テラーノベル
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私は彼の首に素早く腕を回すと、逃げられないよう力強く引き寄せた。
「――っ!?」
カイル殿下の目が驚愕で見開かれる。私は彼の整った唇を、逃がさないとばかりに正面から塞いだ。ただ触れるだけではない。私は優しく、けれど貪欲に、彼の上唇と下唇を交互に食んだ。
大聖堂がどよめきに包まれた。けれど、そんなものは関係ない。硬直している彼の唇の隙間に、私は容赦なく舌を滑り込ませた。
前世で、何度も経験した行為だ。歯列をなぞり、逃げようとする彼の舌を絡め取るように深く、濃厚に。クチュ、と唾液が混ざり合う淫らな水音が、静まり返った聖堂に生々しく響いた。
「んっ……ふ、ぁ……!?」
カイル殿下の喉から、甘く情けない声が漏れた。抵抗しようとしていた彼の手が、私の腰にすがりつくように回される。いや、腰にしがみつかなければ立っていられないのだ。彼の体温が一気に沸騰するのが分かった。耳まで真っ赤に染まり、呼吸が乱れ始めている。
(あらあら、もしかして……本当に?)
そのあまりにも初々しい反応に、私は確信した。この男、氷の皇太子なんて呼ばれているけれど――女性経験皆無の、ウブな童貞だ!
十秒、二十秒。永遠にも感じるディープキスの後、私はゆっくりと唇を離した。透明な糸が、二人の間で艶かしく引いて切れる。
「は、ぁ……っ、おま、え……」
解放されたカイル殿下は、肩で息をしながらよろめいた。いつもの冷静沈着な仮面は見る影もない。顔を茹で上がった蛸のように真っ赤にし、わなわなと震えている。私はその乱れた襟元を指先で直してあげながら、彼の耳元で、誰にも聞こえないように甘く囁いた。
「世継ぎが必要なのでしょう? 殿下」
「ッ……!」
「そんな可愛い反応で、私と初夜をお過ごしになられるのですか? ……夜が楽しみですこと♡」
にっこりと微笑んで見せると、カイル殿下は言葉を失い、その場にへたり込みそうになるのを堪えていた。ざまぁみろ。私の華麗なる転生生活は、最高の復讐劇(キス)で幕を開けたのだ。
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