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夜の帳が下りた王城の寝室。 天蓋付きの巨大なベッドに腰掛け、私は獲物が来るのを待っていた。シャンデリアの明かりが落とされ、間接照明の薄暗い光だけが部屋を照らしている。 やがて、重厚な扉がノックもなしに開かれた。
「…………」
入ってきたのは、シルクのガウンに着替えたカイル殿下だ。彼は部屋に入るなり、私から一番遠いソファの近くで立ち止まった。昼間の結婚式での「失態」――私が奪ったディープキスを相当引きずっているのか、その顔はひどく強張っている。
「……言っておくが」
彼は私と目を合わせようとせず、硬い声で言い放った。
「これは義務だ。公爵家への義理と、世継ぎを作るための作業に過ぎない。勘違いして、俺に馴れ馴れしくするなよ」
震える声で威嚇しても、説得力なんて欠片もない。私は艶然と微笑み、自分の隣――ベッドの空いているスペースをポンポンと手で叩いた。
「分かっておりますわ。さあ殿下、夜は短いですのよ? 早くなさいませ」
「っ、俺に命令するな!」
不機嫌そうに肩を怒らせながらも、彼は渋々とベッドへ近づいてくる。
隣に座った彼は意を決したようにガウンの紐に手をかけたが、指先が微かに震えていて結び目が解けない。
(……ふふっ可愛いとこもあるのね)
前世の夫とは大違いだ。情緒のかけらもなく、自分の気分だけで覆い被さってきたあの男とは。目の前の皇太子は、私を「悪女」として警戒しつつも、初めての夜に怯え、緊張している。
「義務」だの「世継ぎ」だのと御託を並べ続ける彼の肩を、私は不意にドンと突き飛ばした。
「わっ……!?」
不意をつかれた殿下は、無防備に仰向けに倒れ込む。私は間髪入れず、彼の腰の上に跨がった。
「な、なにを……どけ、ソフィア!」
「騒がないでくださいませ。……殿下が怖気づいていらっしゃるようなので、私がリードして差し上げようと思いまして」
彼の手を遮り、私がその紐に触れる。スルスルと結び目を解き、ガウンを左右に押し広げた。露わになったのは、日々の剣術で鍛え上げられたしなやかな肉体。
「殿下が遅いからですわ。……それとも、本当は怖いのですか?」
「こ、怖くなどない! 俺は皇太子だぞ!」