テラーノベル
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空が茜色から群青へと変わり始めた頃、校舎のあちこちに灯りがともる。
昼間とはまた違った賑やかさが、学校中を包み込んでいく。
――後夜祭の始まりだった。
中庭には色とりどりの照明が飾られ、生徒達の笑い声が夜空へと弾んでいる。
その喧騒から少し離れた場所。
そこには家庭科室で仲直りを果たした目黒と制服に着替え終えた宮舘の姿。
先程までの緊迫した雰囲気とは違い、ふわふわとした穏やかな時間を過ごしている。
そして、好感度が70%を超えた目黒の宮舘に対する態度は明らかに変わっていた。
🖤「舘さん、こっち」
人混みの中でも自然と宮舘の隣を陣取る。
少しでも離れれば、すぐに距離を詰める。
宮舘の肩に寄り添い、自然に隣を歩く。
時には腰へと大きな腕を回して、グッと自分の方へ引き寄せる。
恋人のフリを始めた頃は、周囲に見せつけるためにわざとしていた行動。
しかし、周囲が落ち着いてからは全くしなくなった行動でもあった。
❤️「目黒……ちょっと近くない?」
🖤「そう?」
❤️「そうだよ」
🖤「でも、舘さんがここにいるから」
悪びれもせずに言って、目黒は楽しそうに笑った。
その顔を見てしまえば、宮舘も強くは言えない。
むしろ、そんなふうに自分を求めてもらえることが嬉しくて、頬が緩んでしまう。
🩷「涼太ー!」
遠くから佐久間が駆け寄って来ると目黒の表情が、スッと変わった。
🖤「…………」
無言での視線は、恐ろしく鋭い。
まるで、自分の大切なものに近付こうとする相手を警戒する獣のようだった。
❤️「……目黒?」
🖤「……なに、舘さん?」
❤️「いや、……顔が怖いよ」
#めめだて
雪月❄️
398
クリオネ?
100
🖤「そうかな?」
そう言いながらも、宮舘の腰に回された腕には、ほんの少し力がこもる。
そして佐久間が近付いてくれば、近付いてくる程、その視線は鋭くなっていった。
🩷「涼太!さっきの劇、めっちゃ――」
🖤「……」
🩷「あれぇ?なんか怖くなぁ〜い?」
🖤「……気のせいじゃないっすか?」
宮舘は苦笑するしかなかった。
❤️「(……佐久間、何も悪いことしてないのに)」
舞台の上で王子様役だった佐久間に対する警戒心は、どうやら格別らしい。
そんな目黒の変化すら、今の宮舘には少しだけ嬉しかった。
――自分のことを、大切に思ってくれている。
それが、何より嬉しかった。
***
やがて、中庭に優しい街灯が灯り始めた。
中央では生徒達が大きな輪を作り、フォークダンスの準備を始めている。
「じゃあ、そろそろフォークダンス始めまーす!」
宮舘が目を輝かせる一方で、目黒は露骨に嫌そうな顔をした。
🖤「……他の人と踊るなんて嫌だよ」
❤️「ふふっ。でも、せっかくだから。俺は参加してみたいな」
宮舘が少し甘えるように言うと、目黒は困ったように眉を下げた。
🖤「……舘さん、そういう言い方ずるい」
❤️「え?」
🖤「……断れないじゃん」
小さく息を吐いて、目黒は宮舘の手を取った。
🖤「……最初と最後は俺と一緒に踊ってよ」
❤️「うん」
🖤「約束ね?」
❤️「うん、約束」
その言葉に、目黒は漸く笑った。
音楽が鳴り響くと、最初のパートは約束通り、目黒と踊った。
繋いだ手から伝わってくる温もり。
少し照れくさそうに笑う目黒。
その姿を見ているだけで、宮舘の胸は自然と弾んだ。
曲が一区切りすると、決められた通りにパートナーが入れ替わっていく。
男子生徒。
女子生徒。
また男子生徒。
次々と相手を変えながら、宮舘も笑顔でステップを踏んでいった。
❤️「(あと3人くらいと踊ったら、また目黒と踊れるかな…?)
そう思うと、自然と頬が緩む。
次の相手を待ちながら、宮舘は楽しそうに周囲を見渡していた。
ーーその時。
宮舘の目の前に1人の女子生徒が進んできた。
「…………」
彼女は笑っていなかった。
むしろ、ぞっとするほど冷たい目で、宮舘を真っ直ぐに見つめている。
❤️「(……なに?)」
しかし宮舘は気のせいかと思い、戸惑いながら手を差し出した。
――ギュッ!
❤️「……っ!」
触れた手を、強く握られた。
あまりにも強い力で手が痛み、宮舘の顔が歪む。
❤️「……っ、い……!」
思わず声を上げそうになった瞬間、女子生徒が宮舘の耳元へ顔を寄せた。
「……欠陥の分際で、調子に乗んな」
❤️「……え?」
低く冷たい声にぞくり、と背筋を冷たいものが走り抜けた。
宮舘が顔を上げた時には、彼女はもう離れていた。
何事もなかったかのように、ダンスの流れから不自然に外れ、人混みの向こうへ消えていく。
❤️「……」
宮舘は、その場に立ち尽くした。
❤️「(今、なんて言われた……?)」
―ー欠陥。
聞き間違いだろうか。
そう思いたくても、耳にはあの声がはっきりと残っていた。
周囲は音楽と笑い声で溢れているのに。
宮舘の世界だけが、そこから切り離されたように静まり返っていた。
.
