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「さっきも話したが、この屋敷はヤクザのボスの自宅なんだ。あいつらには若い女性たちを海外に売り飛ばしているという疑惑もある。いくらボディーガードの男性を連れているからと安心してはいけない」 ボディーガードの男性ってわたくしのこと? 短髪にして黒服を着てるだけで、女なんですけど。男ならどれだけよかったか? 陛下の夜伽の相手だって――
また気持ち悪い顔するなと怒られそうだからやめておこう。
「あいつらは銃で武装もしている。撃つと決めたらためらいなく撃ってくる連中だ。人の形した悪魔だと思えばいい」
人の形した悪魔? 今あなたが話している相手は人の形した魔王ですけどね。魔王は悪魔の王。悪魔が百人で立ち向かっても魔王の足元にも及ばない。ましてや魔力を持たない無力な人間ならばなおさらだ。一匹のスズメバチがミツバチの群れを全滅させるように、陛下は百人のヤクザを文字通り殲滅した。
そのとき陛下が口を開いた。何を言うのかと思ったら――
「外国に売られるとか銃で撃たれるとか、音露怖いです……」
「だからここは君のようなかわいい女子高生のいる場所じゃない。早くここを立ち去りなさい」
「ううっ、ありがとうございます。警部さん、さようなら!」
陛下の涙を見て、警部は何も疑わず一番の危険人物を素通りさせてしまった。
わたくしは改めて陛下が恐ろしくなった。普通に戦っても無敵なのに、涙という女の武器まで使いこなせるなんて!
わたくしは真っ青な顔をしていたはずだ。目ざとい陛下は気づいていただろうが、そのことに触れてはこなかった。