◻︎街コン
集合時間の15分前には到着した。時間厳守の癖は、こんな時少し煩わしい。
周囲には、私より一回りくらい若そうな男女が数人いて、もういくつかのグループが出来上がっているようだ。
_____やっぱり、年齢的に無理があったのかな?
でもまぁ、何もしないで待っていても何も変わらないし、いい時間潰しくらいにはなるだろう。
リュックからペットボトルを出し、喉を潤す。今日はきっと、夜のビールが美味しいだろうなと想像する。
「…あ、あのぉ…」
後ろから話しかけられた。
「はい?」
20代半ばくらいの女の子二人が、スマホを持って立っていた。
「バスの席って、決められているんですか?」
「え?さぁ、わからないけど」
答える私の服装を上から下まで、キッチリと見定める。
「失礼ですけど、担当の係員の方?ですよ…ね?」
「えっ、あ、いえ、参加者です」
「そうなんですか!それは、あの、すみませんでした!」
謝りながら、向こうへ走り去ってしまった。走りながらこちらを振り返って、二人で何かを話している。
_____係員に見えたの?私
なんだか納得いかないけど。
「あ、あの…」
また誰かが声をかけてきた。
「はい?私は係員じゃないですよーと」
答えながら振り返ったら、同年代か少し上の男性が立っていた。
「ですよね?」
「は?」
「係員じゃなくて、参加者の方ですよね?」
「はぁ、まぁ…、で何か?」
「よかったぁ、周りを見渡したら若い人ばかりだったので。落ち着いた雰囲気のあなたを見つけた時、ホッとしたんですよ。僕、三木優といいます。参加者です、よろしくお願いします」
_____落ち着いた?老けてるということか?だよねー
なんて答えようか、しばらく考えていた。その時、「あのぉ、係員の方ですか?」
と話しかけられたのは、今度はその男性だった。
「違いますよ、参加者です」
「あ、ごめんなさーい」
「ぷっ!くくくっ!」
思わず笑いが出た。私と同じように、係員と間違われたその男性に親近感が湧いた。
「え、何かおかしかったですか?」
「いえいえ、私もさっき、係員と間違えられてしまったので。よく見たら、私たち、服装も雰囲気も似てますね」
キャップに、ジーンズにスニーカーにリュック。色合いも着こなしも、まるで夫婦のように似ていた。
「ホントですね」
「挨拶が遅れました、私は森下茜といいます。よろしくお願いします」
「そろそろ時間ですね、バスへ行きましょう」
同年代もいて、少しホッとしたけど時間を確認する腕時計をしたその左手には、薬指に指輪があった。
_____ん?既婚者?何故?
少し離れたところで、LINE交換のために女子を集めてしまっている背の高い男がいたことには、全く興味がなかった。
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