今日は地方でのライブイベント。愁斗がヘアメイクを終えたとき、俺は思わず息を呑んだ。
フライトキャップを被り、前髪にはエクステがついている。肩まで伸ばした髪はゆるく巻かれて、どこか中性的な雰囲気をまとっていた。
「かわいい~!」
ヘアメイクさんの声に、メンバーたちも次々に愁斗へ視線を向ける。
「お、めっちゃいいじゃん!」
「いつもとイメージ違う!」
わいわいと盛り上がる空気の中、史記がいつもの調子で発した声がやけに耳に残った。
「なんか、女の子みたいじゃない?」
その言葉に、周りも「確かに」と頷き始める。
「まじで女子みたい」
「メイクちょっと足したらほんとに女の子じゃん」
「やめろよ」と笑いながらも愁斗は鏡で自分の姿をちらりと見て、髪の先を指で触れた。
まんざらでもなさそうな様子だ。
(……何だよ)
別に愁斗は女の子みたいにしなくたって可愛い。幼い頃からずっと見てきた弟だ。愁斗の魅力は誰より一番自分がわかっている。
(別にいいじゃん、褒められてるんだから)
そう自分に言い聞かせても、何かが引っかかる。
大好きなメンバー達の声が酷く耳障りに聞こえた。
愁斗の魅力をこんなふうに他人に評価されて、当の本人がそれを受け入れているのが、何故だか無性に腹立たしい。
いや、違う。
俺が気に入らないのは、「愁斗の魅力が認められること」じゃなくて、「俺だけが知っているはずの愁斗の魅力が、みんなのものになっていくような感覚」だ。
なんて子供じみた感情なんだろう、と自分で呆れる。
そんなことを考えている自分に、思わずため息をついた。
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ライブが終わり、ホテルの部屋でぼんやりしていたはずが、気づいたらメッセージを送信していた。
《ちょっといい?》
《なに》
《今ひとり?》
《うん》
返事をするよりも先に体が動いていた。
スリッパを引っ掛け、愁斗の部屋へ向かう。
ドアをノックすると、すぐに「はーい」というのんびりした声と共に扉が開いた。
その姿を捉えた瞬間、俺は一瞬息が詰まった。
愁斗は、如何にも風呂上りだった。タオルを頭に被り、濡れた髪が首に貼りついている。
首筋を伝う水滴が肌の上を滑り落ちていくのをついじっと見てしまう。
「どうしたの?」
まるで警戒心などないような無垢な表情で俺を見上げる。
__気づけば、俺は愁斗の細い手首を掴み、覆いかぶさるように押し倒していた。
「ひで……?」
ベッドにころんと転がった愁斗は、そんなことをされても尚、きょとんとした表情でこちらを見上げる。
その無防備な姿に、込み上げる衝動を抑える理由が見当たらなかった。
俺は何も言わず、血色感のある唇を少し強引に奪った。
「ん……っ」
不意をつかれた愁斗は少し驚いて、一瞬だけ俺の肩を押そうとする。でも、力はほとんど入っていなかった。
唇を深く押し当て、舌を差し入れる。じっくりと絡めるように、口内を舐める。
じんわりと温かくやわらかい感触に浸りながら。その温度感と息遣いに酔っていく。もっと、奥まで味わいたい。
「……んっ…」
最初は戸惑っていた愁斗が、次第に息を乱し始める。
唇を離すと、瞳を潤ませ、僅かに肩を揺らしていた。
「……な、なに……?」
困惑の声で問いかけながらも、頬は赤く染まり、唇は軽く開いたまま。
その姿を見て、続けて俺は愁斗の首筋へ唇を這わせる。
「や……っ、待っ……」
舌先で肌を撫で、優しく吸い上げると、愁斗は肩を揺らした。
「もう、なに……っ?」
焦ったような声で文句を言うが、その声には甘さが滲む。
さらに首筋へ唇を這わせ、耳の下を吸い上げる。
「……っぁ……っ、ひ……で……」
ほんの少し吸う力を強めると、小さな指先が俺の肩にしがみついた。
「お前、今日みんなに『女の子みたい』って言われてたね」
Tシャツの裾を捲り上げ、指先を忍ばせる。滑らかな肌を撫で、胸の先をつついた。
「っ……ゃ、……」
突然の強い刺激に、愁斗は身体をピクっと跳ねさせた。
親指と人差し指で緩くつまむように弄ると、必死に身体を捩るので、更にそこを責め立てた。
「ふ……ぁ……っ、や、だ……っ」
甘い声を漏らしながら、俺の手から逃れようとする。
しかしそれに相反して、触れているそこは嬉しそうに紅く腫れあがっているのが酷く淫らだ。
「ここも、こんなになって、女の子みたいだな」
「…っ!ば、ばかっ……!」
強気な態度を取っても、完全に感じるように開発されてしまったそこは、俺を誘うように艶めかしく主張していて、指先で突起を弾く。
「あっ…!ん…っ」
「胸なんて弄られて、こんな女の子みたいになっちゃうんだって、みんなにも教えてあげようか?」
「…最悪……っ、」
愁斗は俺を睨みつけるが、その涙目には羞恥と快楽の色が混じっていて、煽っているようにしか見えない。
散々弄って、可哀そうに紅く染まりかすかに震える先っぽに吸い付いた。
舌先でざらりと舐め上げると愁斗の身体は大きく反応した。
「ぅ、ぁ……っ、やっ…!」
シーツを掴み必死にせり上がってくるものから逃れようと身を捩る愁斗に構わず、夢中で味わう。
舌先を押し付けながら強く吸い上げた瞬間だった。
「あっ……ほんとに、んっ…だめ、…っ!」
ビクンと跳ねた後、少し痙攣する愁斗の体。
「…え?」
唖然としながら視線を下におろす。
Tシャツにパンツ1枚だったこいつそこは、布に少し染みを作っていた。
視線を顔に戻すと、まだボーッとした表情で息を整えようとしながらこちらを見ていた。
頬に張り付いている湿った髪を払ってやる。
「お前、今……… ほんとに女の子じゃん…」
「…も、さいあく…!」
力の入らない手でパンチされても可愛いだけだ。あぁもう、本当にこいつは。
(絶対、誰にも見せたくない…)
俺の下で、快楽に悶える弟は、世界中で俺しか知らない。
この顔も、この声も、誰にも知られたくない。
全部、俺だけのものだ。
ふと、黒い感情に飲み込まれそうになったその時___ 愁斗が、俺の首元に甘く口づける。
子猫みたいな控えめな甘噛み。まだ熱の残る瞳が、「続きは?」と言わんばかりに俺を覗き込む。
それだけで、渦巻いていた黒い感情は一瞬でどこかへ吹き飛んだ。
本当に単純だ。
こいつの何気ない仕草一つで、こんなにも救われた気持ちになるなんて。
目の前の弟を、ただただ愛し尽くしたいと、もう一度、唇に吸い付いた。
コメント
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今回もほんとにリアルでキュンキュンしました!前に投稿していたお話はもう公開する予定はありませんか?主さんの作るお話全部大好きだったのでまた見れたら嬉しいです🥺今あるお話も何回も読み直してるくらい好きです!これからも楽しみにしています♪
やばいほんとに最高です😭😭💖
最高です🤭