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数ヶ月前、俺は異世界転移をした。今は15歳で、学園に通っている。
この世界に飛ばされた翌日に気づいたのは、ここは元の世界で流行っていたBLゲーム『ときめきラブリー』というなんとも可愛らしい名前のゲームだ。パッケージもピンクだしぱっと見は乙女ゲーム。ヲタクたちの間では“ときラブ”と呼ばれていた。俺はプレイしていなかったが妹が大画面に映し出して堂々とやっていたので内容もキャラも大体知っていた。
主人公は美しい白銀髪の男の子。名前はクリソン。この世界では稀な聖魔法をもっている。とても可愛らしい顔で、周りの男をみんな魅了する。
転移するならそういうキャラだと思うだろ?俺悪役なんだよ!桃色髪のマッシュな男の子。名前はサファ。二重で切れ長な目、まつ毛は長いし小顔だし、手足も長い。まるでアイドルみたいな見た目だ。主人公とは正反対だ。しかも『動物と心を通わせ、仲間にする』という魔法と言えるのかも微妙な魔法だ。“仲間にする”って言い方がもう悪役感滲み出てる。普通“仲良くなれる”とかだろ。
まぁとにかく俺は悪役なのでいつかは死刑になる。たしか記憶では20歳になったら主人公の殺人未遂で死刑だった気がする。実際は何もしてないが罪を着させられて悪役に仕立てられたのだ。
因みに主人公の選択により死刑が回避されるルートもある。死刑が回避されたサファは怒りで魔力を暴走させてしまうのだ。悪役予備軍だったのが悪役になってしまうのだ。それも全て阻止すべく主人公とは距離をとっている。
主人公は今頃ハーレムを築いているだろう。
攻略対象は第一王子のハビィ、宰相のご子息のリン、騎士団団長のローン。みんな変な名前なのでよく覚えている。
一応うちは公爵家で、王家に使えているので王族とも距離が近く、話すことも少なくない。
窓際で外で行われている魔法学の実習の様子を見ていると、後ろから高くて優しい声がした。
「サファ、今日うちでお茶しない?話したいことがあるんだ。」
その声にゆっくり振り返ると、困ったように眉を下げたクリソンがいた。
「話って?」
ジッとクリソンを見つめると、クリソンは首を横に振った。
「ここじゃ話せないんだ。」
彼の家も公爵家で、領主同士が仲が悪い。意外にも子供同士でも関わるなとは言われなかった。ただクリソンの父や母には関わるなと言われた。
「…わかった。放課後また声かけて。」
困っている奴は放って置けないタチでつい頷いてしまった。でもこれ以上は関わらない。そう自分に言い聞かせた。