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黒星
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(……やっぱり、気のせいじゃない。あの人、さっきからずっと僕の後ろを一定の距離でつけてきてる…っ)
それでも、意を決して後ろを急に振り返ると、男の姿はサッと建物の影に隠れて消えてしまう。
追いかけようとすれば、まるで煙のように見失ってしまうのだ。
最近は毎日こんなことばかりで
精神的にもすっかり参ってしまい、夜もまともに眠れなくなっていた。
◆◇◆◇
そして、ストーカーの気配を感じ始めてから3日が経った、金曜日の夜。
僕はとうとう恐怖の限界を迎え
震える指先でスマホを握りしめ、勇気を出して怜治さんにLINEで事情を伝えることにした。
怜治さんもお店の仕事で忙しいだろうし
こんな確証のない、ただの勘違いかもしれないことを相談してもいいのだろうかと悩んだが
――『何か大きなトラブルがあってからじゃ遅いからね。大人として、もっと俺を頼ってほしい』
という、あの時彼が言ってくれた温かい言葉が脳裏で反芻し、気づけばメッセージを打ち込んでいた。
【こんなこと相談できるの、僕には怜治さんしかいなくて……】
【もしかしたら僕の勘違いかもしれないんですけど、最近、誰かにつけられてるような気がして、すごく怖いんです……】
送信ボタンを押すと、驚くほどの速さで既読がつき、すぐに返信のバイブレーションが鳴った。
【相談してくれてありがとう、さっちゃん。それは不安だよね。何があったのか、詳しく教えてもらえるかな?】
その短くも真摯な言葉に救われ
僕は堰を切ったように、これまでの不気味な出来事を全て文字にして打ち明けた。
【最初は数日前の夜道で、後ろから足音がしたり、男の人が追いかけてくるような気配を感じたりする程度だったんです】
【でも、それが3日前くらいから下校中とかにも頻繁に起こるようになっていて……】
文字を打つ指先が、恐怖の記憶でガタガタと震える。
送信すると、すぐにまた怜治さんから返事が届いた。
【そこまで頻繁なら、それは絶対に気のせいじゃないよ。今すぐ警察に相談したほうがいいと思う。もし一人で警察署に行くのが怖かったら俺が一緒に着いて行ってあげるから】
【大事になる前に、行動した方がいいと思うんだ】
液晶画面からでも、彼の真剣で、僕を心から案じてくれている様子が痛いほど伝わってきた。
(警察に相談、か……)
今まで家族にさえ言えずに一人で抱え込んでいた問題だったから
こうして怜治さんに打ち明けて味方になってもらえただけでも、心がすっと軽くなった気がした。
怜治さんが一緒に来てくれるのは、すごく心強い。
だけど、やはり警察沙汰や大事にはしたくない。