テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「来てくれてありがとう」周杜が隣の席について、笑顔でそう言った。
今日のネックレスは初めて見るデザインだった。何つけてもかっこいいな。
隣のテーブルの原くんが、こっちを見ながら
「しゅうと、今日のアクセ◯◯ちゃん用に選んでたよな?」
とからかったら、
周杜は「はいはい、あっち向いててください」、と
原くんの頬をゆっくり押し戻した。
今日は落ち込んでたけど、そのやり取りを見て少し心がなごんだ。
それでも、やっぱりいつもみたいには振る舞えない。
周杜が
「違ったらごめん。でも……、今日なんか元気なくない?」と私の顔をのぞき込む。
いつも明るい周杜だけど、ちゃんと見てくれてる。
その優しさがさりげなくて、思わず甘えたくなってしまう。
私は、ついこぼしてしまった。
「実は……仕事で……」
周杜は
「マジで……?大変だね、それは……」
と驚いた様子だったけど、その後、遠い目をしながら言った。
「俺も、風磨くんのお客さんの酒を間違えて飲んじゃった……」
「え、大丈夫だったの?」
「もちろん、エラい目にあった。
勝利さんの生誕祭のケーキの名前も、間違えて注文した」
「ええ……」
「聡さんのお気に入りのシャツ、間違えて洗って3分の1サイズにしちゃった……」
よりによって先輩絡みで三連発だ。
「でも……まだクビになってないよ。
◯◯もでしょ?だから、大丈夫だよ」
私はハッとした。確かに失敗したけど、まだ「出てけ」とは言われていない。
「そうだね」
そう言うと、周杜が笑顔で頷いた。
「クビになるまで、一緒に頑張ろう!」
そうして、頭を撫でてくれた。
心がふわっと軽くなる。
「うん」
「えらい!」
その後、飲んだドリンクはいつもより
ずっと甘く美味しく感じた。
帰り際、周杜が私の手を取って、
「次はもっと早く来てね。待ってるから」
と笑った。
その笑顔には、さっきまでとは少し違う、
真剣な優しさが混ざっていた。
ありがとう、周杜。
end.