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第98話「セレナの祈り、帰るべき場所」
早朝の神殿。まだ誰も起きていない静寂の中、セレナは一人、外の小さな礼拝堂にいた。
祈りを捧げるその背は、どこか寂しげで、けれど力強くもあった。
セレナ「……私は、間違っていなかったよね。兄さん」
天を仰ぎ、小さく微笑む。
セレナ「ずっと怖かった。自分には何もできないんじゃないかって……」
――かつての自分。兄・リオンの背中ばかり追いかけていた少女。
けれど今は――
セレナ「私はもう、誰かの後ろに隠れて生きたりしない。これからは、私が“守る”番」
アポロンの加護を受け、セレナの光の力はすでに神域に達していた。
だが、それは単なる強さではない。
“希望を照らす光”としての覚悟――
そこへ、リオンが現れる。
リオン「……もう起きてたのか」
セレナ「うん。ちょっとだけ、祈ってたの。私たちが帰る場所が、ちゃんと守られるようにって」
リオンは少し照れたように、肩をすくめる。
リオン「……強くなったな、お前」
セレナ「当然でしょ。お兄ちゃんに、負けてられないもん」
ふたりは並んで空を見上げた。
レファリエ――かつてセレナが生まれ、逃げるように飛び出してきた故郷。
でも今は違う。
セレナ「私ね、帰りたいと思えるようになったんだ。あの星に」
リオン「……ああ。帰ろう。俺たちの、新しい物語を始めに」
その時、朝の光が二人の顔を照らす。
セレナの瞳に浮かんだのは、祈りでも涙でもなく――確かな“希望”だった。