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ありがとう。あなたが好きでした。
その言葉と共に私は火を投げた。
燃えていく彼女は、寂しげに笑っていた。
「んんーと、地図でいうとここかな?」
快晴の青空の眩しさに目を薄めながら私は館を見上げた。
暗くて、古びた石造りの館。
私は魔女狩りとしてここに来たのである。自分の家族を奪った魔女に復讐するために。
「こんな天気のいい日に魔女を狩るなんて、ちょっと嫌な気もするけど。」
その時、重く硬い館の扉がゆっくり開いた。
「あら?もしかして人間?」
中から出てきたのは色白く、美しい金髪をたなびかせる綺麗な女性だった。
「珍しいわね。人間なんて、魔女の館だと恐れて寄り付かないのに。」
彼女は少し寂しそうに微笑んだ。
「あなたが魔女なの…?」
私は恐る恐る聞いた。こんなに美しい人が魔女だなんて信じられなかったからだ。
「えぇ、そうよ。私はこの館に住む魔女、リリスよ。あなたは?」
「え、私は…カルミア。」
「へぇ…カルミア。素敵な名前ね。」
彼女は何かを考え、優しく笑った。
「ほんとにそう思ってるの?」
「えぇ、ほんとよ。カルミアは何しに来たの?魔女の館に。」
私は迷った。迷ってしまった。魔女狩りとしての使命があるのに、目の前の魔女の美しさに目を取られてしまった。彼女から目が離せない。全てを見透かしているような紅い瞳。ジワっと血色が彩るピンクの唇。はたしてこんなに美しい彼女がほんとに魔女なのか。私の家族を奪った宿敵なのか。魔女は本来、もっと醜く、人の命を簡単に奪い、人間を恐怖に晒してきた。そんな魔女の中に、こんなに美しい人がいるなんて…
私が考えていると。
「まぁ、いいわ。中でゆっくり聞くから。おいで。」
彼女は微笑むと指で来いと合図した。
私はその美しさから目を逸らせず、そのまま中に招かれてしまった。
中は思ったより綺麗で整っており、廊下には花瓶があり美しい花が並べられていた。
「花、好きなんですか?」
私が尋ねると彼女は笑って
「そうなの。花って綺麗でしょ?パワーを貰えるのよ。」
だから彼女は美しいんだ、と謎に納得してしまった。
「ここに座って。なにか飲む?」
「じゃあ…ミルクティー。」
案内されたのは大広間のようなところだった。
「わかった。」
彼女は微笑んで、それから魔法の杖でティーカップとティーポットを出し、そこから注いでくれた。
「ありがとうございます。」
「いいのよ。」
しばらくの沈黙が続いた。その間も私は彼女に釘付けだった。
そして、彼女が口を開いた。
「なぜここに来たかは分からないけど、私、あなたのこと気に入ったわ。ねぇカルミア、ここで私のメイドにならない? 」
魔女のメイドだなんて、魔女狩りに務まるわけが無い。そもそもここに来た理由はそれじゃない。私は早くこの魔女を殺さなければ。でも、悲しい目で私に提案してきた彼女を殺すなんて、私には出来なかった。もう私は、彼女に一目惚れをしていたのだ。
私が返事をしないで固まっていると…
「何も言わないってことはYESってことでいいかしら?」
「え、あ、は、はい。」
「良かった。よろしくねカルミア。」
彼女は愛おしそうに私を見つめ、優しく私の頬を撫でた。