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審問場を揺るがしたあの真実の告白から、数ヶ月。
王宮を覆っていた陰謀の霧は晴れ、第一皇子派の不正は暴かれた。
レオ様は自らの潔白を証明しただけでなく
没落公卿を救い
腐敗した貴族社会に切り込んだ「真の英雄」として、国民から圧倒的な支持を受けることとなった。
そして今日。
次期皇帝への即位を間近に控えたレオ様の公邸で、私たちは二人きりの時間を過ごしていた。
「……これ、新しい契約書だよ。署名してくれるかな?」
バルコニーから差し込む柔らかな陽光の中
レオ様が悪戯っぽく笑いながら差し出してきたのは
あの日と同じ、金縁の羊皮紙だった。
けれど、そこに記されている文字は、以前のような冷徹な条項ではない。
『一、レオ・フォン・ホーエンツォレルンは、生涯をかけてローラ・ハルデンベルクを愛し、守り抜くこと』
『二、報酬は、彼女の隣で過ごす永遠の時間とする』
「レオ様……これは……」
「今度はビジネスじゃない。……いや、僕の人生すべてを賭けた、一生ものの『商談』だ。受けてくれるかい?」
差し出されたペンを受け取ろうとした私の手を
彼は優しく、けれど逃がさないという強い意志を込めて包み込んだ。
あの日、借金のために震える指で署名した私。
今はもう、その指に迷いはない。
私は一気に自分の名前を書き入れると、顔を上げて彼を見つめた。
「……条件があります、レオ様」
「なんだい? 借金の追加かな、それとも新しいドレス?」
「いいえ。……二度と、私を突き放すような『嘘』はつかないこと。そして、二人きりの時は、あの『陽だまりの皇子』の仮面を脱いで、私だけのレオ様でいてくださいませんか…?」
私の言葉に、レオ様は一瞬だけ驚いたように目を見開いた。
瞬間
彼は人懐っこい笑顔という武装を完全に解き、切ないほどに深い愛着と
隠しきれない独占欲が混ざり合った、剥き出しの瞳で私を捉えた。
「……困ったな。君の前では、もう最初から負け続きだ」
彼は私の腰をぐいと引き寄せ、折れそうなほど強く抱きしめた。
鼻をくすぐる、あの清潔なシトラスの香り。
けれど今は、その奥に彼自身の熱い体温が混ざり合っている。
「愛しているよ、ローラ。……ビジネスでも、演技でもない。僕の心臓は、あの日君に署名させた瞬間から、もう君のものだったんだ」
耳元で囁かれる、震えるほど甘い告白。
レオ様は私の頬に、まるでお宝でも扱うような手つきで
優しく、深く、熱いキスを落とした。
周囲の喧騒も、王位を巡る争いも、今は遠い世界の出来事のよう。
私の心臓は、あの日と同じように激しく鳴り響いている。
けれどそれは、もう「刺激が強すぎる」という戸惑いではなく
彼と同じリズムを刻む、確かな愛の鼓動だった。
「……私も、愛しています」
契約から始まった二人の物語は、今、終わりを告げた。
ここから始まるのは、嘘も演技も必要のない、永遠に続く真実の恋煩い
私たちはもう一度、深く、誓いの口づけを交わした。