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#現代
ぽたお
198
猫塚ルイ

9,478
122
マサシを振ったあと、私はしばらく考えていた。どうやって、彼を苦しめようか。
翔太を“ゴミ”呼ばわりしたあの瞬間、私はマサシを“いらない子”と判断した。
だから、壊すつもりだった。翔太を守るために。
でも、最悪な展開が起きた。
マサシが、翔太に近づいた。そして──友達になってしまった。
理由は分かる。諦めきれないのだろう。私を、まだ。
でも、そんなことはどうでもいい。
翔太がマサシと仲良くなることが、私にとっては最悪だった。
マサシを苦しめることができない。翔太が悲しむから。私は、胸の奥が冷たくなるのを感じた。
「栞里! 紹介するよ! 僕の友達第二号のマサシ!」
「どうも。始めまして。ハイスペのマサシでーす!」
「……どうも。」
笑顔の翔太。
作り笑いのマサシ。
無表情の私。
この三人の距離感が、私には“歪んだ三角形”に見えた。
仕方がない。翔太が嬉しそうにしている以上、
私はマサシを壊せない。
でも──もしマサシが翔太を傷つけるなら。その時は、私は迷わない。
だから私は動いた。
マサシの弱みを握るための情報を集める。
女友達。先輩。私に気がある異性。そして探偵。
使えるものは全部使った。翔太を守るためなら、私はどこまでも冷静になれる。
半年かかった。でもついに──手に入れた。
マサシのお父さんの情報。これで翔太を守れる。これで“いらない子”を罰せる。
私は、静かに息を吐いた。
光を守るためなら、私はどんな影にも手を伸ばす。
そう決めた矢先だった。
二年生に上がったばかりの頃。授業の合間にトイレへ向かった時──男子トイレの中から声が聞こえた。
同じクラスのタケル君と、一年生の山田君。
聞くつもりはなかった。でも、耳が勝手に拾ってしまった。
「まじでさ。何であの使えない翔太なんかに、あんな可愛い栞里ちゃんが付いてるわけ? あとマサシもか。」
「先輩、中学の時は1番イケメンでモテてたのにね〜」
「あ? 今もモテてるわ! つーかさ、ムシャクシャするんだよな。俺より目立つあの翔太。まじ家凸して不登校にしてやろうかな。」
「まじっすか!? 楽しそう!翔太先輩、何も考えてないし俺でも勝てそう!」
……ああ、ムカつく。
胸の奥が、じわりと熱くなる。怒りというより、もっと冷たいもの。
タケル君も、山田君も。あなたたちが翔太を壊すつもりなら──
逆に、私があなたたちを不登校にしてあげる。
私には“友達”がいる。
“先輩”もいる。
“私に気がある人”もいる。
全部利用するの。だって翔太を守るためだもの。
最近、よくイライラする。でも翔太には絶対に見せられない。
小さく呟いた。
「タケル、山田……許さない。」
その瞬間。
「ん? どうしたの? タケル君、山田君? 許さない? なんで?」
──まずい。翔太に聞かれた。
振り返ると、翔太が不思議そうに首を傾げていた。
私は慌てて言った。
「翔太は気にしなくていいの!」
少し不満げな顔。でも、それでいい。
それから少し経った頃──事件は起きた。
タケルが家出をして、行方不明になった。
最初に聞いた時、私はただ首を傾げた。
私はまだ何もしていない。どうして?
でも、もし私の手を汚さなくて済むのなら……
それはそれでいいのかもしれない。
そして、タケルの訃報が届いた。
正直、驚いた。ニュースでも見た。
“連続殺人鬼の仕業かもしれない”と。
教室中がざわつく中、私は翔太へ目線を向けていた。
もし翔太が襲われたら──。
その想像だけで、手が震えた。
だから私は先生に聞いた。
「先生! それって……昨日のニュースの、まだ見つかっていない犯人が……」
声が震えていたのは、恐怖のせいか、それとも別の感情のせいか。
もし本当に殺人鬼の仕業なら……私は少しだけ思った。
“いらない子が勝手に消えてくれるなら、それでもいい”
あとは翔太を守ればいい。それだけ。
放課後、マサシが足早に教室を出た。
その背中を見た瞬間、胸の奥に小さな違和感が走った。
もし、犯人がマサシなら……。
でもまだ確証はない。焦る必要もない。
ただ、観察すればいい。
それからマサシは不登校になった。
嬉しかった。
このまま“いらない子”たちが順番に消えてくれれば──私は何もしなくて済む。
そして嬉しいことに、山田も死んでくれた。
理由は分からない。でも私は、胸の奥で小さく呟いた。
“ありがとう、犯人さん”
翔太を傷つける影が、勝手に消えていく。
コメント
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第7話、読ませていただきました…!栞里の“翔太を守るためなら何だってする”という歪んだ献身が、じわじわと怖くて、でも目が離せなかったです。特に最後の「ありがとう、犯人さん」の一文が衝撃的で、彼女の無自覚な闇が一気に表面化した気がしました。マサシの影も気になりますし、この後の事件の真相がますます気になります…!