テラーノベル
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「……相手は? いつ知り合ったんだ? もう指輪って早くないか?」
「大輝には関係ないでしょ?」
「俺はおまえを心配して」
「なんで?」
なんで私が大輝に心配されないといけないの?
私を捨てたのは大輝なのに。
「それで何の用? 仕事の話って?」
沙紀はお味噌汁を飲みながら、仕事の話があるなら早く言ってと大輝に告げた。
「あ、……っと、特別共有フォルダにさ、見れないフォルダがあって」
それが見たいという大輝に沙紀は肩をすくめた。
「見れないんでしょう? 権限がないということは見ちゃダメってことじゃないの?」
「沙紀は、全部見れるんだよね?」
「開いたことがないからわからない」
営業部と開発部の連携のためのフォルダでしょう? と興味がない雰囲気を出しながら沙紀はかぼちゃの煮物を口に入れた。
「あとでさ、見れるか試して誰のファイルが入ってるか教えてくれないか? その人に権限ほしいって頼みたいから」
じゃ、頼んだよと返事を聞かずに立ち去る大輝。
「なぁんで見たいのかね〜?」
「営業って開発部の商品全部見てるの?」
不思議そうな顔をする絵里と菜々美に、沙紀は「変だよね」と言いながらお茶を飲んだ。
ランチを終えた沙紀は彰と冬木に大輝が来たことを話した。
「何もされなかったか?」
「はい。隣に座って話しただけです」
同期の子も一緒だったので話してすぐどこかに行ってしまったと言った沙紀は、婚約指輪を思い出し真っ赤になった。
「それよりコレの方が……」
質問攻めで困ったと沙紀は報告する。
彰は嬉しそうにニヤッと笑うだけで外していいとは言わなかった。
14時からは営業部と会議。
新規営業先の開拓状況、受注状況、客先からの要望など、綺麗にまとめられた資料をもとに説明が続く。
特に大きな問題もなく、会議は普通に終了した。
「ジョージ様とのオンラインミーティングですが、20分ほど遅れると先ほど……」
扉を開けた沙紀の横を彰と冬木が会話しながら通過する。
扉を閉めた沙紀は、エレベーターに向かう彰を追いかけている最中に名前を呼ばれて振り返った。
「沙紀、確認ってしてくれたか?」
「……まだ見てないけど?」
「ちょっと急いでるんだ。今すぐこっちで見てくれないか?」
右手首を掴んだ大輝が強引に沙紀を引っ張る。
「えっ? 離して!」
「こっちも約束があるんだ、開いてくれればあとはいいからさ」
「そんなのダメだよ」
振りほどきたいのに振りほどけない。
抵抗してもどんどん引き摺られていく。
必死だった沙紀は、後ろから近づく人物には全く気づいていなかった。
ふわっとコロンの香りがした瞬間、後ろから優しく包み込まれる。
「……なんの真似だ?」
「あっ! さ、西園寺CEO!」
彰に睨まれた大輝は慌てて沙紀の手首を離す。
うっすらと赤くなった沙紀の手首を彰はそっと撫でた。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
でもこの態勢は何?
後ろから腰をがっちり抱え込まれ、右手は握られ、密着が凄いんですけど?
「何があった?」
「特別共有フォルダの中に見ることができないフォルダがあるそうで、開いてほしいと……」
沙紀が正直に言うと、大輝は気まずそうな顔でブンブンと手を左右に振り「もう大丈夫です」と逃げていく。
「……悪いな、気づくのが遅れて」
赤くなった手首をゆっくりと持ち上げると、彰は沙紀の手首の内側にキスをする。
「な、な、なんで」
「アキ、ここは日本ですよ」
そんな習慣ありませんと窘める冬木に彰はフッと笑った。
#独占欲
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