵の精度がもっと上がるのに」
本当はデジタルで書きたいが、魔法でもどうにもならない。
「今でも充分、巧いだろ。前より腕が上がっている」
ディルクが普通に褒めてくれた。ちょっと恥ずかしいが、嬉しい。
(ディルクって、お世辞とかいうタイプじゃないから、褒めてくれたら本音なんだよね。かなり嬉しい)
もじもじしながら、お礼を言った。
「ありがと」
「事実だからな」
ダメ押しみたいに褒められた。
「それより、アフタヌーンティの時間、ノアル様と何を話していたんだ?」
「あ、その話ね」
ノアルとの不穏なお茶会を終えてから自分の部屋に戻った。
案の定、ディルクが待機していたが、授業が迫っていたのでろくに話ができなかった。
「それがさ……」
口を開いてから、イソトマは周囲を見回した。
「アルエ、今日も簡易結界、張ってるよね?」
「張っていますよ。ご希望なら簡易じゃない結界張ります?」
「強すぎるのは、ダメ。屋敷の護衛団に気付かれちゃう」
そろそろと身を寄せる。
イソトマの動きに合わせて、アルエとディルクも身を寄せた。
「実は、ノアルにさ……」
イソトマはノアルとの会話を搔い摘んで二人に話して聞かせた。
「第一候補がルシアン王子で、第二候補がノアル王子って。イソトマ様、強いですね」
アルエがよくわからない褒め方をした。もはや、褒めているのかもわからない。
「強いのは王室だよ。そんなにアルシュタイン家が欲しいのかな」
「アルシュタイン家は貴族の中でも資産家、投資家ですからね。そりゃ欲しいと思いますよ。しかも、イソトマ様は魔種持ちで希少ですから」
「なんだって、こんな体に生まれてきたのだか」
そんな自分に、がっかりする。
隣から何やら不穏な気が流れてきた。ずっと黙っているディルクが、俯いている。
「え? ディルク、どうしたの? お腹痛いの?」
何というか、何かに耐えているような気配だ。
「イソトマは……」
「ん?」
ディルクに耳を傾ける。
「ルシアン様やノアル様と、結婚したいのか?」
ディルクの目が歪んだ。前にもこういう目を見たことがある。
とても辛そうな目だ。
(ディルクにこういう顔をさせるのは、嫌だな)
イソトマは首を振った。
「ルシアンもノアルも、僕にとっては幼馴染のお兄ちゃんだよ。だから、急に初恋って言われても困るよね」
「困るのか」
ディルクが考えるような顔をした。
「まぁ、初恋って言っても昔の話だし。今がどうこうって話ではないから」
「俺もだ」
「別に気にするほどでは……は?」
ディルクの言葉を流しそうになった。
「五歳のイソトマに求婚されて、キュンとなった」
「キュウコン? キュン?」
ディルクの言葉が、すぐには理解できなかった。
「昔の話だ。気にしなくていい」
ディルクが、すっくと立ちあがった。
「今のイソトマが、少しくらい困ってくれたら、それでいい」
イソトマは、ぼんやりとディルクを見上げた。
「それは、どうゆう」
「外の警備をしてくる。しばらく戻らないから、進めていてくれ」
そう言い捨てて、ディルクが部屋を出て行った。
「少しくらい、困ってあげてください、イソトマ様」
アルエが頷きながらコーヒーを啜る。
「え? え? アルエは、何かわかったの?」
「僕はディルクさんの味方ですからね。それしか教えてあげません」
「えぇ……」
確かに、困った。
部屋を出て行ったディルクの耳が赤かったのを見たから。
自分の胸の鼓動も早くて、頬も熱いから。
(五歳の僕は、ディルクになんて言ったっけ)
ぼんやりとしか思い出せないプロポーズは、確かに胸の中にあったから。
自分の気持ちなんかわからないのに、鼓動だけは早くなっていった。
コメント
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おお、第14話読んだわ!イソトマの「鉛筆が欲しい」って願いから始まった日常シーン、そこから一気にディルクの告白に持っていく流れが秀逸すぎた🔥 「五歳のイソトマに求婚されて、キュンとなった」ってディルクの言葉、マジでグッと来たね。幼い頃のプロポーズをずっと覚えてたって、それだけでディルクの深い愛情が滲んでる。しかも部屋を出て行くときに耳が赤かった描写…ああいう細かい仕草で感情を表現するのが上手いわ。 イソトマが「困った」って自分の鼓動の早さに気づくところも、これからどうなるんだろうってワクワクした。続きが気になるから、次話も楽しみにしてるよ!