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そうだ、あの廃ビルの屋上だった。どうやら、あのまま眠ってしまったらしい。それにしても妙な夢を見たものだ。こんなところでうたた寝するとは、よっぽど疲れていたんだろうか。身体を起こしてみるものの、特に変わった様子はない。強いて言えば、空が白んできたことくらいか。しかし、それ以外はいつも通りだ。おかしなところは何もない。少なくとも見た目だけは……。
「……」
目を凝らすと、すぐそばに例の石板が落ちていることに気付いた。いつの間にか、足元に落ちてきたらしい。よく見ると石版の中心あたりに大きな亀裂が入っていた。だが、それだけだ。他に異常は見られない。これといって変化もないようだ。一応、念のため確認しておこうと思い、僕はポケットからナイフを取り出した。そして、石版の端を切り落としてみたのだが……
「え?」
切り落としたはずの部分も、ただの石材に戻っていた。石版は元の状態に戻ろうとしていたのだ。信じられないことだが、僕の目の前で起こっていることは紛れもなく現実である。
「……」
しばらく考えてみて分かったことがある。もしかすると……あれは本当にあった出来事なのではないか?だとしたら、僕が見たものは幻などではなく、現実に起きたことかもしれないのだ。そうだとしたら僕はとんでもない勘違いをしていたことになるのだが……しかしそうと分かっていたなら、もっと別の対応ができたはずだし、それにあの時だってあんなに慌てる必要もなかったんじゃないだろうか。そうすれば、きっとこんなことにはならなかったはずなのだけど。後悔先に立たずとはまさにこのことである。
あの時のことを思い返すと今でも恥ずかしくなるくらいだけど、それはさすがに大げさかな。とにかく、こうして振り返ってみるといろいろと思うところはあるけれど、結局はそういうことだったということなんだろうね。僕の話を信じてもらえるか分からないけど、とりあえず最後まで聞いてほしい。
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