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#恋愛
篠原愛紀
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「瑞希……くん!?どうして?」
「今日休みだったから、迎えに来た。てか、大丈夫じゃねーな?この前より痩せてる。顔色悪い。遅くまでやってる病院連れて行くから、診てもらおう」
瑞希くんと会えたことは嬉しかった。
倒れそうな時に来てくれるなんて、やっぱり王子様みたい。
「大丈夫。寝てないだけだから」
「ダメ!強制的。俺も行くから」
有無を言わさず、タクシーに乗せられ、病院へ向かった。
医者からは
「うん。急な体重の減少と睡眠不足ですね。食べれてないなら、点滴をしますので」
そう言われ、点滴を打ってしばらく横になる。
「口から摂る栄養が一番です。ストレスが関連しているのであれば、専門的な心療内科ですとか精神科を受診してください」
帰りにそう言わた。
瑞希くんは待合室でずっと待っていてくれた。
「大丈夫?歩ける?」
「うん。点滴打ってもらったら少しは良くなったかも」
「明日は仕事休みな。それで、俺の家に泊まること」
「えっ?なんで?」
「そんな生活してたら、本当に倒れるから。荷物だけ取りに、葵の家に一回行くね?」
瑞希くんはタクシーに行き先を告げた。
「ちょっと待って。ダメだよ。大丈夫だから」
「大丈夫じゃないから、今日みたいなことになったんだろ?」
何も言えなくなる。
「怒っているわけじゃないからな」
私の家に向かい、瑞希くんの家に泊まる準備をする。本当にこれでいいのかな。
「葵、前みたいに荷物多めに持ってきて。俺の家、置いといていいから」
「うん」
今日は彼の言うことに従おう。
瑞希くんの家に到着する。
「ベッドで横になってて?」
「でも……」
「ダメ。俺、ご飯買いに行ってくる。俺が料理できなくてごめんな」
彼に甘え、ベッドに横になる。
瑞希くんの匂いがする。
こんなこと考えてしまう私は、変態なのかな。
どうしてだろう、自分の家じゃないのに。
なんだか眠くなってきた。私は目を閉じる。
「じゃあ、行ってくる。寝ちゃったか」
彼が私に声をかけてくれた時には、もう眠りについていた。
あれ?
なんか美味しそうな匂いがする。
そう思って目を開けた。ここは……。
そっか。瑞希くんの家に来てるんだっけ?
ベッドから降りて、リビングへ向かう。
「瑞希くん?」
キッチンで彼が何かをしていた。
「あっ、起こしちゃった?歩ける?」
私が起きてきたことを知った彼は、うしろを振り向き体調を心配してくれた。
「うん、大丈夫。ありがとう。何しているの?」
うーんと渋い顔をしながら
「買い物に行ってきたんだけど、電子レンジでも簡単に調理ができるってやつを作ってるんだけど。駄目だわ。不器用で。なぜか焦げるし。葵に元気になってもらいたくてさ。でも失敗」
そう言って苦笑している彼をとても愛おしく感じた。思わず、うしろから彼の腰に手を回し、抱きしめてしまう。
「ありがとう」
「うしろからハグってドキドキする。好きな子からだからかな?」
そんなことを素直に伝えることができる彼が羨ましい。瑞希くんが失敗したと言ったおかずに少し手を加えて、一緒に食べる。
「美味しい。久しぶりにご飯が美味しいって感じる」
「良かった」
片付けも全部、彼がしてくれた。
「明日はちゃんと仕事休めよ?」
「うん」
こんな体調で十分な仕事ができるとは思わなかった。明日、朝起きたら電話しよう。
あとで華ちゃんにメッセージしよう。
シャワーを浴びてリビングに戻る。
「葵、ちょっと話があるんだけど?」
なんだろう。
「うん」
彼の隣に座った。
