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場面は変わって、どこかの廊下。翔狗と同じような、三つ巴の喧嘩を映した写真のロック画面。

そのスマホの持ち主である希那は、画面を消すとひとつ息を吐いて、横開きのドアに手をかける。


❄️「おはようございます。」


希那の挨拶に、部屋の中、教室の中の生徒たちがいっせいにざわめき出す。今日から2週間、この高校のこの教室で、希那は教育実習生として先生をする。

黒板にチョークで自分の名前を書こうとして、事件は起こる。


❄️「あっ……!」


チョークたちが一斉に動きだし、各々が好きに文字を書き出したのだ。「有兎希那」「ここは母校で、懐かしさを感じてる」「緊張するけど頑張る」などなど、希那が思っていることを次々と書き出す。そこで思ってることがさらけ出される訳じゃなくて、希那は何とか理性で抑えて、自己紹介の文章として成り立たせる。

生徒も先生も、最初はぽかんとしていたけど、その後すぐに、すげ〜!と歓声が上がった。

元は緊張によるミスだが、なんとか取り繕うことが出来たのは、希那の高い能力コントロール力のおかげだろう。


HR後、わーわーと生徒に囲まれる。


「有兎って、もしかして菜瑚芽先輩のお兄さんっすか?!」

「え、隣のカフェの陽桜さんと文悟さんも有兎ですよね!」

「一年にめっちゃ女子力高い男子って有名な子、あの子も確か有兎だったと思うけど」

「確か2個上の先輩にもいなかった?有兎って。頭良くて有名だった人!」


こういう時、兄弟が多いと質問が絶えない。受け持った学年が2年生なこともあって、阿英のことを知っている人もいる。陽桜と文悟に関しては高校全く関係ないのに、イケメン店員なばかりに、有兎という名字が有名になりすぎている。

希那は苦笑しながら全員の質問一つ一つに答えていく。


❄️「うん、菜瑚芽と瑠羽斗、雅、阿英と文悟はおれの弟で、陽桜はお兄ちゃん。」

「え!そんなに兄弟いんの?!」

「マジ?大家族じゃんw」

「楽しそー」

❄️「めっちゃ騒がしいけどねw」


そう、たくさんの兄弟に囲まれるのは、楽しいけれど騒がしい。特に有兎家は騒がしいほうだと思う。基本的に無法地帯で、喧嘩乱闘が日常茶飯事。

いつものことだけど、そんな日常が愛おしい。他の兄弟たちよりも子供好きな希那は、兄弟との日常が本当に楽しくて仕方がないのだ。


「てか、さっきのチョークのやつ!めっちゃびっくりしたw」

「それな〜!あんなこと出来んだ!」

❄️「あ〜……そうだね。めっちゃ疲れるけどw」

「教師向きじゃんw」

❄️「能力の精度にはだいぶ自信あるから」

「カッケェ〜」


ふと、希那のスマホの画面がつく。


「あ、これ文悟さんだぁ!」

「こっち菜瑚芽先輩じゃん!」

❄️「あーあーあーw」

「ロック画面にまでしてんのw大好きじゃんw」

❄️「そりゃあまぁ、可愛い弟たちだから。」

「これ喧嘩してんの?」

❄️「けーんか、うん喧嘩。なんの喧嘩だったかなぁ…三つ巴でしょ〜、いやあり過ぎて覚えてないやw」

「まじかw喧嘩するほど仲がいいって奴だw」


三つ巴。有兎家では喧嘩が日常茶飯事。そんな中でも多いのが、菜瑚芽と文悟の喧嘩、雅と阿英の喧嘩、そして雅&文悟vs阿英&瑠羽斗vs千流&菜瑚芽の三つ巴の喧嘩。

とは言っても、喧嘩の始まりは大抵菜瑚芽と瑠羽斗と雅。阿英が噛み付くこともあるが。千流と文悟は自分から喧嘩しに行くことはほとんどなく、菜瑚芽と雅に巻き込まれる形の方が多い。ただ、その後ちゃんと喧嘩しだすのだが。


「この子、妹?」

❄️「いや、弟。一年の雅だよ。」

「うぇ〜、かわい」

❄️「でしょ。」

「めっちゃ得意げで笑う」


――


昼休み。クラスの生徒に囲まれている中、1人見覚えのある生徒がいた。

その生徒はぴょんぴょんとジャンプしながら希那のネクタイをひらひらさせる。


「希那センなんかネクタイ物理法則無視してない?」

❄️「えぬちゃんやーめーて」

🍬「やーだーよー」


希那が自分のネクタイを持ちながら抵抗する。そんな会話をしていれば雅の体がふわっと浮き上がる。


🍬「ぎゃあ?!」

「あ!菜瑚芽せんぱぁい!」


片手で雅を持ち上げてすましたような顔をする菜瑚芽の方に男女関わらず生徒が集まっていく。

そして希那の後ろから手が伸びてきてガバッと希那を捕える。


⚔️「ばぁ!」

❄️「びっくりした……なにしてんの」


希那は、どこからともなく現れた雅と瑠羽斗と菜瑚芽の高校生3人に囲まれた。まぁ、雅は菜瑚芽に抱えれられているし、菜瑚芽はさらに生徒に囲まれているものの。


🍄「きな兄一緒にお昼食べよーや」

🍬「あ!僕が先に誘おうと思ってたのに!」

🍄「うるさ。耳元で叫ばんで?」

🍬「じゃあおろせや💢」


本当に一言話せば喧嘩するな、なんて呑気なことを考えながら、希那は菜瑚芽と雅、そして言葉にはしていないものの確実に意図はそうであろう瑠羽斗に向かって言葉をなげかける。


❄️「君らはいつも夜一緒に食べてるんだから、お昼くらい我慢してね。俺は2年の担当だし。」

🍬「え〜……おべんと一緒に食べよーよー」

⚔️「そーそー、いいやん、お弁当はいつも一緒に食べんし。」

❄️「またピクニックとかでもいいでしょ」

🍄「言うたな?!絶対ピクニック行こな!!」

❄️「はいはい……w3人で”仲良く”お昼ご飯食べてきな。」


一言一言ですぐに喧嘩を始める3人に釘を刺すと、自分の受け持つクラスの生徒たちとお弁当の蓋あける。そこには色とりどりのおかずと可愛い装飾が施されていた。


「え〜希那センめっちゃ弁当可愛いw」

「ほんとだ〜、え、誰が作ってんすか?」

❄️「この感じはえぬちゃんだね。さっきの雅。」

「へ〜!あの子がいつも弁当作ってるんですか?!」

❄️「えぬちゃんの時もあれば、泰さんが作ってる時もあるね」

「お父さん?」

❄️「うん、お父さん。」


りんごのような葉っぱの串に刺さったプチトマトを、口に放り、そのまま弟の作った愛情たっぷりの可愛いお弁当を食べ終えた。

これからはほぼ毎日この弁当が食べられる。たまには学食以外の昼ご飯もいいな、と希那は弁当の良さを覚えた。

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