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# 第13話:月下に輝く翼
熱砂の要塞「メギド」から放たれる無数の対空砲火が、夜の帳が下り始めた砂漠の空を網目状に焼き尽くしていた。
プロト・ウイングエックスは、ルカス・ギルモア率いる精鋭部隊『ブラック・テイル』の猛攻に晒されていた。再生された6枚の飛行ユニットを駆使し、ゼロ・ドラートは必死の回避を続けるが、ルカスの駆るジェニス・カスタム『ノクターン』の組織的な連携が、徐々にゼロの逃げ場を奪っていく。
「くっ、あいつら……さっきのザコとは連携の次元が違いすぎるぜ!」
ガキンッ! と鋭い金属音が響く。ノクターンの大型ヒート・アックスが、ウイングエックスの右腕装甲を掠め、火花が飛び散った。致命傷ではないが、蓄積されるダメージが機体の挙動を確実に鈍らせていく。
「……ゼロ、上! 避けて!」
ミラの叫びと同時に、要塞の頂上部から極太のメガ粒子砲が放たれた。空気を震わせる衝撃波。ゼロは寸前で機体を横転させて直撃を免れたが、爆風に煽られ、ウイングエックスの姿勢が大きく崩れる。
「あぁぁっ! このデカブツ、重たくなってきやがった……!」
モニターには幾重ものアラートが重なる。ゼロ・システムが提示する「生存ルート」は、刻一刻と細くなっていた。敵機に包囲され、要塞の砲台が再びチャージを開始する。砂漠の地平線に追い詰められた少年と少女に、死神の鎌が届こうとしていた。
その時だった。
厚い雲の切れ間から、冷たく、しかし透き通るような白銀の光が差し込んだ。
満月だ。
戦場を照らす月光がミラに降り注いだ瞬間、彼女の瞳が神秘的な蒼い輝きを帯びる。彼女は無意識のうちにコンソールへと手を伸ばし、隠されたコマンドを起動させた。
「……開いて。あなたの、本当の形を」
ミラの祈りに応えるように、プロト・ウイングエックスの深部で、封印されていたサテライト・システムが目を覚ます。
『――SATELLITE SYSTEM: LINK-UP CONFIRMED.』
コクピットに響く無機質な電子音。
突如、ウイングエックスの背部ユニットが、物理的な限界を超えた変形を開始した。
「な、なんだ!? また翼が……増えてやがるのか!?」
ゼロが驚愕の声を上げる。背後に装備されたカッター状の飛行ユニットが左右に割れ、さらにその内部から隠されていたバインダーが展開していく。
1枚、2枚……そして、**最初にこの機体で見たあの神々しい姿と同じく、左右計10枚の受光バインダー**が、孔雀の羽のように大きく美しく広がった。
バインダーの表面は、月の光を吸い込むたびに、神秘的な**青白い光**を放ち始める。それは、この世のものとは思えないほど美しく、そして破壊的なエネルギーを予感させる輝きだった。
「これか……ジジイが言ってた『真の受光形態』ってのは……!」
高揚感に震えるゼロの腕に、ミラの冷たく柔らかな手が重なった。
二人の意識が完全にシンクロし、ウイングエックスの各部ダクトから、過剰なエネルギーを排熱する青い燐光が噴き出す。
『――MICRO WAVE TRANSMISSION: STARTED.』
月の表面から放たれた目に見えぬマイクロウェーブの奔流が、10枚のバインダーへと吸い込まれていく。機体全体が震動し、大気がバチバチと放電を始めた。
ゼロは、背部に斜め下向きで固定されていた二門の**ブラック・キャノン**のロックを解除した。
ガシャンッ! と重厚な音が響き、巨大な砲身が肩越しに前方へと展開される。
エネルギーが充填されていく銃口から、バチバチと青白い電弧が走り、要塞の全サーチライトが霞むほどの輝きが砂漠を照らし出した。
「ルカス……そして、あの要塞。……まとめて全部、消し飛ばしてやるぜ!!」
トリガーに指をかけるゼロ。
要塞側も、最大出力の超高火力メガ粒子砲のチャージを完了させ、その巨大な砲口をウイングエックスへと固定した。
月の光と、地上の要塞が放つ殺意。
極大のエネルギー同士が衝突する、その一瞬前――世界から音が消えた。
**次回予告**
月から降り注ぐ光。地の底から這い出る怒り。
そこに水を差すように現れた一気のガンダム、音速を超えるこの機体は果たして敵か見方か…
次回、『マゼンタの閃光』
**「なんだお前?!せっかくのチャンスをよくも!!」**
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