「ごめん。葵がどうしたら精神的に落ち着けるかなって考えたんだけどさ、あまり良い方法が思い浮かばなくて。俺と同じマンションに空室があるからそこはどうかなって考えたりもしたんだけど。あ、費用は全部俺が出すよ。でも葵、絶対嫌だって言うだろ?」
瑞希くんと一緒のマンション。
費用のことまで考えてくれたんだ。
確かに安心するけど、現実的な話じゃない。
固定費の支払いができない。彼に甘えるわけにもいかない。
「うん」
私の性格、ちゃんとわかってくれているんだ。
「だから、|尊《あいつ》がどうなるかわかるまで、俺の家にいればいい。結局のところ引っ越しをしても、心の傷は残ってる。俺が近くにいて支えてあげたい。葵はイヤ?」
「嫌じゃないよ?でも……」
言葉が出てこない。
「とりあえず、今日はゆっくり休んで?」
ベッドに連れて行かれた。
「俺はまだ寝ないけど、葵が寝るまで隣にいるから」
「ありがとう」
彼の体温をとなりに感じた。温かい。安心する。自然に眠くなる。
こうも、人間って単純なのかな。
気づいたら私は眠ってしまっていた。
次の日ーー。
朝一度、会社に体調不良とのことで電話連絡をした。
何かご飯作らなきゃ。
そう思い、冷蔵庫を開ける。
あぁ、やっぱり何も入ってないな。買い物に行かなきゃ。
「おはよう」
うしろから声をかけられた。
眠そうな瑞希くんが立っている。
「おはよう、ごめん、起こしちゃった?」
「ううん、大丈夫。今日はゆっくりするんだよ」
「ありがとう」
瑞希くんにそう伝えた時だった。私のスマホが鳴った。
相手を確認する。
「えっ?」
どうしよう、心拍数が上がる。
「誰?」
「尊の……。お母さん」
「話せる?俺、出ようか?」
瑞希くん、初対面の人とそんな感じで話せるの?職業柄?
きっと大切な話だろうな。スマホはまだ鳴っている。
「瑞希くん、私出てみる。ごめんだけど、そばにいて?」
「当たり前じゃん」
彼は私の手を握ってくれた。
深呼吸をして
「もしもし?」
電話に出た。
<もしもし、葵ちゃん?今ごめんね?お仕事?>
変わらない尊のお母さんの声だった。
覇気がないのは、仕方がないだろう。
「お久ぶりです。大丈夫です。今日は仕事がお休みなので」
<そうなのね。なんて言っていいのか。葵ちゃんには本当に謝りたくて。怖い思いさせたわよね。尊のこと全て聞いて、今弁護士さんとやり取りをしているところなの。こんなことになって、本当にごめんなさい>
尊のお母さんは泣いているようだった。
なんか、謝ってもらっただけでも心が軽くなる。
<それでね、尊なんだけど、もうあなたには絶対に近づけさせないから。まだはっきりと決まっていないんだけど、精神科の病院に入院することになりそう。会社も。実質的にはクビよ?東京じゃ暮らしていけないと思うから、実家で面倒を見ることになると思う。だから安心してね?本当にごめんなさい>
「私もこんな形になるとは思っていませんでした。お母さんにはいろいろしていただいたのに、こちらこそ申し訳ありません。お身体に気をつけて。お元気でいてください」
私に言える精一杯だ。
<ありがとう>
そう言われ、電話が切れた。
自分が今、どんな感情を抱いているのかわからない。涙が頬を流れていた。
瑞希くんが優しく抱きしめてくれる。
私はそれにしがみつき、しばらくその場から動けなかった。
彼の言葉に甘えて、しばらく彼の家にいることになった。
あくまで精神的に私が落ち着くまでといった形。
瑞希くんは忙しそうで、夜、少しの時間しか会話ができない。
それでも、連絡はしてくれるし、夜中に起きると隣に彼がいる。
とても安心して眠れた。ご飯も食べられるようになったし、そろそろ自分の家に帰らなきゃと思っていた時、瑞希くんに呼ばれた。