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「来てくれてありがとう」
ソファ席に座った私に、将生が笑顔で声をかけてくれた。首元がきれいに出るシャツを着ていた。
風磨くんがにやにやしながらちょっかいをかけてくる。
「こいつ、ずっと◯◯ちゃん来てないな、って待ってたんすよ」
「ちょっ、やめてくださいよ!」
振り返りながら、将生が大きい声でつっこむ。
風磨くんは楽しそうに笑って、片手をあげて去っていった。
将生は隣の席に座って、さぁ……何飲む?って私に聞いてくれた。
少し照れた笑顔で、目を合わせないで、メニューを差し出す。柔らかな前髪が少し揺れた。
この優しい横顔をどうしても見たかった。
今日は気持ちがふさぎ込んで、どうしても一人でいられなかった。
大好きなドリンクが来て、
一口飲んだ私に
「何かあった?」
と将生が聞いた。
何も言ってないのにどうしてわかるんだろう。
さっき風磨くんと話してた時とは全然違う、真剣な眼差し。
だけど口元はほんの少しだけほほ笑んでいる。
将生なら、受け止めてくれる気がした。
思わず私は
「実は、ちょっと人と色々あって……」と打ち明けた。
将生は、静かなトーンで、うん、うんと相槌を打ってくれる。
下手な私の話を遮りもせず、ただ寄り添ってくれる。
「大変だったね」
ひと言呟いて、
片手を、そっと私の手の上に重ねた。
将生の手は大きくて温かい。
涙が一粒こぼれた。
「いや、相手のこと、許せないな。俺だったら、無理かも……その状況」
周りの賑やかな空気とはうらはらの、
静かな将生の肩に頭を預けた。
「……もう我慢しなくていいよ」
将生はゆっくり私の頭を撫でて、
黙って泣き続けることを許してくれた。
最後に席を立つ時、
目の前に立った将生が私の背に両手を回し、引き寄せる。
思わぬハグに、身体が固まった。
細身なのに力強い将生の腕が、心を覆ってくれてるみたいだ。
ハグをしながら、
将生が私の耳元で、
「いつでも待ってるから」
と小さく囁いた。
その声は、周りには聞こえないほど小さくて、
2人だけの秘密みたいだった。
風磨くんの声が飛ぶ。
「将生くん、私情を挟まないでくださ〜い」
「うるさいですよ」
と返す将生の耳は赤くて、それが愛おしかった。
明日も頑張れそう。
ありがとう、将生。
end.
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