クザンさんの部屋から出た俺は、午後の予定は何かあったかと頭の中を探る。
「えーっと、午後にやることはなんだったかな……。特にないっけ?」
それじゃあ午後何しよっかな~誰かの稽古に混ざっちゃおっかな~~??
「~~♪」
鼻歌を口ずさみながら廊下を歩いていると、曲がり角でどんっと誰かにぶつかった。反射で目を閉じてしまう。顔…というよりは鼻が痛い。
「いてて…」
鼻取れたかと思った。え? ついてるよな? あれ、曲がり角の先壁かなんかだっけか?
なんて思いながら目を開けると、そこには俺より遥かに背の高い男が立っていた。その男は俺を見下ろすと、無言のままじっと見つめてくる。
「ど、ドレーク少将……」
「……」
黙ったままのドレーク少将に俺の背筋が凍る。え、何? なんで何も言わないの? もしかしてめっちゃ怒ってる感じですか!?
「す、すみませんっ! ちゃんと前見て歩いていなくて、えと、その、すみません!!」
「……」
「あの、本当にごめんなさい……っ」
俺は必死に謝るが、一向に喋ってくれない。怖すぎる。俺は恐る恐る視線を上げると、ドレーク少将は何やら困っているような、焦っているような顔をしていた。
「ドレーク少将……?」
ドレーク少将の顔を覗き込むように、下の方に回る。
「……っ、あぁ、いや、俺こそすまなかった。怪我はないだろうか?」
「は、はい」
「なら良かった」
「……」
「……」
沈黙が流れる。なんだか気まずくなってしまった。
「じ、自分はそろそろ失礼しますね……」
「いや、少し待ってくれ」
「? はい」
俺は首を傾げる。なんだろうか。俺に何か用事でもあるのかな?
そう思っていると、ドレーク少将は少しの時間何か言葉を探すように考え込んだあと、ようやく話し始めた。
「資料の整理を手伝ってほしい…」
「…え、ええ。いいですよ」
突然の申し出に驚いたが、俺は二つ返事で了承した。すると、ドレーク少将はほっとした表情を浮かべる。
こうして俺は、何故か一緒に資料の整理をする運びとなったのであった。
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