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#ロマンスファンタジー
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「まだ会議中のことを怒っていらっしゃるの?」
「当たり前だ!」
「ふふっ。それでしたら、お好きなだけお説教なさったら?」
「お前という女は……!」
――それから、しばらくして。
***
「……ソフィア」
「はい?」
「……もう少し、このままでいろ」
カイル殿下は、私の手を握りしめたまま離そうとしなかった。
(……本当に、面倒くさい人)
そう思うのに、時折どこか可愛いと思ってしまう。 威嚇して吠えるくせに、結局は尻尾を振って懐いてくるワンちゃんみたいで。
「よしよし」と心の中で呟きながら、彼の前髪を手ぐしですいて撫でてあげる。 カイル殿下が深いまどろみへと落ちたのを見計らい、私はソファを抜け出した。
背もたれに掛けられていた彼の軍服の上着を勝手に拝借する。 肩から羽織ってみれば、当然ながらダボダボで袖なんて指先まですっぽり隠れてしまう。
(まあ、いいわ)
(今は、あの光の正体と――宝物庫の追跡魔法を解除する方法よ!)
執務室の奥にある扉を、そっと開ける。 その先に広がるのは、『皇族専用図書室』。
(よし。作戦開始!)
これまでアンナには首都の図書館を調べてもらい、私は皇宮の一般図書室を片っ端から探してきた。 けれど――。
『聖女の涙が、枯れた森を蘇らせた』
初代皇妃は、緑の光で災厄を退けた』
出てくるのは、そんな子供騙しの童話や神話ばかり。
(これじゃただのファンタジーよ! 知りたいのは、この力が高飛び計画に使えるかどうかよ!!)
残る未踏の地は、ここだけ。
(もともと何かしら理由をつけて、入るつもりだったけど……)
まさかカイル殿下の方から連れてきてくれるとは。
(お説教のおかげで計画が早まってラッキー♡)
ぶかぶかの服の袖を捲り上げ、書棚を探していく。
「魔法……魔力……古代術式……」
一冊。二冊。三冊。
「違う……これも違うわ……」
そして――。
「……あったわ。多分これね」
棚の奥から、一冊の古びた魔導書を引き抜いた。
『魔力は原則として皇族の血に宿り、その色は魂の性質によって決まる』
(ここまでは、ゲームの設定通りね)
さらに読み進める。
『魔力は生来備わるものであり、遅くとも成人までには発現するとされる』
(つまり18歳まで……)
私は自分の手のひらを見つめた。あれから何度試しても――あの光は一度も出ていない。
(じゃあ、宝物庫のあれは何だったのよ……?)
さらにページをめくる。
『治癒と浄化を司る魔力は、“聖力”と呼ばれる』
(……やっぱり)
聖女シェリーの光は若草色。私の光は――瞳と同じ、鮮やかなエメラルドグリーン。
(同じ系統? それとも別物?)
(まあいいわ。呪いを浄化できるなら、お宝には使えるかも♡)
期待を込めて、次のページをめくる。
――だが。
『ただし、聖力では追跡術式を解除することはできない』
(……はぁっ!?)
『解除には、大魔導士あるいは同等以上の術者を要する』
(ちょっと待ちなさいよ!)
(呪いは消せても、異世界版GPSは残るってこと!?)
お宝を持ち出した瞬間、現在地は筒抜け。
国外へ高飛び。海辺の豪邸で悠々自適の隠居生活。完璧だった未来予想図に、大きなヒビが入った。
「まだ諦めないわ……!」
さらにページをめくる。
『なお、大魔導士が本国へ戻るのは三年に一度の巡回時に限られる』
「さ、三年!?」
「その間に私はシナリオ通り処刑台へ一直線じゃないの!!」
――完全に詰んだ。
バタンッ! と魔導書を閉じた。
(使えない力は、いったん保留!)
(お宝が持ち出せないなら――作戦変更!)
(別の方法で逃亡資金を作ればいいのよ!)
歯噛みしながら、羽織っていた上着の裾を強く握りしめた。その時だった。
「俺の上着を着て――そんなに熱心に、何を調べている?」
「っ!?」
背後から響いた声に、心臓が跳ね上がった。
振り返ると――。 そこには、いつの間にか目を覚ましたカイル殿下が、腕を組んで立っていた。その視線は――私の手にある魔導書へまっすぐ注がれていた。
コメント
1件
うわあ、ソフィアの計画がまさかの大誤算…!「追跡魔法は解除できない」ってオチ、めっちゃ痛いですね。でもそこで現物資産以外の方法を考え始める柔軟さ、さすがだなあ。カイル殿下に背後取られたラストの緊張感も最高でした。伏線の張り方、巧いです。