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第39話、読み終わりました。星羅の「独占したい」という気持ちが前面に出ていて、甘いやりとりがすごく良かったです。でも、写真の謎や「離れることになる」という不穏な一文で一気に空気が変わって、ゾクッとしました。星羅の「絶対に嫌」という言葉に彼女の執着の深さがにじんでいて、これからどうなるのか気になって仕方ないです。記憶の謎、早く知りたいです!
放課後。
玲と星羅は。
駅へ向かって歩いていた。
「ねえ、玲くん」
「ん?」
「今日、寄り道しようよ」
「どこに?」
「秘密」
「……またか」
「ふふっ」
星羅は楽しそうに笑う。
そして。
玲の腕に自分の腕を絡める。
「今日は私が玲くんを独占する日」
「いつもじゃないか?」
「……!」
星羅は一瞬固まる。
「……バレてた?」
「ああ」
「……じゃあ」
さらに強く抱きつく。
「もっと独占する」
「……好きにしろ」
「うん」
星羅は満足そうに笑った。
向かった先は。
駅前の小さな公園。
二人でベンチに座る。
「ここ、好き」
「そうなのか?」
「うん」
星羅は空を見上げる。
「静かだから」
「……」
「玲くんと二人きりになれるし」
「それが一番の理由だろ」
「……正解」
星羅は笑う。
しばらく。
二人は何も話さなかった。
ただ隣にいる。
それだけで。
星羅は幸せだった。
「ねえ」
「ん?」
「玲くん」
「何?」
「私のこと、どれくらい好き?」
「……」
玲は少し考える。
「かなり」
「かなりってどれくらい?」
「……言葉じゃ説明できない」
「じゃあ」
星羅は顔を近づける。
「私と同じくらい?」
「……たぶん」
「たぶん?」
「いや」
玲は星羅を見る。
「星羅より好きかもしれない」
「……!」
星羅の顔が真っ赤になる。
「……もう」
「何?」
「そういうの……反則」
「本当のことだ」
「……」
星羅は玲の肩に頭を乗せる。
「じゃあ」
「ん?」
「一生離れないでね」
「ああ」
「絶対?」
「絶対」
「私以外の女の子を好きにならない?」
「ならない」
「……約束?」
「約束」
星羅は。
幸せそうに目を閉じる。
「……大好き」
「俺も」
――その夜。
星羅の家。
母親が古い箱を整理していた。
「星羅」
「ん?」
「これ、あなたの昔の写真よ」
「昔?」
「小さい頃の」
星羅は箱を受け取る。
中には。
幼い頃の写真が何枚も入っている。
「……」
一枚。
二枚。
三枚。
そして。
「……え?」
星羅の手が止まる。
そこには。
七年前の写真。
迷子になった自分。
手を握る少年。
玲。
「……」
さらに。
その後ろ。
もう一人。
小さな男の子が写っている。
「……誰?」
母親が写真を見る。
「あら」
「知ってるの?」
「……」
母親は少し考える。
「この子……」
「うん」
「確か、あの日の少し前にも見た気がする」
「……え?」
「あなたが迷子になる前」
母親は。
写真の少年を指差す。
「この子が、あなたの近くにいたのよ」
「……玲くんが?」
「たぶん違う」
「……え?」
星羅の胸がざわつく。
「この子は」
母親は写真を裏返す。
裏には。
古い文字。
『2018年8月』
『祭りの三日前』
「……」
星羅は息を呑む。
「じゃあ」
「うん?」
「玲くんは……」
「?」
「七年前より前に」
星羅は写真を見つめる。
「私のことを見てた?」
母親は首を傾げる。
「さあ……」
「……」
星羅は。
その写真を握りしめた。
――翌日。
学校。
「玲くん」
「ん?」
「一つ聞きたいことがある」
「何?」
「小さい頃」
「……?」
「私と会ったことある?」
玲の表情が変わる。
「……」
「玲くん?」
「……ある」
