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家に着くと、元貴は何も言わずソファーに沈み込んだ。さっきまで抱えていた力が、一気に抜けたみたいだった。
涼ちゃんは元貴が買った薬の箱を一つ手に取る。
「……なんだこれ?」
箱を回して、裏を見る。
成分、効能、注意書き。
一つ見終わって、また別の箱。
「……これも違うし」
「これも耳関係ない」
全部見終わったあと、涼ちゃんは小さく息を吐いて、元貴の方を見る。
「元貴さ」
少しだけ笑って言う。
「何買ってるんだよ、笑」
その声に、元貴が顔を上げる。
「……笑」
乾いた、短い笑い。
「だよな……」
自分でもおかしいと思ってる、
でも笑うしかない、そんな声だった。
若井はそのやり取りを黙って見ている。
涼ちゃんは薬の箱をまとめて端に寄せる。
「これは俺が預かっとく」
「ちゃんと処方されたやつだけでいいから」
元貴は、ゆっくり頷いた。
「……うん」
そのあと、しばらく誰も喋らなかった。
でもさっきまでの張り詰めた空気は、少しだけ和らいでいた。
元貴はソファーの背にもたれて、目を閉じる。
「……疲れた」
涼ちゃんが言う。
「おつかれ」