.
.
やがて、フォークダンスは最後のパートへと入った。
約束通り、目黒が宮舘の前に戻ってくる。
🖤「舘さん」
目黒に差し出された手を、宮舘は少し震える指で取った。
❤️「……うん」
目黒と手を繋いでも、胸のざわつきは消えなかった。
🖤「舘さん?」
❤️「……え?」
🖤「顔色、悪いよ。大丈夫?」
❤️「……ちょっと、踊り疲れちゃって」
🖤「……そっかぁ」
目黒は暫く宮舘の顔を見つめていたが、それ以上は問い詰めなかった。
🖤「じゃあ、休もうか。あっちに行こう」
冷たくなっていた手を、目黒が優しく握ると宮舘は小さく頷いた。
賑やかな中庭を離れた2人が辿り着いたのは、誰もいない裏庭だった。
昼間なら静寂が心地良く感じられる場所。
今の宮舘にとっては、その静けさがとてもありがたかった。
二人並んでベンチに腰掛ける。
暫くの間、沈黙が続くと目黒が少し緊張したような顔で宮舘を振り返る。
🖤「ねぇ、舘さん」
❤️「うん?」
🖤「次のお昼休みさ……お弁当、作ってこないでほしいんだ」
❤️「……え?」
宮舘の胸が、ドクンと跳ねた。
❤️「なんで?」
思わず目黒の顔を見つめる。
❤️「俺のお弁当、もう嫌になっちゃった?」
🖤「違う、違うよ!」
目黒は慌てて首を振った。
🖤「そうじゃなくて……」
少し恥ずかしそうに視線を逸らす。
🖤「今回、舘さんのためにパンケーキ作ったでしょ?」
❤️「うん」
🖤「たくさん練習してたら……なんだか、自分でも自炊したくなっちゃって」
目黒の耳が、ほんのり紅くなる。
🖤「だから……今度は俺が作った料理を、舘さんに食べてほしいんだ」
❤️「……」
その言葉を聞いた瞬間、宮舘の胸の奥が、じんわりと温かくなった。
❤️「(自炊……)」
ふと、現実にいる目黒の姿が脳裏に浮かぶ。
❤️「(……本来の目黒みたいだ)」
自分の手料理をきっかけにして少しずつ、本来の目黒に戻ってきている。
その確かな変化が、たまらなく嬉しかった。
❤️「うん……!」
宮舘の顔に、自然と笑みが浮かぶ。
❤️「ありがとう。すごく楽しみにしてるね」
🖤「……うん」
目黒も嬉しそうに笑った。
その横顔を見つめながら、宮舘は思う。
――この関係は、少しずつ変わっている。
ゲームのシナリオをクリアするための、偽物の恋人。
それなのに今は、こうして隣にいることが、当たり前になりつつあった。
***
やがて、後夜祭の終了を告げるアナウンスが響いた。
『以上をもちまして、本年度の学園祭を終了します。生徒の皆さんは速やかに寮へ戻って下さい』
🖤「……もう終わりか」
❤️「楽しかったね」
🖤「うん」
目黒は立ち上がると宮舘へ手を差し出した。
🖤「送るよ」
❤️「ありがとう」
夜道を2人で歩いていると、先程までの喧騒が嘘のように、校舎の周囲は静かだった。
やがて宮舘の寄宿舎の部屋の前に到着する。
🖤「じゃあ、またね。舘さん」
❤️「うん。おやすみ、目黒」
🖤「おやすみ」
最後に目黒が柔らかく笑い、宮舘も笑顔を返すと、ゆっくりと扉を閉めた。
――パタンッ
扉が閉まると部屋の中に静寂が戻ってきた。
❤️「……」
宮舘はベッドへ腰を下ろした。
薄暗い部屋の静けさの中で、後夜祭の出来事が突然、鮮明に蘇った。
『……欠陥の分際で、調子に乗んな』
❤️「……欠陥」
宮舘の表情から、笑みが消える。
❤️「俺が……欠陥って、どういうこと……?」
考えれば考えるほど、意味が分からない。
しかし、この夢を見てから頭の奥で引っ掛かってることがあった。
自分に与えられた役職。
――悪役令嬢。
今までは、深く考えないようにしてきた。
ただ、目黒との距離を縮めることだけを考えていた。
けれど、あの女子生徒は、何かを知っているようだった。
まるで宮舘が、この世界にとって不純物であることを知っているかのように。
❤️「……欠陥」
その言葉だけが、やけに重く胸へ落ちた。
楽しかったはずの後夜祭の記憶が、急に遠ざかっていく。
目黒の笑顔も。
繋いだ手の温もりも。
これから作ってくれるという料理の約束も。
それら全てに、説明のつかない違和感が潜んでいるような気がした。
宮舘は、膝の上で自分の手をギュッと握りしめる。
❤️「(……悪役令嬢って、何なんだろう)」
――その答えを知ることになるのは、もう少しだけ先の話だった。
コメント
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自分が好きな独占欲&困難系になってきた(ぐふふ)←キモい こんなに続きが気になる展開をいっぱいかけるなんて尊敬します!!
🩷に敵意むき出しな🖤とか♥️惚れ込んじゃってるじゃない😆😆😆 『欠陥の分際で…』って!? 気になる展開がまた💦 大丈夫…🖤は絶対に♥️を守ってくれるよ😭😭😭 いつも気になる展開を提供してくれるぜっちゃんはやっぱ凄いお人やなぁ✨️