「……!」
「でも」
玲は首を振る。
「七年前が最初だと思ってた」
「じゃあ」
「それより前は……」
玲は。
記憶を探す。
しかし。
何も思い出せない。
「……分からない」
「そっか」
星羅は笑う。
「じゃあ一緒に思い出そう?」
「どうやって?」
「私たちの昔の写真を集める」
「……本気か?」
「うん」
星羅の瞳が輝く。
「だって」
玲の手を握る。
「私、玲くんのこと全部知りたいから」
「……」
「小さい頃の玲くんも」
「……」
「泣いてた玲くんも」
「……」
「笑ってた玲くんも」
そして。
少しだけ声を落とす。
「私以外の誰かを好きになる前の玲くんも」
「……」
玲は苦笑する。
「そこまで知りたいのか」
「うん」
即答。
「全部」
星羅は微笑む。
「だって玲くんは」
握った手に力を込める。
「私の大切な人だから」
その頃。
学校の裏。
謎の男子生徒は。
一冊の古いアルバムを開いていた。
「……やっぱり」
ページには。
七年前の写真。
さらに。
その前の写真。
そこには。
幼い玲。
そして。
幼い星羅。
同じ場所。
同じ日に撮影された写真。
「二人は」
男子生徒は呟く。
「七年前より前にも会っている」
さらにページをめくる。
「……これだ」
一枚の写真。
日付。
『2017年12月』
まだ幼い玲。
そして。
星羅。
二人は。
同じクリスマスイベントの会場にいる。
「……」
男子生徒は笑う。
「一度じゃない」
「二度でもない」
ページをめくる。
2017年。
2018年。
2019年。
「何度も会ってる」
なのに。
本人たちは。
その記憶を失っている。
「……どうして忘れた?」
男子生徒は。
アルバムの最後のページを見る。
そこには。
一枚の新聞記事。
『子ども向けイベントで一時騒ぎ』
その記事の下に。
手書きの文字。
『あの日から、二人の記憶が変わった』
「……」
男子生徒の表情が。
初めて険しくなる。
「ここから先は」
アルバムを閉じる。
「俺だけでは追えないな」
――その日の帰り。
星羅は玲と一緒に歩いていた。
「玲くん」
「ん?」
「私たち」
「?」
「昔から何度も会ってたのかもしれないね」
「ああ」
「……なんか嬉しい」
「どうして?」
「だって」
星羅は笑う。
「玲くんの人生に」
「……」
「私がずっといたってことでしょ?」
「……そうだな」
「なら」
星羅は玲の腕を抱く。
「これからもずっといる」
「……」
「絶対」
「……ああ」
「玲くんが嫌って言っても」
「……」
「離れないからね?」
冗談のような。
でも。
冗談ではない声。
玲は少し笑った。
「嫌なんて言わない」
「……よかった」
星羅は。
玲の腕に顔を寄せる。
「なら安心」
その瞳の奥には。
誰にも見せない。
強い執着が宿っていた。
「……ずっと」
小さく呟く。
「私だけが、玲くんの一番でいればいい」
――その夜。
玲のもとに。
一枚の画像が送られてきた。
古い写真。
2017年12月。
幼い玲と星羅。
そして。
写真の裏に書かれた文字。
『この日、二人は初めて出会った』
玲は息を呑む。
しかし。
その下には。
さらに一行。
『ただし――』
『二人が覚えていないのには理由がある』
「……」
玲は。
写真を見つめる。
「……何があったんだ」
同じ頃。
星羅のスマホにも。
同じ写真が届いていた。
『次の文化祭が終わるまでに』
『すべて思い出してください』
そして。
『思い出せなければ――』
最後の一文。
『今度こそ、二人は離れることになる』
「……」
星羅の表情から。
笑顔が消える。
「……離れる?」
スマホを強く握る。
「そんなの……」
瞳が。
ゆっくりと暗くなる。
「絶対に嫌」
その瞬間。
星羅の中で。
何かが。
静かに壊れ始めていた。