テラーノベル
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美術部の部室へ向かうために翔太を探したけれど、どこにもいなかった。
そういえば──今朝、翔太は言っていた。
「マサシにノート渡しに行く」
まさか。私は走った。部長に確認するために。
「ああ、翔太君? お腹痛くてトイレにこもってるよー」
……うん、嘘だ。
翔太はまた変なことを覚えた。私が教えていない“嘘”を。
どこで?
誰から?
私はマサシの家へ向かった。
玄関の近くで足を止め、そっと耳を澄ませた。
やっぱり、翔太はいた。
そして──マサシのお母さんと話している声が聞こえた。
「最近、夜に外へ出るようになって……」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが静かに繋がった。
これ、使える。
マサシを“連続殺人鬼”に仕立て上げれば、いらない子たちは全部消える。
私は思った。
これはとても残酷で、とても美しい作戦だ。
その日のうちに、私は警察へ“誤情報”を伝えた。
タケル君の件があってから、私は何度か“匿名で”警察に情報を送っていた。事情聴取で顔を合わせた警察官もいたから、私の声を覚えているかもしれない。
だから今回も、少し震える声で話せば信じてもらえる自信があった。
「最近、夜に出歩いてる人がいて……マサシ君って言うんですけど……ちょっと怖くて……。
それに、友達に手をあげたこともあって……もしかしたら、関係あるのかもって……」
連続殺人の犯人が見つからず、警察は明らかに焦っていた。だから、私の言葉にもすぐ反応した。
「それに……明日の夜、公園に来いって言われたんです。もし彼が犯人なら……私、殺されるかもしれません……。だから……明日、公園に来て欲しいんです……」
これでいい。
きっとこれからも私は翔太を守り、一緒に生きていける。
大好きだよ……翔太。
私はもう、戻れない。
翔太の世界を守るためなら、
私はどんな嘘でもつく。
どんな人でも疑う。
どんな人でも利用する。
そして──どんな罪でも、迷わず背負える。
だって、翔太は光だから。私が守らなきゃいけない、たったひとつの光。
その光が笑ってくれるなら、私はどれだけでも暗闇に沈める。
ありがとう、犯人さん。あなたのおかげで、翔太の世界は少し綺麗になったよ。
私は警察に情報を伝えたあと、静かに家へ帰った。明日の夜、翔太には絶対に来ないように伝えた。
だって──友達だと思っていたマサシが捕まるなんて、翔太はきっとショックだから。
翔太は優しい。だから、守らなきゃいけない。
布団に入ってから、少しだけ考えた。
もし殺人鬼がマサシじゃないと分かったら、警察に怒られるかな?
いや、でも大丈夫。
私はただの女子学生。か弱くて、いつも不安でいっぱいで、混乱して“勘違い”しただけ。
私は被害者。この筋書きでいい。
「明日の夜、全てが終わり、また始まる」
そう呟いて眠った。午後までぐっすり眠れた。
多分、人生で一番よく眠れた。
そして夜。
私は少し早く公園に向かった。街灯の下、風が冷たくて心地よかった。
しばらくすると、マサシがやってきた。
「栞里〜。少し冷静になったか? 俺が連続殺人鬼なんておかしいだろ? それにもっとよく俺を見ろよ。翔太よりも魅力的だろー!」
……やっぱり。ちゃんと壊れてる。安心した。
私はゆっくりとマサシを見た。
「言ったよね? あなたは犯人。あなたは終わってるの。」
「は? 何言って──」
「魅力なんてない。犯人として残りの人生を過ごしてくれたら……手紙くらい書いてあげてもいいわよ?」
マサシの顔から血の気が引いた。
……うん、いい反応。警察の人もちゃんと隠れてる。ああ、私すごい。
#現代
ぽたお
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猫塚ルイ

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私はゆっくりと息を吸った。
「あのね、翔太の魅力、教えてあげる。」
「は? 今それ関係あるかよ!」
「あるよ。翔太はね──私をちゃんと見てくれるの。」
「俺の方が見てるだろ!!」
私はマサシを冷たい目で見た。本当に、氷みたいに冷たく。
「何を?私の“顔”だけでしょ? “物”として見てるでしょ?」
「……っ!」
「違うの。翔太はね、私の中身を見て、尊敬してくれてるの。」
「尊敬!? あいつが!? バカじゃねぇのか!」
「あとね、顔も好きだわ。どの俳優よりもかっこいい。声も好き。あれ? 全部好き。」
「あ、あ!! やめろよ!! おかしくなる……!」
私は首を傾げた。
「もうおかしいでしょ? あなたは。」
「はぁ……はぁ……はぁ……何なんだよ……お前……!」
「わがままな子供ね。」
「黙れよ!!」
声が裏返っていた。怒りでも、悲しみでもない。壊れた音だった。
ああ、これでいい。これで“犯人”が完成する。
マサシの顔は真っ青で、唇だけが震えていた。
「おおおおおい!! 栞里、最後のチャンス……。本当に俺とは無理なのか?」
私はゆっくりと首を振った。
「無理。翔太を傷つける人はみんな要らないの。
だからあなたも要らない。」
その瞬間、私は気づいた。
──翔太がいる。
街灯の影の向こう。木の陰に隠れて、こちらをじっと見ている。本当に隠れるのも下手ね。
来るなと言ったのに。どうして?
……ああ、そうか。私を心配して来たんだ。
本当に可愛い。それなら──もっとカッコいいところ、見せないとね。
「ねぇ、マサシ。あなたのお父さん……不倫してるんだよね?」
それから私は隠し持っていたマサシのお父さんの不倫、マザコンである事を話した。
マサシの呼吸が荒くなる。肩が震えて、目が血走っていく。
見てる? 翔太。私、名探偵みたいでしょ?
次の瞬間。
マサシがポケットからナイフを取り出した。
そして──私の腕に熱い線が走った。
切られた。
マサシが私に覆いかぶさってくる。
重い。息が荒い。汗と涙と怒りの匂い。
でも私は、嬉しくてたまらなかった。
やった。これでいい。もっと。もっと壊れなさい。
その瞬間、茂みの奥で気配が動いた。まだだよ、警察の人。
もう少しだけ壊れる音を聞かせて。
コメント
1件
第8話、めちゃくちゃ重くて美しかった……。栞里の「翔太は光だから、私が守らなきゃ」っていう歪んだ愛、怖いのに共感しそうになったわ。マサシを追い詰めるために自分の腕まで切らせる狂気、計算され尽くしてる。翔太が木陰で見てるシーンでゾッとした。次が気になりすぎる🔥