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ライラ からぴち・シクフォニ♡
20
「……別にええんちゃう? 今日しか会わへん人らやし」
「俺が謝りたいんだよ。俺、嬉しすぎて大きな声でうるさくしちゃったから。それに、やっぱりそうだよね。みんな可愛い可愛いって……だって、しゅうとってこんなに可愛いんだもん。みんな、しゅうとと放課後デートしたいよね。わかる」
「……はあ?」
なんなん、こいつ。本気で言うてんの? 自分が悲鳴の元凶であることに気づいてないんか? 「可愛い」って言われてんの、俺ちゃうで? お前やで?
「ん! ポテトおいし~」
「やから、そんな可愛い顔でポテト食うなって」
「……うん」
え、どうしたん? 急に顔赤くしてモジモジしだしたけど。急におちょぼ口でポテトを食べ始めて、笑うしかないんやけど。
「待って、なんで急にそんなことになってんの?」
吹き出しながら聞いても「なんでもない」の一点張り。あからさまに様子がおかしい。
そういえば、さっきまで騒いでいた女子高生たちが急に静かになったな。ちらっと見ると、全員が口を抑えたまま、じっとこっちを見つめている。……いや、怖いわ。何を期待してる顔してんの?
「ちょ、もう出よか?」
「え、うん……」
まだ残っているジュースを掴んで鞄を手に取る。ポテトを慌てて口に詰め込んだゆうたが盛大にむせてしまい、悪いけれど笑ってしまった。
「大丈夫? せかしてごめん」
「ううん、全然。……全部、いい思い出」
「なんやねん、これが最後みたいに」
「……うん、そうだね」
かっわい!! そんな顔、女の子やん! 失恋しそうで無理して笑ってる、女の子の顔やんか!
「あ……駅まで一緒に行く? 向かいのホームやけど」
「うん、行く。何気に学校から一緒に帰んの初めてだよね」
「そうやな。俺、大体いつきくんのバイト先に寄って帰るからな」
「ふふっ、しゅうとはいつきくん大好きだねぇ」
「いや、ゆうたこそいつきくん大好きやろ? 昨日もめっちゃ仲良かったし」
あかん、またこの話を出してもうた。引きずってんのがバレバレやん。ダッサ。いつまでもネチネチと、一番嫌われるやつやん。
「うん、あれね。しゅうと、いつきくんと仲良いなぁって見てたら、いつきくんが教えてくれたんだ。『しゅうとはベタベタしてくる人苦手だから、俺と話して、時々話しかけるくらいが丁度いいんだよ』って。いつきくんすごいよね、本当いつも頼りになるし、大好きだよ」
そう言って、ニコッと笑ってこちらを見たけれど……。
俺の勘違いやなかったら、ゆうた、俺に恋してない? しかもいつきくんは、そんなゆうたの気持ちに早々に気づいてるってこと……?
「……ゆうたってさ」
「ん?」
好きな人おる? って聞いた方がええんか。それとも「好きな人、俺?」の方が手っ取り早いか。……いやいや、それは自惚れすぎや。はっきり「好き」と言われたわけやないし、会話の雰囲気がそうやからって決めつけたらあかん。
もし、そうやったとしてもゆうたのペースがあるんやから。そや、多分誕生日やな。その日に言うてくるに違いない。
「あ……た、誕生日いつ?」
「誕生日? 実はさ、しゅうとの二日前なの。すごくない?」
「え、ほんま!? すごいやん!」
「ね、きっと運命だ」
「……運命」
何の運命か知らんけど、ワードがいちいち恋してて心臓に刺さる。俺もいつきくんに対して、こんな風に見えてるんやろか。俺はフリーやから、素直に好意を寄せられたら嬉しいけど……。いつきくんにとったら、俺の好意もウザくてしゃあないんやろか。
「あ!一緒にお祝いとかしちゃう?」
「お、ええな。いつきくんのバイト先とかええんちゃう?」
「あ、いいかも! 俺、行ったことなくてずっと気になってたんだよね。日曜、いつきくんは休みなんでしょ?」
「うん。それにオーナーええ人やし、ケーキの持ち込みくらいOK出してくれるんちゃう?」
「ほんとに!? じゃあ、俺、めっちゃバイト頑張る!」
それから笑顔で別れたけれど、帰ってから気づいた。
俺は、いつきくんが日曜休みやから、いつきくんを含めた他のメンバーも呼んで誕生日パーティーしよ、ってノリやってんけど……。ゆうたはどうなんやろ。「日曜にいつきくんはいないから、二人でゆっくりお祝いできるね」って意味やったんやろか。
これ、めっちゃ悩むな。どう聞いたらええんやろ。
「……いつきくん、ちょっとええかな?」
「ん、いいよ。なんかあった?」
次の日、朝イチで声をかけた。いつものにやけ顔が、今日はさらにニヤニヤしている。いっちゃんも一瞬ニヤッとしたような気がしたけれど、気のせいやろうか。
「……で、どう思う?」
事の経緯を話すと、いつきくんはさらに口角を上げた。
「ん~……俺的には、二人でいたいんだと思うよ。だってこないだのカフェ、心配になるくらいゆうた、しゅうとのことしか見てなかったよ」
「……やっぱそうよな。ゆうたって、俺のこと好きやと思う? ……その、いつきくんといっちゃんみたいな関係として」
「……愚問でしょ」
「ですよね」
即答。でも、俺としては距離を詰めるには早すぎると思うねん。相手が俺のこと好きって気づいたからって、「俺も好き!」って、そんな簡単に切り替えられるもんやない。
俺にはいつきくんがいるわけで。でもそれは、一生叶わん恋で。
「しゅうとは、どうしたいの?」
いつきくんのその問いに、言葉が詰まった。
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