【桜視点】
…最悪だ。
なんで、なんでなんで、
オレがΩになってやがる…!?!?
「っざけんな…!!」
「まあまあ、桜くん落ち着いて?」
「うるせぇα!!」
「にしても…レアケースですよね、βからΩになるなんて…」
「なんでだよ…」
オレらは定期的に行われる第二の性?とかなんとかの検査を受けた。その結果、今までβ…俗に言う『普通』だったのがたった今壊れた。
オレはΩになった。社会的地位が最も低い。そして
__1番『普通』から程遠い存在。
人生なんて上手くいくモンじゃないのは疾っくの疾うに知っていたが、流石にここまでだと思ってなかった。心底絶望した。
「病院…行きたくねぇな…」
つい、そんな言葉が口から零れた。
病院に行ってヒートが来た時のために抑制剤を貰いに行かないといけない。
それがまたオレの傷口を抉った。
オレは病院が嫌いだ。過去に救急車で運ばれたことは何度もあった。その度に医者からも拒絶された。できる限り最低限の処置だけしてオレを病室から放り出した。あんなヤツら、大嫌いだ。
「桜ちゃん、病院は行かなきゃだよ〜」
「ぇ…聞こえてたのか…!?」
「うん、バッチリね〜」
「はぁ…」
いっそこのまま消えたい…
時は流れ放課後。
オレは梅宮に呼び出しを食らった。
屋上のドアを開ける。いつも通りの屋上。焚石と梅宮が戦った場所。
「梅宮〜」
「おぉ!桜!待ってたぞ!!」
その場には梅宮と柊、椿野が居た。
「桜。ここ座れ。」
そういう柊の隣にオレは座った。
「で…本題なんだが…」
隣で柊が胃薬を噛み砕いて飲み込んだ。
あぁ…そういうことか…。
「桜の…第二の性についてなんだが…」
第二の性。この言葉を聞くだけで吐き気が止まらない。
「ぉ…おう…」
「桜は元々…β、だったんだよな?」
「そ、うだ。オレは、β、だった。」
「でも、今回の検査の結果…Ωだったんだよな…?」
「そう、だな」
ボロッ…
「ぉ、おい!!なんで梅宮が泣くんだよ、!」
「梅、落ち着いて…?」
「すっ、すまん…暫く…止まりそうにねぇ…」
泣きてぇのはオレだ。梅宮。そう思ったけどこんな考え方は良くない。オレは頭を横に振った。
「…梅の代わりに説明するわ。」
「その、梅は桜の事が心配なの」
「……は?」
心配?なんで?
「桜の過去のこと、全部は知らない。」
「でも、今まで関わってきた範囲でちょっとわかったわ。桜の体験してきた辛さは尋常じゃない」
「じ、じんじょ、う?」
聞いた事のない言葉に思わずオレの頭にハテナが浮かぶ
それに気づいたのか柊が「『普通』じゃない…って事だ。」
俺の中の何かがピキッ、と亀裂が入った音がした。
普通…。そうか…俺は生まれた時から……
「普通になれないんだな…。」
「って、ごめん…、その、今のは聞かなかったことにしてくれ…」
「ちゃ、ちゃんと病院に行って抑制剤も、貰う、ヒート来たら抑制剤飲むし、その、あんまり、心配しないでくれ、な?」
「”な?”じゃねぇよ!」
「うぉあ!?!?」
「かッ、梶!?」
屋上のドアが勢いよく開けられた。そこには梶。全部聞いていたようだった。
「黙って聞いてりゃ、お前…!!」
「梶、落ち着け。」
「……。」
柊ってすげぇんだな…??
「ん…?お前ら…さっきから思ってたけど…」
「全員αだな!?!?」
「ぇ、あ、バレた…」
何誤魔化せた気でいるんだ柊。
「は、、は…ほんと、
__風鈴はおもしれぇなぁ…」
なんて言ってみたけど、オレのこの恐怖は何処にも消えてくれなかった。
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