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蘭太を退けた翌日、福岡分校の奨也たちは、修繕作業の進む校舎で次なる戦いに備えていた。しかし、空気の張り詰め方が尋常ではなかった。校庭の地面が不自然に震え始めたからだ。
「また本家が仕掛けてきたか…」奨也はハンドスピナーを回しながら、校庭の中央に視線を向けた。
その時、地面が突如として盛り上がり、土埃とともに巨大な岩の腕が姿を現した。
「奨也、出てこい。俺が禪院家の力の真髄を見せてやる。」
声の主は、禪院長寿郎(ちょうじゅろう)。長寿郎は本家の一族で、地面や建物を利用して巨大な岩の腕を生成し、それを自在に操る術式の使い手だ。彼は禪院家の中でも「破壊の象徴」として恐れられていた。
「お前が本家の意志に背いた禪院奨也か。噂以上の腕前と聞いているが…俺が確かめてやる!」
奨也はその圧倒的な存在感を前にしても動じることなく、ハンドスピナーを回し続けた。
「わざわざこんな派手に登場しなくても、俺は逃げやしないよ。」
長寿郎は嘲笑いながら岩の腕を動かし、奨也に向けて振り下ろした。その腕は校庭を一瞬でえぐり取り、砂煙を巻き起こす。
奨也は直撃を回避し、術式を発動させる準備を整えた。ハンドスピナーを高速で回転させることで空気中の分子を攪拌し、気体の流れを操作する。
「そんな鈍重な攻撃が通じると思っているのか?」奨也はすれ違いざまに岩の腕を気化させ、その一部を霧状に変えた。
「ほう、触れたものを気体にする術式か。だが、俺の岩は無限に再生する。」
長寿郎が地面に手を突くと、次々に新たな岩の腕が出現した。それらは奨也を取り囲むように動き、逃げ場を失わせていく。
「再生能力があっても、その再生の瞬間を利用すれば…!」奨也は自身の術式をさらに高め、気体化した岩を急速に冷却して固体に戻した。それによって岩の再生サイクルを逆転させ、長寿郎の術式のペースを乱すことに成功した。
「くっ、やりおるな!」長寿郎は動揺しながらも次々と岩の腕を繰り出した。しかし、奨也はその動きを読んで巧みに回避し続けた。
最終的に、奨也は気体化した岩を圧縮し、長寿郎の周囲に封じ込めた。
「これで終わりだ。」奨也が冷静に言うと、圧縮された気体が一気に爆発し、長寿郎を包み込んだ。
戦いが終わり、傷ついた長寿郎は苦しげに息を吐いた。
「お前の力、侮っていた…。だが、この程度で本家を潰せると思うな。」
奨也は彼を見下ろしながら答えた。
「俺が目指しているのは、本家の破壊じゃない。禪院家の腐敗を正すことだ。」
長寿郎は奨也の言葉を聞き、うっすらと笑みを浮かべながら気を失った。