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mogyumogyuGemi
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mogyumogyuGemi
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#AI
みら

80
みら

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第二十五話 海の底の観測者
蒼い瞳が、静かにこちらを見ていた。
あまりにも大きい。
暗い海の底そのものが、目を開いたみたいだった。
でも。
怖い、というより。
胸が締めつけられる。
その瞳には、長すぎる孤独が沈んでいた。
⸻
ゴォ……。
低い振動が空間を揺らす。
周囲の未観測光たちが、小さく震えた。
『……こわい』
『また、きえる?』
『いや』
私は咄嗟に声を上げる。
「大丈夫!」
その声は、自分でも驚くくらい強かった。
巨大な瞳が、ぴたりと止まる。
⸻
伊織が低く呟く。
「……反応した」
栞は空中に文字列を展開している。
⸻
【未観測海域管理個体】
【識別不能】
【感情蓄積量:測定不可】
⸻
「測定不可ってなに……」
『定義不能レベルです』
栞の声にも、ほんの少しだけ緊張が混ざっていた。
『この個体は長期間、“誰にも観測されなかった感情”を蓄積しています』
私は蒼い瞳を見る。
ずっと。
本当にずっと。
ここにいたんだ。
誰にも見つけてもらえないまま。
⸻
澪が、小さく前へ出る。
『……あなたも』
星核が揺れる。
『ひとりだったの?』
空間が静まる。
蒼い瞳が、ゆっくり澪を見る。
すると。
暗闇の中から、声が響いた。
深く。
遠く。
海の底から届くみたいな声。
『……観測、不要』
その言葉に、空気が冷える。
『期待は、誤差を生む』
『感情は、欠損を生む』
『だから』
長い沈黙。
『最初から、誰にも見つからなければよかった』
胸が痛む。
その考え方。
どこか、昔の図書館に似ている。
傷つかないために、最初から消える。
存在を薄くする。
⸻
伊織が静かに言う。
「下層は、“諦め”が沈む場所でもあるんです」
「諦め……」
「観測されることをやめた感情」
彼は蒼い瞳を見る。
「この個体は、その集合体でしょう」
⸻
その時。
中央恒星庫から、やわらかな光が降りてくる。
あの小さな恒星。
金色の光が、暗い海を照らした。
『……違います』
静かな声。
『観測は、傷つくためだけのものではない』
蒼い瞳が微かに揺れる。
『……証明不能』
『証明できます』
星の光が広がる。
『あなたは今、こちらを見ている』
空間が静まる。
『それは、“見つけてほしかった”ということです』
⸻
巨大な海が、震えた。
ゴォォン……。
空間全体が揺れる。
未観測光たちが、不安そうに集まり始める。
蒼い瞳が、ゆっくり閉じられる。
『……危険』
「え?」
伊織が顔を上げる。
「感情圧が上昇してる!」
栞が即座に表示を出す。
⸻
【未観測海域 崩壊率上昇】
【原因:自己認識発生】
⸻
「自己認識で崩壊するの!?」
『未観測領域は、“存在しないこと”で均衡維持されていました』
つまり。
“自分はここにいる”と気づくこと自体が、この海には重すぎる。
⸻
蒼い瞳が苦しそうに揺れる。
『……みつかってしまった』
海が軋む。
暗闇が割れ始める。
『なら』
声が震える。
『わたしは、どうすればよかった』
その問いは。
怒りじゃなかった。
責める声でもない。
ただ。
長い間、答えを知らなかった存在の声だった。
コメント
1件
読み終えました……「みつかってしまった」という言葉が、ずしりと胸に残りました。見つけてほしかったのに、見つかることで世界が壊れてしまう。その切なさ、孤独の質がすごく伝わってきました。蒼い瞳が「どうすればよかった」と問いかける最後、感情が揺さぶられました。素敵なエピソードをありがとうございます。