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10話目突破!
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──では三人が少し歩くと、ヘッドライトの灯りが山肌に大きく空いた空洞を照らし出した。
直央「あ、なんかここの穴だったら丁度休憩できそう。」
コージー「風よけにちょうどいい場所があるじゃないか。特等席のトイレだ。」
凜々蝶「まぁ、そこでトイレしますか。」
空洞の中は鍾乳洞のような様相だ。内部の壁はうねうねとヒダ状になっており、鍾乳石が随所に見られる。
比較的暖かく、そしてじっとりとした湿気を感じる。
コージー「何だこの空洞。もっと奥まで続いてるぞ。おい、せっかくだし行ってみよう。」
コージー「世紀の大発見があるかもしれないぞ。」
直央「ちょっと暖かいし、次ビバークする時にいいかもな。」
凜々蝶「折角ですし進んでみますか。」
洞窟の先に、出口がある。出口は谷になっていた。行き止まりだ。」
コージー「おい、見てみろ。なんだありゃ?」
コージーのヘッドライトが谷底を照らし出す。
そこには、先日夢に見たばかりの光景が広がっていた。
虹の谷。第一次狂気山脈登山隊の遺体たちだ。
8000m級の山を登ったことある人間なら知っているだろう。
高山での死体は腐らず、屍蝋となりミイラ化することを。
しかし、なんだあの死体は。
体の部位がバラバラで、皮膚や肉はドロドロに熔け、白骨がむき出しになっているではないか。
こんな山で、どんな死に方をしたら、あんなおぞましい死体と成り果てるのか。
直央「あれ、なんだ死体か。」
凜々蝶「な、なんだって死体ですよぉ、!?!?」
そして凜々蝶は、友人がその死体の山には見当たらないことに気づく。
凜々蝶「い、いない…いな…い…」
直央「ど、どうした凜々蝶くん、…!」
凜々蝶「あの死体の中には、僕の友人は…いませんでした、…」
直央「言い方悪いかもだけど…こんなとこに居なくて良かったじゃん。逆に。」
凜々蝶「そ、そうですね…」
凜々蝶「あ、写真撮っておこう…」(状況を伝えるため)
直央「そういえば、コージーは?」
コージーは震えてその場で蹲っている。
直央「コージー、立てる?」
コージー「ぬ…」
直央「ぬ?」
コージー「ぬがあああああ…!!!!」
コージーは突如奇声をあげ、逃げるように走り去る。
直央「コージー…!?」
直央はコージーを追いかける。
直央「ちょ、ちょっとコージー、何やってんだ…!」
追いついた直央は、蹴りを入れようと準備する。
直央(絶対力加減出来ないけど……ま、死ななきゃ安いか…!)
直央「コージー、止まれぇ…!!」
コージーを思いっきり蹴る。
凜々蝶(止まれぇっていうような加減じゃない…)
コージーは気絶しませんでしたが、その場で転んでガクガクと震えています。
直央「凜々蝶くん、ちょっとコージーの様子が明らかにおかしいから、一回キャンプまで連れて戻ろう。」
凜々蝶「そうですけど、今なんかすごい飛び蹴りしてませんでした?」
直央「あのまま走らせて滑落したりしたら、普通に死ぬ可能性もあったからな。」
凜々蝶「なんかもうちょい組み付くとか…」
直央「体格的に無理…!コージーデカい…!」
直央「…普通に命があっただけ感謝して欲しい。」
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3人ははキャンプへ戻った。
直央「K2、報告がある。」
K2「どうした?」
直央「今ちょっと凜々蝶くんとコージーと用を足す場所を探しに行ってたんだけど…」
凜々蝶「それでこれを見つけて…」
さっき撮った写真を見せる。
K2「な、なんだこれは!?」
黒「どうしたんですかぁー?」
直央「あ、黒さん」
直央「〜〜〜でこの写真が…」
黒「ひえええっ!?!?」
K2「そ、それとコージーはどうしたんだ?」
直央「この写真の死体を見てからずっとその調子なんだよ。」
コージー「お、俺は…、もう、登りたくない…!」
コージー「か、帰らせてくれ…、!」
直央「あ、見直してたけどメンタルはまだまだだったみたいだな。」
凜々蝶(この人山より厳しい…)
直央「さっき急に走り出したの止めるために、背中蹴って少し傷負ってるから応急処置だけしてあげて。」
梓を起こして応急手当を頼んだ。
梓「身体は戻ったみたいだけど、心が弱ってるみたいね…」
K2「うむ、どうしたものか…」
直央「この状況の人をそのまま連れていく訳にはいかないだろうしな。」
直央「全員で戻るか、それとも数人でコージーを連れておりるかの決断が必要かも。」
直央「普通にこのままここに放置って訳にもいかないだろうし。」
K2「そうだな…。」
K2「コージー、大丈夫か?」
コージー「お、俺は、もう…登れない、…」
梓「うーん、やっぱりこのまま登山を続けるのは難しそうね…。」
K2「となると誰がコージーを連れていくかだが…」
凜々蝶「…」(チラッ)
梓「…」(チラッ)
直央「…」(チラッ)
黒「なんで全員俺の方を見るんですかぁ!?」
梓「でもコージーにはここで待機してもらって、帰りに一緒に合流するってのもありじゃない?」
梓「ここまで来た以上、行ける人は行った方がいいと思う。」
コージー「あ、ああ、俺はそれでいい。」
コージーは登りたくないという意思は強いが、ここに待機する分には大丈夫そうだ。
凜々蝶「じゃあコージーさんには悪いですけど、ここで少しの間待っていてもらいますか。」
直央「さっきみたいにいきなり走り出さないか心配だけど。」
そうしてコージーにはここで待機してもらって進むことにした。