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ゲームセンターから半ば強引に潔を連れ戻した玲王は、自分の部屋に戻っても落ち着かない。蜂楽が潔の耳元で囁き、潔が肩を跳ねさせていたあの光景が、網膜に焼き付いて離れないのだ。
(……あいつ、耳弱ぇのか?)
そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。
潔はというと、玲王のベッドの端に腰掛け、「まったく、玲王は急に怒り出すんだもんな」と、買ってもらったばかりのスポーツウェアの袖を弄りながら、相変わらずの無防備さで座っている。
玲王はわざと足音を殺して、潔のすぐ隣、肩が触れ合う距離まで距離を詰めた。
「……おい、潔」
「うわっ!? ……っ、びっくりした!!」
至近距離で、それも玲王の少し低く落ち着いた声が鼓膜を震わせた瞬間、潔はまたしても大袈裟なほど身後ずさりをし、耳を塞ぐように首をすくめた。
「…………へぇ」
玲王はその反応に、思わず目を丸くした。
いつもピッチの上では恐れ知らずで、心臓が毛に覆われているような男が、こんな小さな刺激にこれほど露骨な反応を見せるなんて。
「……お前、本当に耳に弱いんだな」
玲王の口角が、無意識に、そして少し意地悪に吊り上がる。
さっきまでの嫉妬が、一気に「独占欲」へと塗り替えられていく。
「……っ、ち、ちげぇよ! 玲王の声が急に近くでするから……!」
潔は赤くなった耳を隠そうとするが、指の間から覗く耳たぶは、熟れた果実のように真っ赤に上気している。
「……じゃあ、もっと近くで喋ったらどうなるんだよ」
玲王は逃がさないように潔の肩を抱き寄せると、今度はわざと、潔の耳の淵に唇が触れるか触れないかの限界の距離で、熱い吐息を吹きかけながら囁いた。
「……昨日あんなに深くキスした時は、気づかなかったぜ。……潔、お前……ここ、めちゃくちゃ熱いぞ?」
「っ、あ……っ……んん、……っ!!」
潔の口から、またあの「甘い声」が漏れる。
ゾクゾクとした刺激が脊髄を走り抜けたのか、潔は玲王の腕の中でふにゃふにゃと力を抜き、その胸元に顔を埋めるようにして丸まった。
「……玲王、……やだ、それ……なんか、変な感じが……脳みそまで溶けそうで……」
弱々しく抵抗する潔の、ふやふやの髪。赤くなった項。
玲王は自分の心臓が、過去最高速度で鼓動を打つのを感じた。
(……可愛すぎるだろ、マジで……!)
「やめねーよ。……お前が、そんな声出すのが悪いんだろ」
玲王は、腕の中で小刻みに震える潔の反応に、ドロリとした独占欲を煽られていた。耳元で囁くだけでこれなら、もっと直接的に「分からせて」やればどうなるのか。
「……逃げんなよ、潔」
「っ、玲王、まって、……くすぐったい……っ!」
潔は顔を真っ赤にして身をよじり、玲王の胸元を押し返して距離を取ろうとする。だが、玲王は空いている方の手で、潔の反対側の側頭部を強引に掴み、自分の肩へと押し付けた。
これによって、潔の片方の耳は玲王の手のひらで完全に塞がれ、逃げ場のない「密閉空間」が出来上がる。
「……あ、……え……?」
「大人しくしてろ。……お返し、まだ足りねーんだろ?」
玲王は潔の耳たぶを唇ではさむと、そのまま熱い舌を耳の穴へと滑り込ませた。
じゅるる……っ、くちゅ、……ぷはっ。
「ひ、あぁっ……!? んんんぅっ!!」
鼓膜に直接響く、生々しい水音。片耳を塞がれているせいで、自分の内側で反響するような「ぐちゅ、じゅるるる……」という湿った音が、潔の脳を直接かき乱す。
「ふ、あ……っ、玲王、だめ……それ、おかっ、……おかしくなる……っ!」
潔は必死に声を抑えようと唇を噛み締めるが、玲王が舌先で耳の淵をなぞり、奥を突くたびに、耐えきれない甘い悲鳴が隙間から漏れ出す。
じゅるぅ……、ちゅぷ、ぐちゅ……。
「ん、んぅ……っ、は、ぁぁ……っ!!」
(……やべぇ。……可愛すぎるだろ、こいつ……!)
