テラーノベル
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カーテンの隙間から差し込む淡い朝の光が、乱れたシーツを白く照らしていた。
昨夜の狂乱が嘘のように、部屋の中は静まり返っている。
かすかに残る、甘い紅茶の香水と濃厚なフェロモンが混ざり合った匂いだけが、現実に起きた出来事の凄まじさを物語っていた。
💛「……ん」
仁人はゆっくりと目を開けた。
全身を襲う、鉛のように重い疲労感と、腰の奥に残る鈍い痛み。
そして何より、自分の背後から驚くほど大きな体温が密着していることに気づき、心臓が跳ね上がった。勇斗の逞しい腕が、仁人の腰をがっちりと抱きすくめている。
その胸板に背中を預ける形で、仁人は完全に勇斗の腕の中に閉じ込められていた。
💛(僕……本当に、勇斗と……)
昨夜の記憶が鮮明に蘇り、仁人の顔が一気に赤く染まる。
オメガのヒートに呑まれていたとはいえ、自分から「全部ちょうだい」とねだり、何度も名前を呼んで抱き合ったのだ。
しかも、まだ「番」の契約をしていないにもかかわらず、心まで完全に勇斗に委ねてしまった。
🩷「……起きた?」
耳元で、低く掠れた声が響いた。
勇斗が覚醒し、腕の力を少し強めて仁人を自分の方へと引き寄せる。
💛「あ……うん。おはよ、勇斗」
仁人は気恥ずかしさのあまり、布団を鼻先まで引き上げて顔を隠した。
🩷「顔、真っ赤。まだ熱ある?」
勇斗が心配そうに、自由な方の手で仁人の額に触れる。
その手のひらは大きくて温かく、それだけでまた胸が締め付けられそうになる。
🩷「熱は、もう下がった。……薬も効いてるみたいだし、フェロモンも落ち着いてると思う」
💛「そっか。よかった」
勇斗はホッとしたように息を吐くと、仁人の細い肩に顔を埋めた。
首筋の、まだ傷のない真っ白なうなじ。
そこに勇斗の唇が優しく触れる。
💛「ひゃっ……!」
と仁人が身をすくめると、勇斗は小さく笑った。
🩷「安心しろ。まだ噛まねえよ。昨日の夜、約束したろ」
💛「……うん」
勇斗は、仁人が一人の男として、M!LKのリーダーとして誇りを持っていることを誰よりも理解していた。
雫
32
🎀もちたん🎀
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だからこそ、本能のヒートに漬け込んで「番」として縛り付けるような真似はしなかった。
その優しさが、仁人にはたまらなく愛おしかった。
💛「勇斗……ありがとう。僕のこと、大切にしてくれて」
🩷「当たり前だろ。お前がベータだろがオメガだろが、関係ねえよ。俺は、吉田仁人が好きなんだから」
ストレートすぎる言葉に、仁人は胸がいっぱいになる。
ずっと一人で抱えてきた孤独。
アイドルを辞めなければいけないかもしれないという恐怖。
それらが、勇斗の言葉によって、朝霧のように消えていく気がした。
しかし、現実が彼らを待っている。
💛「ねえ、勇斗。……これからのことなんだけど」
仁人は意を決して、腕の中から起き上がり、勇斗と向き合った。
💛「次のライブも、メディアの露出もたくさんある。僕の体は、もう普通の抑制剤じゃヒートを抑えきれなくなってる。昨日は運よく勇斗が気づいてくれたけど、もし他の現場で発症したら……」
🩷「分かってる。だから、俺が守る」
勇斗の瞳が、優性αとしての強い光を宿した。
🩷「これからは、俺がお前の『移動式の壁』になる。現場では常に俺が近くにいて、俺のαのフェロモンで、お前の匂いを上書きして隠す。他の奴らにお前の匂いを嗅がせなきゃいいんだろ?」
💛「え……? でも、そんなことしたら、勇斗の体に負担が……」
🩷「メンバーを守るため、好きな男を守るためだ。これくらい、なんてことねえよ」
勇斗は不敵に笑うと、仁人の頭をぽんぽんと叩いた。
その頼もしい姿に、仁人は初めて、リーダーという重荷を少しだけ誰かに預けられたような気がした。
💛「……頼りにしてるよ、勇斗」
🩷「おう。任せとけ、リーダー」
二人の関係は、アイドルとしての相棒から、誰にも言えない秘密を共有する「特別な二人」へと変貌を遂げた。
動き出した運命の歯車は、彼らをさらなる試練へと導いていく。
next♡100
コメント
1件
続きが楽しみです!