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真っ白な虚無の世界に、二人の熱い吐息だけがいつまでも重なり合っていました。「……しのぶちゃん、まだ震えてるね。そんなに僕の体温が心地いいのかい?」
童磨は、力なく自分の胸に顔を埋めているしのぶの背中を、大きな掌でゆっくりとなぞります。指先が触れるたび、彼女の肌はビクンと小さく跳ね、熱を帯びた吐息が漏れ出しました。
しのぶは、乱れた黒髪の間から潤んだ瞳で彼を見上げ、ふわりと力なく笑いました。その表情には、鬼狩りとしての険しさは微塵も残っていません。
「……うるさい人ですね。あなたが……あまりに執拗に愛してくるから、腰が抜けてしまっただけですよ」
「あはは、それは光栄だな。君を愛せば愛するほど、僕の中にあった空っぽな穴が、君の熱で満たされていくのがわかるんだ」
童磨は愛おしさが抑えきれないといった様子で、しのぶの細い指先を一本ずつ口に含み、慈しむように甘噛みします。
夜が明けるという概念のない世界でしたが、二人の間には確かに「朝」を迎えるような、穏やかで満たされた静寂が訪れていました。しのぶは、彼の手を引き寄せると、自分の頬をすり寄せます。
「ねえ、童磨。もし、すべてがやり直せるとしたら……なんて、そんな無意味なことは言いません。でも、今のこの瞬間だけは、私があなたのものだと認めてあげます」
「嬉しいなあ。じゃあ、これからもずっと、何万年でもこうして愛し合おうか。君が嫌だと言っても、僕はもう君を離さないよ」
童磨の腕に力がこもり、二人は再び、吸い寄せられるように唇を重ねました。
一度は命を奪い合った二人が、今度は愛を分け合うことで、互いの魂を深く繋ぎ止めていく。その熱はどこまでも甘く、二人は光も闇も届かないその場所で、寄り添ったまま永遠のまどろみへと沈んでいきました。
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