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🏋️「やばい、書類ぐっちゃぐちゃだ……」
家では朝からドタバタな日常が流れる一方その頃。早番で一足早く会社へ出勤した翔狗に、悲劇が襲いかかる。
本日締切の書類に、昨日配られたばかりの書類、そしてプレゼン用の資料などなど、それはもう色んな種類の書類がめちゃくちゃに仕舞われている。
そして厄介なことに、今翔狗はこの分類を全く疑わずに書類をしまった。
片付ける書類が増えて、もう手のつけようがない。
絶望しながらも、とりあえず朝のノルマをクリアするのが先決だと、とりあえず書類は放置した。
――
しばらくして朝礼が始まり、そのまま皆が仕事につく。
とその時。
「うっわ!書類これどうなってんの?!」
そんな社員の声が響く。そこで翔狗は、あの後片付けるのを忘れていたことを思い出した。
🏋️「あ〜、やべ……」
そうボヤいた声が聞こえたのか、上司が横に来て説明を求めてくる。
🏋️「俺がやったわけじゃないんすよ?!ただ朝気づいた後、ノルマ優先で後回しにしてたのを忘れてただけであって……」
必死に弁明はするものの、見て見ぬふりをした事実は消えることは無い。
とりあえず、片付けろ。怒るでもなく、たしなめるような声色で上司に諭され、なんで俺が……という心情の元片付けを始める。
防御魔法の応用で、ものを無理やり動かして片付ける。能力を使うと疲れるけど、あっちにこっちに動いて整理するよりは断然楽。全部片付け終えて、自分の席につきふぅと一息つく。
何気に開いたスマホのロック画面。阿英が勝手に撮った、喧嘩する高校生3人の写真が表示され、口元が緩んだ。
「先輩、何見てんすか?」
🏋️「え?なんで?」
「いや、なんか嬉しそうだったんで。奥さんの写真とかっすか?(笑)」
🏋️「いやいや、俺結婚してないしwまぁ、家族の写真ではあるけどさ。」
ロック画面を見た部下は、弟か〜、と声を漏らす。正式には、翔狗はこの3人、及び泰以外の兄弟たちは息子に当たる。血は繋がっていないものの、家族、親子と言っても差支えはないだろう。
あの日、小さい子供を連れた千流と陽桜達兄弟とあった日のことを思い出した。
――
その日は別に雨は降ってなかったし、なんなら快晴と言うくらい晴れ渡っていた。
その時翔狗は22歳で、泰と一緒に街を歩いていた。その時、道の傍らに見るに堪えないボロボロの服を着た子供が何人も座っているのが見えた。
見たところ、いちばん大きい子は泰と同い年くらいの子で、小さい子はまだ小学校低学年くらいに見えた。
周りの通行人は見て見ぬふり、気づいてないふり。翔狗と泰は金だけは持ってた親の都合、そこそこ裕福な生活を送っていたし、顔を見合わせてその子供たちに話しかけた。
🦔「どうしたの?」
こちらを見る子供たちの目は、怯えたような、驚いたような、それでいて期待するような目だった。8人も兄弟がいて、親が育児放棄、お金をやりくりするうちに家もなくなって、ご飯もろくにない、そんな生活をしていると、当時17歳の高校2年生だった千流が話してくれた。同年代の子と、泰と比べるとまだ少し幼く、精神年齢的には親に育てられていたところで止まってしまってるんじゃないか、そんな考えが翔狗の脳裏をよぎった。
🍬「おなかすいた、なんかちょーだい」
❄️「はい、これで我慢できる、?」
🍬「……いいよ」
千流と話す後ろで、雅と希那がそんな話をしていた。今でこそ、雅は有兎家で1番食べる食いしん坊で知れ渡っているが、この頃の雅はパンの耳で我慢せざるを得ない状況だった。
泰がポケットから飴を取り出して、雅に手渡す。
🦔「俺もこれしか持ってなかったや…w」
周りの兄弟たちもうらやましそうな目で飴を見つめる。翔狗は直ぐに泰に財布を渡して、コンビニでおにぎりでも買ってきて、と頼んだ。
残った子供たちと話す。うちに来ないか、と誘った時の千流の顔は、今でも翔狗の脳裏にこびりついている。その後、家まで歩いて帰るそんな姿は、周りから見たらどう考えても異常だったと思う。もしかしたら翔狗たちが悪い大人に見られていたかもしれないし、もし警察がいたら職務質問されていたかもしれない。それでも、家に帰ったあと、とりあえず昔の自分たちの服に着替えさせようと、古着も何枚も取り出してきた。
服を脱いだ兄弟たちの姿は、今にも栄養失調で倒れるんじゃないかと思うくらいにやせ細っていた。冷えたからだを温めるために、順番にお風呂に入る。
全員が風呂に入っている間、泰は昼ごはんの準備をしていた。いつもより、かなり多くの分量で。
そんな量ぺろっと無くなってしまうくらい、育ち盛りだった兄弟たちはガツガツと飯を食らった。
さっきおにぎり食べたのに、翔狗はそう思いながらも、保護者として子供の面倒を見ていた。
――
そんな思い出を掘り返したあと、またロック画面の写真を見る。これは確か、ひとつしかなかったまんじゅうを競って喧嘩してたんだっけ、結局そのまんじゅう食べたのは文悟だったっけ、その後また乱闘が始まったんだったな、と翔狗は思いを馳せた。
🧸「ちょ、しょーぐんさん俺のスマホないから貸して!これ撮らな!」
その様子を一大スクープだと言わんばかりに連写していた阿英と、その写真をロック画面にまでしている自分に、翔狗は苦笑するようにまた頬を緩ませた。