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side.もとぅ
ぎゅっと抱きしめても、若井の体は縮こまったままだ。どうすれば、安心できるかな。
ぐるぐる考えていると、若井が急に口を開いた。
若井「僕、つよいのっ…辛くないのに、迷惑、かけて、ぼ、僕なんかいなくなっちゃえばいいんだ」
今まで聞いたことのない言葉と、弱弱しくて幼い口調。若井は自分を責めて、責め続けて、ついに自分の存在をも否定した。
何か言いたいのに、涙が止まらなくて、のどが詰まって、声が出ない。それに、きっと俺じゃ上手く伝えられないだろう。
すると、涼ちゃんが静かに話し始めた。
藤澤「僕はね、”強い人”なんか、この世界にいないと思う。みーんな強がってるの。若井は、きっと頑張りすぎちゃって、パンクしちゃったんだよ。弱くてもいいの。どんな若井でも大好きだよ…?」
若井「でも、僕、迷惑だし…」
藤澤「迷惑じゃない。むしろ嬉しいよ、若井が頼ってくれて、甘えてくれて」
藤澤「考えてみてよ、僕なんか、すぐへこんで2人に助けてもらってさあ…ほんと、最年長なのに、ね」
若井が顔をあげて、涼ちゃんの暖かい目を見た。やっぱり涼ちゃんはすごい。
こんなに暖かくて、優しい言葉をかけられる人、若井以外に知らない。
若井「それは、支えたいから…!いいんだって…!」
藤澤「ほら、支えたいって思ってくれるでしょ?今の僕らもそうなんだよ」
若井「僕、迷惑じゃ、ない…?」
藤澤「うん。僕ら、若井を支えたいんだ。いつも支えてもらってるから。こういうのって、支え合い、でしょ」
若井「そっか、うん…」
涼ちゃんは若井に向かってにっこり笑って、今度は俺のほうを向いた。俺に話していいよ、という合図だろう。
涼ちゃんみたいには話せないから、たどたどしいけど、どうか若井に伝わるように口を開いた。
大森「若井、ほんと、っにごめん。俺、若井が、頼れるようにしてこなかった…!」
若井「なんで謝るの…元貴、悪くないじゃん、か」
大森「俺が、若井、にプレッシャ、かけて、」
若井「んーん…僕さ、元貴におにーちゃん、って言ってもらって、嬉しかった」
大森「へ…?で、でも」
若井「2人に、かっこいい僕だけ見てもらいたくて、だから、嬉しかった。そうなりたいって思った」
藤澤「きっとさ、誰が悪いとかじゃない、と思う。ちょっと、歯車がずれちゃっただけ」
若井「僕は、ネ、ネットのせいで、こうなっちゃった、ってこと…と思う…」
2人を見ると泣いていて、やっぱりみんな不安だったんだなって実感した。涼ちゃんだってさっき冷静にいようと頑張ったんだよね。俺が思うのもなんだけど、前よりずっとつながりが深くなった気がした。誰かが落ちきる前でよかった。若井がこっちを向いてくれて、戻ってきてくれて、本当によかった。
大森「若井ぃ…ごめん、ねぇ…」
若井「ん、僕も、抱え込んで、ごめん、ね」
藤澤「ひぐっ…よ、よがっだあ…」
3人で抱き合って、お互いの暖かさを感じる。ふっと顔をあげると、若井がこっちをじっと見ていて、唇を軽く合わせられた。若井はそのあと涼ちゃんともキスをして、へへっと笑った。若井の唇はカサカサで、でもすごく愛情が詰まったキスだった。
やっと戻ってきた…