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(雅輝のヤツ、あんな隠し玉を持っていたなんて。あ~っ、もうやだ! 超格好悪い! 今までの中で、最速記録になっちまっただろ。はじめてがコレって、マジで最悪……)
躰の熱が冷めやらぬベッドの上、橋本は心の中でさめざめと泣いた。そんな気持ちも露知らず、宮本は放出されたモノをすべて飲み込み、橋本自身の先端に軽いキスをしてから、にこやかに声をかける。
「ねぇ陽さん、気持ちよかった?」
「ああ……」
「俺もイキたいんだけど、中に挿れてもいい?」
「ああ。ちょっと待ってろ」
橋本は重だるい躰をやっと起こして、サイドテーブルの引出しから、ゴムとローションを取り出した。
「これ、両方使うだろ」
「はい、ありがとうございます」
宮本は自分に背を向けて、いそいそとジャージの下と下着を脱ぎ、手渡されたゴムをつける。
(いよいよだな。あー怖いこわい)
橋本は頭の下にあった長枕を引っ張り出し、ぎゅっと抱きついた。挿入する際には間違いなく、苦痛で顔を歪ませるのがわかる。長枕はそれを隠すのに、もってこいの物だと思った。
「陽さんのココにもローションをつけて、滑りをよくしておきますね」
「ああ、そうしてくれ」
まな板の上の鯉状態なので、まんまお任せすることにしたのだが――。
冷たいローションが後孔に塗ったくられる感触に、はじまるんだという緊張感が、橋本の中にふつふつと沸きあがってきた。
「これから挿れますよー」
まるで、病院で検査をするような宮本の声がけに、橋本の片側の口角が思いっきり引きつった。淫靡な雰囲気の欠片すらない中で、そのときを待つ。
「ぐふっ!」
ぐぐっと挿入された感触を、下半身でひしひしと受け止める。苦痛で引きつらせた口を長枕に押しつけて、奇声をあげないようにした。
「陽さん、顔見せて」
「嫌だ。恥ずかしい」
宮本に心配させないようにすべく、枕で顔を隠しているのを知られないために、橋本は適当な嘘を咄嗟についた。
「声も出さない、顔も見せないなんて、陽さん可愛すぎます」
(勝手に言ってろ、このクソガ――)
次の瞬間、躰に打ちつけられた強い衝撃と一緒に、何とも言えない圧迫感に襲われ、橋本は声にならない声をあげた。
「ふぅ、やっとひとつになれた」
「◎△$♪×¥●&%#?!」
「陽さん、大丈夫ですか?」
想像を超える違和感や、その他もろもろの感情を抑えきれず、橋本は顔を隠していた枕を宮本に向かって、両手で投げつけてやった。
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