玲王は潔の耳を弄りながら、そのあまりの反応の良さに、自分の顔も沸騰しそうなほど真っ赤になっていた。
潔の身体は完全に力が抜け、玲王のシャツを掴む指先が白くなるほど震えている。必死に声を殺そうとして、喉を鳴らし、涙目で玲王を見上げるその表情は、エゴイストの面影など微塵もない。
「……声、漏れてんぞ。……もっと我慢してみろよ」
わざと意地悪に耳元で低く囁き、ふーっと熱い吐息を吹きかける。
「ひ、ぅ……っ、あ、……んぅうう……っ! むり、……玲王、……脳みそ、溶ける、……っ」
じゅるり……、くちゅっ、ちゅる……。
脳内に直接、玲王の舌の動きが響き渡る。潔は視界がチカチカするほどの快感に、ついに白目を剥きそうになりながら、玲王の腕の中に崩れ落ちた。
玲王は、自分の舌と指先が潔にこれほどまでの衝撃を与えているとは、正直思ってもみなかった。
耳元を塞がれた密閉空間で、逃げ場のない官能的な水音が潔の脳内を直接かき乱す。
じゅるるるっ、くちゅ、ちゅぷ……っ。
「ひ、あ、……っ! あああぁっ……!!」
潔の身体が、弓なりに大きく跳ねた。
玲王のシャツを掴んでいた指先が、布を引きちぎらんばかりに食い込む。
「は、……っ、れお、……ま、待って、……まって……っ!」
「待たねーよ。……お前、こんなに熱くなって……」
くちゅっ、じゅるっ、ちゅるるる…ぐちゅぐちゅ…っ
「……あ、あぅっ、だ、め……っ、とまっ、とまって……んあっ! ねぇ、イッちゃ、……イッちゃうっ……!!」
潔の瞳が完全に潤み、焦点が合わなくなる。
ガクガクと膝が震え、太もも同士を擦り合わせるようにして、潔は自分の内側から突き上げてくる未知の快感に抗おうとした。
しかし、玲王がわざとらしく奥を突き、「じゅるりっ」と一段と大きな音を立てた瞬間。
「あ……っ、あああああぁぁぁぁっ!!!」
潔の背中がビクンと大きく反り返り、そのまま玲王の腕の中に崩れ落ちた。
全身の力が抜け、荒い呼吸を繰り返しながら、潔の視界は白く染まっていく。
「…………え? まじで?」
玲王は呆然として、潔の顔を覗き込んだ。
自分はただ、耳を攻めて、少し意地悪をしていただけのつもりだった。まさか、耳への刺激だけで、この「青い監獄」のストライカーがここまで果ててしまうなんて。
「……おい、潔……? お前……大丈夫か?」
「はぁ、……はぁ、……っ、……っ…………」
潔は返事もできないほどに息を乱し、玲王の肩に顔を埋めたまま、ピクピクと指先を震わせている。その顔は耳の先から首筋まで、真っ赤というよりは熱病にかかったような色に染まっていた。
(……耳だけでイッたのかよ。……嘘だろ、感度良すぎだろ……)
潔の身体は、自分でも制御不能な快感の奔流に飲み込まれ、ガクガクと小刻みに震え続けていた。
「イッちゃう」なんて言葉、人生で一度も使ったことはないし、意味だって正確には知らない。けれど、脳が焼き切れるような衝撃の中で、その言葉が本能的に口からこぼれ落ちていた。
「はぁ、……はぁっ、……っ…………う、……ぅあ……」
視界が白く霞み、呼吸の仕方も忘れたような感覚。初めて味わう「抗えない快感」は、潔にとって快楽というよりも、自分の境界線が壊されるような恐怖に近かった。
「…………ひっ、……ふ、……っ、……」
潔の大きな瞳から、ぽろりと大粒の涙が零れ落ちた。
情けなくて、怖くて、でも熱くて。ぐちゃぐちゃになった感情が、涙となって止まらなくなる。
「…………っ!? おい、潔!?」
それまで独占欲に溺れていた玲王は、潔の涙を見た瞬間、心臓が凍りつくような衝撃を受けた。
「え、まじで……? やりすぎた……っ!?」
真っ赤だった玲王の顔が、今度は真っ青になる。
嫌いなはずだった。凪を奪ったアイツを困らせてやるつもりだった。なのに、泣きじゃくる潔を目の当たりにした瞬間、玲王の中の全細胞が「この人を守れ」と悲鳴を上げた。
「ごめん! 悪かった、潔! 痛かったか!? 怖かったよな、ごめん……っ!!」
玲王はパニックになりながら、潔を壊れ物を扱うように、ぎゅっと、でも痛くないように優しく抱きしめた。
「……う、……ぅ……玲王、……なんか、おかしくなった、……こわい……っ」
「大丈夫だ、どこもおかしくなってねーよ! 俺が悪かった、俺が全部悪い! ……よしよし、な?」
玲王は潔の背中を大きな手で何度もさすり、ふやふやの髪を撫で、あやすように声をかけ続ける。
あの傲慢な御曹司が、今や拝むような手つきで潔の涙を指で拭い、濡れた耳元を自分のシャツの袖で丁寧に拭き取っている。
「……潔、水飲むか? それとも甘いもん食うか? 布団、もっと柔らかいやつ持ってくるからな。あ、温度……部屋の温度暑いか?」
お世話し始めた玲王の動きは、もはや執事か聖母のようだった。
ベッドに潔を横たえ、高級な毛布を顎までかけ、自分は床に膝をついて潔の手を握る。
「……ごめん。……可愛すぎて、つい……加減間違えた」
玲王は、まだ涙の跡が残る潔の頬を見て、胸が締め付けられるような愛おしさに支配されていた。
もう「恨み」なんて、どこを探しても一欠片も残っていない。
あるのは、自分の腕の中で泣き止み、ようやく呼吸を整え始めたこの「無自覚な怪物」を、一生お世話してやりたいという重すぎる献身だけだ。
「……玲王、もう……あのお返し、やだ……」
「わかった! もう無理強いはしねーよ。……でも、そばにはいさせてくれ。……な?」
玲王は真っ赤な顔をして、潔の手の甲に誓いを立てるように、そっと唇を寄せた。
その様子は、かつての王子様というよりも、愛する主にすべてを捧げる騎士のようだった。