テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
18話 「追跡者たちと封じられた力」
この日の依頼は郊外の小さな村への物資運搬だった。
荷馬車を押すように歩き、のんびりした空気が漂っていた――のは、村が見え始めるまでだ。
「前方、三人……いや、五人」
ミリアが低く告げる。
土埃の向こうに、剣や棍棒を持った男たちが道を塞いでいた。
「やっと見つけたぞ……銀髪のガキを渡せ」
声の主は、あの裏通りで絡んできた連中の一人だった。
背後からも足音。囲まれた。
俺は荷馬車の前に立ち、ため息をつく。
「本当にしつこいな。……ミリア、右を頼む」
「了解」
次の瞬間、前から二人が突っ込んできた。
剣を受け流し、柄で肩を叩き落とす。ミリアは素早く足払いをかけ、相手を地面に転がした。
だが三人目が荷馬車の方へ回り込み、ルーラへと手を伸ばす。
ルーラは一歩後ろに下がり――小さく呟いた。
「……眠れ」
空気が揺らぎ、男の動きが唐突に止まる。
次の瞬間、膝から崩れ落ち、静かに眠り込んだ。
「今の……?」
俺とミリアが一瞬だけ目を合わせたが、戦いはまだ終わっていない。
残りの男たちを制圧し、全員を縛り上げて村の警備兵に引き渡す。
村の広場で一息つくと、ルーラは無表情でリンゴをかじっていた。
「さっきのは……お前の力か?」
「……昔、ちょっとだけ習っただけ」
それ以上は語らない。だが、その声の奥に、何かを恐れるような色が混じっていた。
俺はそれ以上追及せず、ただ空を見上げた。
雲間からのぞく青空は、何事もなかったかのように澄み渡っていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!