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ライラ からぴち・シクフォニ♡
20
「あっ、なにぃ~?」
まだプンスカしているりゅうせいくんの背中を、ともやがぐいぐい押していく。何気なく「いっちゃん」の方を見ると、キョトンとしていたかと思えば、ジィッといつきくんのことを見つめた。
「……なるほどねぇ」
「……わかっちゃった?」
「りゅうせいに先越されたの、悔しいな」
「……何の話してるん?」
二人でコソコソ何言うてんねん。俺にもわかるように説明してくれ。
「ん、いつきくんのバッグ持ってきた。帰ろうぜ、今日は疲れた」
「……今日、バイト終わったらいっちゃんち行っていい?」
「あ……今日、親二人ともいるけど」
「……じゃあ我慢する」
「ふぅん、えらいじゃん」
おい、お前ら。全然俺の方を見ぃひんやん。
「じゃあな」って、あっさり俺を置いていきやがって。お前らがいなくなったら、俺また一人やねんけど。もう、一人は懲り懲りなんやけど……。
「はぁ……バッグ取りに行こ」
ついでに俺のも持ってきてくれたらええやんか。ほんま、友達とか言うときながらなんやねん。
「おっ、やっと帰ってきた! おかえり!!」
教室に入ったら、やけに機嫌のいいゆうたが俺の席に座っていた。俺のバッグを抱きしめて笑っている。え、俺のことを永遠に探し回って、学校の地縛霊にでもなってしまったんかと思ったのに。
「どうしたん?」
「ん? 一緒に帰ろうと思って」
「それだけ? 一時間以上も待って、もう帰ったとか思わんかったん?」
「うん。りゅうせいくんが『バッグ置いてあるから、ここで待ってたら戻ってくるんじゃね?』って。なるほど!って思ってずっと待ってた」
おいおい、りゅうせいくん! 言うてたこと全然デタラメやんか!
普通に待たせておいて、俺に何のために嘘ついたん? しかも二回やで!? 意味わからんすぎるやろ。
バッグを受け取ると、ゆうたが嬉しそうに立ち上がる。ほんまに犬みたいやな。ちょっと尻尾が見えた気がしたわ。
「……ゆうたさ、いつきくんと二時間、何してたん?」
「え、」
「……ゆうたはいつきくんが好きなん? 日曜はいつきくんとデートしたいからついてきたん? 俺といつきくんが仲ええのが嫌で、いつきくんを奪ったん?」
あかん。話しているうちに腹が立って、ヒートアップしすぎた。流石のゆうたも、ちょっと引いてるやん。
「……違うよ! 全部、違う」
「……じゃあ、どういうことやねん」
落ち着け、俺。一回冷静になれ。いっちゃんだって気持ちを抑えつけて、最後にはいつきくんと仲直りできたんやから。
「……言えない」
なんっなん!? 二人して俺のことバカにしてんの?
結局、二人の間に何かあったから言えへんのやろ。
「……そう。ならええわ」
ため息をつきかけて、なんとか飲み込んだ。
別にええやんか。俺だって、ゆうたが来るのにいつきくんとイチャイチャしようとしてたし、ペアルックだって計画してた。ゆうたのことなんて、これっぽっちも考えてなかったんやから。
「でも!! でも!! しゅうとの誕生日までだよ? それまで秘密なだけだから! 全然しゅうとは気にしなくていいよ?!」
「……あほやなぁ。思いっきり言うてもうてるやんか。そうか……そういうことやったんか」
「え、俺、今、ダメなこと言った??」
俺が不機嫌になったことに焦って、自らネタバレしたことに気づいていない。ほんま、意味わからん子健在やな。
「なんも言うてない。……待っててくれたお礼に、ジュースでも奢るわ」
「え、やった! 俺、金欠なんだよね」
ニコニコ笑いながら言うてるけど、そりゃそうやんな。あんな高いカフェに行って、俺へのプレゼントまで用意してくれたんやから。
「……缶ジュースちゃうで? マクドのやつ奢ったる」
「やった! 放課後デートだ!」
「デ……デートじゃないけどな」
「んふふ、違うんだぁ。じゃあ、ポテトも買ってもらおっと」
「『じゃあ』のポテトの意味わからんけど」
焦った。あんまりにも可愛い顔で笑うから、「デート」なんて言われて顔が熱くなってしまった。俺、相変わらずゆうたの顔面に弱いねんな……。
店に着いて、テイクアウトにするつもりやったのに、ゆうたが嬉しそうに二階へ上がっていくから慌てて追いかけた。
小さなテーブルに男二人、向かい合って座る。ゆうたがいつもの調子で大きな声で楽しそうに話すから、少し離れた席の女子高生たちがこっちを向いてキャッキャと騒ぎだした。
「……ゆうた、声。もうちょっと下げて」
「ん? ごめん、俺、声デカいってよく言われるんだよね」
満面の笑みで俺に笑いかけた瞬間、女子高生たちの方から「キャア~!」と悲鳴に近い声が聞こえた。思わずそっちを見ると、数人の子が口元を押さえて悶絶し、何人かはスマホをこちらに向けている。
そうやった、この顔面。男の俺が見ても「可愛い」と思ってしまうんや。
化粧もしてへんのにはっきりした目鼻立ち、勝手にくるんと上がったまつ毛、透き通るような白い肌、口角の上がった綺麗な唇。女の子が放っておくはずがない。
……まあ、当の本人は全く気づいてへんけど。
「ん? 何か付いてる?」
「……いや。女の子たちが騒いでる」
「ん?」
ゆうたがちらっと彼女たちの方を見て、はにかみながら軽く頭を下げた。
あかんて。女の子たち、泡吹いて気絶するで。
「あとで、謝らないとね」
なんや、キザやな。
「顔面国宝で罪な男に生まれてごめんなさい」ってか。
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